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100.神凪楓の無謀な実験
しおりを挟む「後残ってるのはほとんど重要文化財・・・」
私は箱の底から、控えめな柄ながらも金糸も施された刀袋を取り出した。
危ない物はこれ以外は何一つ入っていなかったから気になっていた。
「刀なんて楓ちゃんに持たせていいんですか?」
「この刀だけはな。」
私は慎重に刀袋から刀箱を取り出し、箱を開けた。
「何も切れない刀なんですよね。」
「ええ。」
リストの説明欄には、魂しか切れない刀と書いてあった。名前は滅魂刀水仙。
私は手に取った刀をゆっくりと抜刀した。
まるで玩具の様に刃先が丸く、普通の日本刀の様な輝きは無かった。
鞘を刀箱に戻した私は、刃を腕に宛がって刀を引いた。
切れ味も玩具の刀そのものだった。切れるどころか何の跡も付かず、丸い刃先が腕を滑っただけだった。
物理的に切れないのに、体の中の魂は切れる。詠川先生曰く、一度も使用された事が無く、使い方がわからない刀らしい。
そんなことを言われたら使われてるところを見たくなる。
もしかしたら、魔力を込めたら切れるようになるかもしれない。
私はもう一度刃先を腕に宛がって魔力を込めた。
刀を引く直前、私は凄い力で腕を捕まれ、高らかに刀を突き上げるように手を引き上げられた。
「しょ、正気ですか!!!」
「切れてへんか!?」
紫々井先生は私の前に跪いて、刃先を宛がった方の腕を掴んだ。
見上げると、珍しく雅楽代さんが目を見開いて驚いていた。
残念ながら腕に傷が付かなかった事を確認した紫々井先生が詠川先生を見上げた。
「詠川先生、魂の状態の確認を!・・・詠川先生?詠川先生!!」
詠川先生は雪野さんに肩を揺すられるまで放心状態だった。
魂を感知できる能力のある詠川先生は、私の胸元に手を当てて魂を診察した。
問題が無いと分かると、みんなが安堵のため息を吐いた。
それ程大したことをしたつもりはなかったけど、私はまた雅楽代さん直行案件を作ってしまったらしい。
「もし巫女様の魂に傷が付いていたら・・・」
詠川先生はそこまで言って口を噤んだ。
私が過ぎたことを望まなければ、こんな気まずさを感じさせることなんてなかったのに、私は本当に馬鹿だ。チクリと自分の言葉が胸を刺した。
雅楽代さんは私から取り上げた刀を鞘に仕舞い、箱の中に寝かせた。
「楓様、切れてしまった場合の事をお考えになった上での行動ですか?」
雅楽代さんはいつも以上に貼り付けた笑みを浮かべた。あっ、これは怒ってる、と察した。
私は初めて雅楽代さんを怒らせてしまった。
「切れても魂は心臓辺りに宿ってるから大丈夫だと思って。」
「それは刀です。しかも巫女様の力が宿っていて、巫女様が力を込めたんですよ。腕が落ちていても不思議ではありません。」
「つい実験しちゃくなっちゃって・・・」
「・・・詠川先生、大丈夫ですか。」
「えっ。」
視線を向けると詠川先生は俯いて片手で顔を覆っていた。
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