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95.瑠璃川奏の憤怒
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「起きた時にどうするつもりですか。」
瑠璃川は詠川を見上げ、睨んだ。
詠川は答えること無く、楓が術で眠っていることを確認して、空を見上げた。
「守り手の朗読師が総出で作った五重の結界がボロボロです。あのままでは、結界の欠片が土砂降りの雨の様に降り注いでいます。」
楓を抱き上げようとした瑠璃川の手を払って、詠川は楓に浮遊術を掛けた。
敵意のある払い方に、瑠璃川は眉を顰めた。
楓の体はふわりと浮き上がり、宙に寝かされた状態になった。
「気安く巫女様のお身体に触れないでください。」
詠川はハンカチを取り出し、手で触れないようにしながら楓の涙を拭った。
病室に残っていた紫々井達が駆け付け、楓の状態を紫々井が確認した。
明らかに紫々井の唇には血が滲んでいた。
瑠璃川は楓を視る為に外していた眼鏡を拾って掛け直すと、自分のジャケットを楓に掛けた。
そして、頑張ったのにね、と呟いた。
「楓ちゃんはこれくらいの事で心が折れる子じゃない。それなのにこうなったのは、貴方方が楓ちゃんを人として扱わなかったからです。」
瑠璃川は目に強く力を込めた。
ゆらりと湯気のように紫々井達の感情が視えた。
眼鏡は瑠璃川の強い能力を完全に防ぐ事はできない。その為、感情の読み取りを知られたくない時にはこうして密かに視ている。
瑠璃川は視た感情から紫々井達の心を探った。
「巫女様は不便はあっても生活に支障は無く、プライバシーも保護されています。それはご存知でしょう。」
「楓ちゃんが何よりも望んでいたのは、巫女では無く人として貴方方に接してもらう事です。楓ちゃんは、僕との様な関係を貴方方と築きたかった。だから、どれだけ親しげに接しても、結局貴方方が向き合っているのは巫女様だって事が、とても悲しくて寂しかったんですよ。」
「それとこれとは」
「関係あります。」
瑠璃川が敵意を向けたことで、紫々井達は視界がぐにゃりと曲がり吐き気をもよおした。
幻術を専門とする瑠璃川の魔力を込めた敵意の作用だった。
「瑠璃川先生、施設内でこんな事はっ・・・!」
もっとも楓を傷付けた紫々井の言葉に、瑠璃川は眉を顰めて不快感を顕にした。
「紫々井先生がトドメを刺したんですよ。楓ちゃんを巫女として扱うことで筋を通したんでしょうけど。・・・楓ちゃんが起きたら真っ先に教えて下さい。僕から伊海先生が話を聞かないと、同じ事が起こるでしょうから。失礼します。」
瑠璃川は楓を委ねたくは無かったが、仕方なく踵を返した。
瑠璃川は詠川を見上げ、睨んだ。
詠川は答えること無く、楓が術で眠っていることを確認して、空を見上げた。
「守り手の朗読師が総出で作った五重の結界がボロボロです。あのままでは、結界の欠片が土砂降りの雨の様に降り注いでいます。」
楓を抱き上げようとした瑠璃川の手を払って、詠川は楓に浮遊術を掛けた。
敵意のある払い方に、瑠璃川は眉を顰めた。
楓の体はふわりと浮き上がり、宙に寝かされた状態になった。
「気安く巫女様のお身体に触れないでください。」
詠川はハンカチを取り出し、手で触れないようにしながら楓の涙を拭った。
病室に残っていた紫々井達が駆け付け、楓の状態を紫々井が確認した。
明らかに紫々井の唇には血が滲んでいた。
瑠璃川は楓を視る為に外していた眼鏡を拾って掛け直すと、自分のジャケットを楓に掛けた。
そして、頑張ったのにね、と呟いた。
「楓ちゃんはこれくらいの事で心が折れる子じゃない。それなのにこうなったのは、貴方方が楓ちゃんを人として扱わなかったからです。」
瑠璃川は目に強く力を込めた。
ゆらりと湯気のように紫々井達の感情が視えた。
眼鏡は瑠璃川の強い能力を完全に防ぐ事はできない。その為、感情の読み取りを知られたくない時にはこうして密かに視ている。
瑠璃川は視た感情から紫々井達の心を探った。
「巫女様は不便はあっても生活に支障は無く、プライバシーも保護されています。それはご存知でしょう。」
「楓ちゃんが何よりも望んでいたのは、巫女では無く人として貴方方に接してもらう事です。楓ちゃんは、僕との様な関係を貴方方と築きたかった。だから、どれだけ親しげに接しても、結局貴方方が向き合っているのは巫女様だって事が、とても悲しくて寂しかったんですよ。」
「それとこれとは」
「関係あります。」
瑠璃川が敵意を向けたことで、紫々井達は視界がぐにゃりと曲がり吐き気をもよおした。
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「瑠璃川先生、施設内でこんな事はっ・・・!」
もっとも楓を傷付けた紫々井の言葉に、瑠璃川は眉を顰めて不快感を顕にした。
「紫々井先生がトドメを刺したんですよ。楓ちゃんを巫女として扱うことで筋を通したんでしょうけど。・・・楓ちゃんが起きたら真っ先に教えて下さい。僕から伊海先生が話を聞かないと、同じ事が起こるでしょうから。失礼します。」
瑠璃川は楓を委ねたくは無かったが、仕方なく踵を返した。
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