51 / 105
51.巻き添え
しおりを挟む
「今日は雅楽代さんはいらっしゃらないんですね。」
「雪野くんが着いてますからご安心ください。」
棘がチクリとしたけど、雅楽代さんは私を送り出した。
雅楽代さんから貰った親指サイズのお守りをスーツの胸ポケットに仕舞った私は、帝国ホテルに来た。
今日は帝国ホテルで会議の後会食をする事になっている。
控え室代わりのスイートルームで、私は緊張で幾度となく髪を整えていた。
「明さんはその間どうするの?」
「隣の会議室で待機してる。」
「じゃあ安心だね。」
「体調が悪くなったら直ぐに呼んでや。」
「うん。」
部屋には明さんと高辻さんも待機していた。
開始の10分前の事だった。
訪ねて来た水無瀬さんは開口一番に言った。
「私の為に動かしている事を全て止めてください。」
「えっ・・・」
酷く寝不足なのを、いつもより濃い色のサングラスで水無瀬さんは隠していた。
「な、なんでですか!?」
「総理がご自身で動かない限り私の願いは叶わない。ですから、総理の機嫌を取る必要があるんです。神凪さんの行動を総理はご不快に思われていますから、直ちに止めて頂きたい。」
「総理が頷かなくたって周りが」
「貴女は政治を分かっていない!」
水無瀬さんが取り乱したのも、大声を出したのも初めての事だった。
「貴女は政府の要請に従っていればいいんです。今回の会議も、全ての依頼を受けていただければ丸く収まります。」
「政府の要求には底が無い。巫女様の政治利用に黙ってない国もぎょうさんある。このまま行けばどうなるか、わかってますよね。」
「それでも私にはこれしか方法が無い。」
「・・・わかりました。」
「・・・お気持ちは嬉しく思います。」
「水無瀬さん・・・?」
酷く追い詰められた人の顔だった。次の声を掛ける前に、水無瀬さんは部屋を出てしまった。
「水無瀬さん・・・」
「水無瀬さんがあんなに取り乱すなんて・・・」
「楓さん、ほんまにやめるん?」
「うん。水無瀬さんに言われたから。」
「そうか・・・それなら電話を」
突如鼓膜を強く揺らす程の爆発音と大きな揺れを感じた。
「何・・・!?」
「神凪さんこっちに!」
窓際に向かった私を、高辻さんは入口側に引き戻した。
近くのビルの上層階から煙が上がっていた。
「テロ・・・!!」
「一原タワービルでテロとみられる爆発が発生!!」
高辻さんはインカムに向かって叫んだ。
明さんは私達の荷物を掻き集めて、私を更に下がらせた。
「逃げよう。絶対に狙いは楓さんや。」
「私が狙いなのに、関係ない人達を殺したの・・・?」
アメリカで起きたテロ事件を思い出して体が震えた。
「今雪野さんが向かっています。雪野さんが到着次第避難しましょう。」
「このホテルにまで爆弾が仕掛けられてるかもしれへんやろ!」
「それは有り得ません。警備部が隅々まで確認しています。」
また爆発音がしてビルが揺れた。音はさっきよりも近かった。
「まさか別のビルも!?」
「雪野くんが着いてますからご安心ください。」
棘がチクリとしたけど、雅楽代さんは私を送り出した。
雅楽代さんから貰った親指サイズのお守りをスーツの胸ポケットに仕舞った私は、帝国ホテルに来た。
今日は帝国ホテルで会議の後会食をする事になっている。
控え室代わりのスイートルームで、私は緊張で幾度となく髪を整えていた。
「明さんはその間どうするの?」
「隣の会議室で待機してる。」
「じゃあ安心だね。」
「体調が悪くなったら直ぐに呼んでや。」
「うん。」
部屋には明さんと高辻さんも待機していた。
開始の10分前の事だった。
訪ねて来た水無瀬さんは開口一番に言った。
「私の為に動かしている事を全て止めてください。」
「えっ・・・」
酷く寝不足なのを、いつもより濃い色のサングラスで水無瀬さんは隠していた。
「な、なんでですか!?」
「総理がご自身で動かない限り私の願いは叶わない。ですから、総理の機嫌を取る必要があるんです。神凪さんの行動を総理はご不快に思われていますから、直ちに止めて頂きたい。」
「総理が頷かなくたって周りが」
「貴女は政治を分かっていない!」
水無瀬さんが取り乱したのも、大声を出したのも初めての事だった。
「貴女は政府の要請に従っていればいいんです。今回の会議も、全ての依頼を受けていただければ丸く収まります。」
「政府の要求には底が無い。巫女様の政治利用に黙ってない国もぎょうさんある。このまま行けばどうなるか、わかってますよね。」
「それでも私にはこれしか方法が無い。」
「・・・わかりました。」
「・・・お気持ちは嬉しく思います。」
「水無瀬さん・・・?」
酷く追い詰められた人の顔だった。次の声を掛ける前に、水無瀬さんは部屋を出てしまった。
「水無瀬さん・・・」
「水無瀬さんがあんなに取り乱すなんて・・・」
「楓さん、ほんまにやめるん?」
「うん。水無瀬さんに言われたから。」
「そうか・・・それなら電話を」
突如鼓膜を強く揺らす程の爆発音と大きな揺れを感じた。
「何・・・!?」
「神凪さんこっちに!」
窓際に向かった私を、高辻さんは入口側に引き戻した。
近くのビルの上層階から煙が上がっていた。
「テロ・・・!!」
「一原タワービルでテロとみられる爆発が発生!!」
高辻さんはインカムに向かって叫んだ。
明さんは私達の荷物を掻き集めて、私を更に下がらせた。
「逃げよう。絶対に狙いは楓さんや。」
「私が狙いなのに、関係ない人達を殺したの・・・?」
アメリカで起きたテロ事件を思い出して体が震えた。
「今雪野さんが向かっています。雪野さんが到着次第避難しましょう。」
「このホテルにまで爆弾が仕掛けられてるかもしれへんやろ!」
「それは有り得ません。警備部が隅々まで確認しています。」
また爆発音がしてビルが揺れた。音はさっきよりも近かった。
「まさか別のビルも!?」
23
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる