おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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55.水無瀬京介の葛藤

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水無瀬は男を追い掛けた先の非常階段で見上げた穴は、遥か先まで続いていた。

水無瀬は魔法で作った針と糸を操り。上の階に自らの体を引き上げた。

雪野以外の護衛はやわではない。特に高辻は雪野に次ぐ実力の持ち主だ。あの男と交戦しても楓を逃がす事はできる。

それが分かっていても、水無瀬は強い焦燥感に駆られた。

「絢子・・・」

楓が妻に重なったせいか、もう二度と奪わせまいと思ったからだった。

針を上層階に刺しては体を引き上げる作業を繰り返して、開いている非常ドアを見付けたのは最上階だった。

無線で楓の位置を確認しながら男を追い掛けた。

やっと男を見付けた時、背を向ける男の奥には、楓らしき女性が座り込んでいた。

気付かれぬ様ににじり寄りながらも、水無瀬が男に向けた銃口は揺れた。

「何もできないんだろ?治療も呪いも何にも!」

男は腹を抱え、声高らかに楓を嘲笑った。

男の言動は水無瀬の家族を奪った時から何も変わらなかった。

男の後ろに見えた恐怖に震える楓が、あの時の妻に見え、水無瀬は血が出るほ奥歯を噛み締めた。

水無瀬の狙いは男の心臓に定まった。

「あー、400億いらねぇわ。俺、あんたみたいな女殺すの大好きなんだよね。」

水無瀬はこれまで何もかもを犠牲にしてでも自分が目指して来たものを思い出した。

水無瀬は拳銃を構え直し、男の右肩に狙いを定めると、心の中で妻と子の名前を呟き、引き金を引いた。

「縫針術九縛。」

すかさず針を投げ、男の腕に糸を絡ませて力任せに引いた。

自分を通り越して叩きつけられた男を警戒しながら、水無瀬は楓に駆け寄った。

「私何もできなくて、沢山の人が!」

「貴女の責任ではありません。」

水無瀬さんはパニックを起こす楓を抱き締めて、優しく言った。

「いってぇ!!」

男は叫び声と共に立ち上がり、向かって来た。

「縫針術六縛十連。」

糸を張り巡らせて壁を十枚作った。大抵の相手なら防げる厚さだった。

だが、対峙しているのは子供の頃からその能力で人を殺し続けて来た化け物だ。

糸の壁は三秒と持たなかった。

壁を破った男は、ガードした水無瀬の左手を切り刻んだ。

「石萩・・・!!」
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