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80.雅楽代薫と嶺島樹の裏の顔
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鈍い音を立てて、男が倒れた。
男は傷だらけで右の人差し指と中指、左手と右足を骨折し、出血も酷く呼吸は弱々しかった。
男に跨り、嶺島は刀の鋒を男の心臓の上に宛がった。
「まだ20分だ。後3時間40分ある。話せばこのまま死なせてやるよ。」
鋒が男の胸に少しだけ刺さった。
「お前の飼い主は誰だ。」
結局男は嶺島が把握している以上の情報は持っておらず、息絶えた男を嶺島は足で傍にできていた死体の山に加えた。
後処理は部下に任せて、嶺島は雅楽代に電話を掛けた。
「樹です。薫様、収穫はありませんでした。」
『そうか。』
「申し訳ありません。」
『気にしなくていい。元から期待は薄かった。』
嶺島家は代々雅楽代に付き従っている。
それは現当主の樹も例外ではなく、雅楽代に忠誠を誓っていた。
『それより明日は楓様の訓練日だ。血の匂いは入念に消しておけ。』
「はい。薫様、嶋崎組を潰してはどうでしょうか。二三日頂ければ全滅させられます。少しは情報が集まるかと。」
『あまり大きく動くべきじゃない。』
「出過ぎた事を申し訳ありません。」
『いや、お前の助言は有難いよ。』
電話の向こうで、男の悲鳴が聞こえた。
『少し気になる物を見付けた。明日の夜、お前だけ俺の部屋に来い。』
「承知致しました。」
電話を切ると、嶺島は部屋を改めて見渡した。
関係者を探し出し、片っ端から部屋を調べ、必要ならば死体を積み上げて来たが、痕跡はまるで無い。
古くから裏方を生業とする雅楽代家とその部下の家が総力を上げて調査してもなんの情報も得られないことは、異常事態に他ならなかった。
「気色が悪いな。」
そう思っているのは嶺島だけではない。誰もが感じていることだった。
その気色の悪さが異様な緊張感を与えていた。
男は傷だらけで右の人差し指と中指、左手と右足を骨折し、出血も酷く呼吸は弱々しかった。
男に跨り、嶺島は刀の鋒を男の心臓の上に宛がった。
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鋒が男の胸に少しだけ刺さった。
「お前の飼い主は誰だ。」
結局男は嶺島が把握している以上の情報は持っておらず、息絶えた男を嶺島は足で傍にできていた死体の山に加えた。
後処理は部下に任せて、嶺島は雅楽代に電話を掛けた。
「樹です。薫様、収穫はありませんでした。」
『そうか。』
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『それより明日は楓様の訓練日だ。血の匂いは入念に消しておけ。』
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『いや、お前の助言は有難いよ。』
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『少し気になる物を見付けた。明日の夜、お前だけ俺の部屋に来い。』
「承知致しました。」
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古くから裏方を生業とする雅楽代家とその部下の家が総力を上げて調査してもなんの情報も得られないことは、異常事態に他ならなかった。
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その気色の悪さが異様な緊張感を与えていた。
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