おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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70.千年の因縁

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「千年前、巫女様を武術でお守りする家を決めるトーナメントが開催されてね、その最終決戦で勝ったのが雅楽代家当主、負けたのが雪野家当主だった。」

「武術は雅楽代家以外にもあるよね?」

「最後の一席を決める戦いだったんだよ。それから没落した家や、巫女様に権能を剥奪される家が出て、幾度となく雪野家が守り手になるチャンスはあったんだけど、雅楽代家に負け続けているのに空いた席に座るのは雪野家のプライドが許さなくてね、そのまま千年経って今に至るんだ。」

「千年のライバルなの?」

「うん。権能除けばほぼ互角。雅楽代家は負ければ守り手の地位を失いかねない事態だし、絶対君主的な立場が揺らぐからね、絶対に負けられないってプレッシャーがあるんだ。」

あの仲の悪さに納得した。千年勝てない相手、千年絶対負けられない相手。何百回もドラマ化されてそうだ。

「あの二人も高校から雅楽代が公安を辞めるまでずっとライバルだったよ。」

「なんで離れないの・・・」

「宿命なんだろうね。」

「えぇ・・・」

「仲が悪いから上手く行ってない事とかない?」

「私の前ではないよ。」

「その事で何か憂いがあるんだと思ったんだけど。」

流石、鋭い。こんなにほんわかしてるのに、中身はかつての公安のトップ。凄いギャップだ。

「雪野家と高辻家に権能を与えたいの。」

「正式に守り手にするんだね。」

「でも、どんな権能が良いとか分からないし、あんなに仲が悪いのに一緒にしていいのかなとか、考えれば考える程わからなくなって。」

「それは、二人の戦い方を知らないからだよ。」

少し考えた尾長谷さんは、とんでもない事を言い出した。

「そうだ。雅楽代家と雪野家の伝統の一戦をやろう。」

「えっ・・・」

一瞬思考がついて行かなかった。あんなに仲悪い人達を喧嘩させる?

「えええーー!?」

「高辻家は高辻家のライバルと戦わせよう。」

「高辻さんちもライバル居るの!?」

「高辻家は格付けに興味が無いから同格とだよ。いや、高辻家ならもっと高いところと戦わせようかな。トーナメントもありだねぇ。」

尾長谷さん、見た目と中身が全然合ってない。

とんでもない話をなんでそんなにウキウキ話せるの・・・?

「高辻家に勝ったら権能のランクを上げる。雪野家が勝ったら、雪野家に権能を与えて、智久はその試合でどんな権能になるか決定、薫は権能の見直しを賭けるってのはどうかな。」
 
「権能の見直し?」

「雅楽代家は強すぎて、権能の見直しがここ500年行われていないんだ。」

「OSのアップデートが500年もされてないってこと・・・?それは良くないよ。」

「例えはよく分からないけど、伝わったみたいだね。」

「でも、法律的に無理じゃないの?決闘って犯罪でしょ?」

「ああ、守り手と守り手候補の決闘は理の巫女法で認められてるんだ。死なない範囲でね。」

「えぇ・・・」

「そういう競争で力を高め合っていかないと、巫女様を危険から守れないんだよ。」

それは最もだけど、雅楽代さんと雪野さんのそれは、試合ではなく殺し合いになるとしか思えない。

「大丈夫だよ。どれだけ白熱してもうっかり殺す前に周りが止めるから。」

「それは大丈夫じゃないですよ。」

「大丈夫大丈夫。」

不安でいっぱいだけど、提案の理由には頷けるから、私は了承した。
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