おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

９４．悲鳴

建物を出たところで躓いて足が縺もつれた私は盛大に転けて、地面に倒れた。
顔を上げたら見えた景色に、また涙が溢れた。 私が見るのは、死ぬまでこの景色なんだ。
私はここで何不自由無い生活をさせてもらっている。
死ぬまで困る事は無いだろう。暖かくて大切な人達にも囲まれている。けれど私は、前の世界での暮らしとどっちが良かったのか考えてしまった。
それが余計に悲しかった。

「楓ちゃん！！」

私を起き上がらせてくれたのは瑠璃川先生だった。

「先生、私、私･･･！！！」

しっちゃかめっちゃかな感情を整理して話すことなんてできなかった。

「明さんが頑張ってくれてるの、わかってるの！でも、私、酷いこと、けど私は何も･･･！」

瑠璃川先生の手が私の背中に回った。
先生らしい甘い匂いが先生の肩に埋うずもれた私を包んだ。

「分かってるよ。」

先生は優しく背中を摩ってくれた。
甘んじるのは良くないと思いながらも、私は身を任せた。

「誰も楓ちゃんを責めないよ。誰だってショックを受けることなんだから。」

止めどない涙で、私は言葉を返せず、ただただ先生の腕の中で泣きじゃくった。

「だから、自分を責めないで。」

辛うじて首を横に振ると、先生は、腕に力を入れた。
責めないで、ともう一度言うように。

「楓ちゃん、まだ不可能とは決まってない。楓ちゃんは前の世界から何度も何度も乗り越えて来た。めげずに前を向いて、失敗しても挑み続けて来た。そんな楓ちゃんに不可能なんて無いんだよ。俺の勘だけどね。」

先生の勘は当たる。
私は少し、荒れる感情の波が穏やかになった気がした。
急に眠気が襲ってきて、私は意識を失った。