90 / 105
90.唯一の方法
しおりを挟む
雅楽代は診察室に戻ると、モニターに映された楓の寝室を確認した。
楓は不満げな顔で、電子書籍用のタブレットを眺めていた。
「楓様のお身体には特段の変化は見受けられませんでした。」
「とは言え、大事は取った方がいいです。三日は安静に。魔法は禁止です。」
「では、授業は楓さん宅で行います。」
「そうしてください。」
「詠川先生、今回の件は、魔力が強いだけでは説明が付きませんよね?」
「ええ。神に与えられた理の巫女の力を無意識に使ったとしか考えられません。無意識に使えるものでは無いはずですが・・・」
「楓さんは来た時から過去の巫女様とは比較できない人でした。自然に使えたとしても不思議はありません。」
また調べんと、そう呟いて溜息を吐いた紫々井を横目で見た雅楽代は口を開いた。
「先生、相当お疲れなのではないですか?急を要する事では無いようですし、少し休みを取られては如何ですか? 」
紫々井の体は取り切れない疲労で全体が重く、目の下には隈ができていた。
「楓さんの命に関わることや。急を要する事です。悠長にしててもし楓さんに何かあったら・・・」
立ち上がった紫々井は雅楽代の予想通りふらつき、雅楽代が素早く腕を掴んだお陰で辛うじてバランスを保った。
「楓様にもし何かあった時、先生が万全の状態でなければそれこそ楓様の命に関わります。」
「早く方法を見つけなあかんのや。休んでる暇なんて無い。」
雅楽代の手を振り払って、紫々井は診察室を出た。
「近い内に倒れそうですが、それまでに見付かるでしょうか。」
「紫々井先生がこれ程探して見付からない方法が急に見付かるとは思えない。」
「一つだけ方法はあります。ですが・・・」
詠川はその先を言わず、診察室を出た。
「たった一つの方法、ですか。」
「詠川先生も同じ事を考えているようだ。だがまあ・・・」
雅楽代は、無理だろうな、という言葉を飲み込んだ。
楓は不満げな顔で、電子書籍用のタブレットを眺めていた。
「楓様のお身体には特段の変化は見受けられませんでした。」
「とは言え、大事は取った方がいいです。三日は安静に。魔法は禁止です。」
「では、授業は楓さん宅で行います。」
「そうしてください。」
「詠川先生、今回の件は、魔力が強いだけでは説明が付きませんよね?」
「ええ。神に与えられた理の巫女の力を無意識に使ったとしか考えられません。無意識に使えるものでは無いはずですが・・・」
「楓さんは来た時から過去の巫女様とは比較できない人でした。自然に使えたとしても不思議はありません。」
また調べんと、そう呟いて溜息を吐いた紫々井を横目で見た雅楽代は口を開いた。
「先生、相当お疲れなのではないですか?急を要する事では無いようですし、少し休みを取られては如何ですか? 」
紫々井の体は取り切れない疲労で全体が重く、目の下には隈ができていた。
「楓さんの命に関わることや。急を要する事です。悠長にしててもし楓さんに何かあったら・・・」
立ち上がった紫々井は雅楽代の予想通りふらつき、雅楽代が素早く腕を掴んだお陰で辛うじてバランスを保った。
「楓様にもし何かあった時、先生が万全の状態でなければそれこそ楓様の命に関わります。」
「早く方法を見つけなあかんのや。休んでる暇なんて無い。」
雅楽代の手を振り払って、紫々井は診察室を出た。
「近い内に倒れそうですが、それまでに見付かるでしょうか。」
「紫々井先生がこれ程探して見付からない方法が急に見付かるとは思えない。」
「一つだけ方法はあります。ですが・・・」
詠川はその先を言わず、診察室を出た。
「たった一つの方法、ですか。」
「詠川先生も同じ事を考えているようだ。だがまあ・・・」
雅楽代は、無理だろうな、という言葉を飲み込んだ。
13
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる