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48.実験
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「雅楽代さん、魔力って、攻撃的に出すとか切り替えができるんですよね?」
「ええ。攻撃的な発し方というのは、俗に言う殺気です。」
「雅楽代さんが言っていた無理矢理殻を壊す方法は、攻撃的な魔力を流し込んで負荷を掛けるってことですか?」
「強力な解術魔法を使ってヒビを入れて、攻撃的な魔力を流し込んで砕くんです。解術魔法を使わないと魔力は流し込めません。」
「じゃあ、痛みを感じずに攻撃的な魔力を感じる事はできますか?」
「ええ。まずそこから、という事ですか。」
「はい。紫々井先生が手を握ってくれた時、暖かい魔力を感じたんです。」
「では、私の手を握って頂けますか?」
「はい。」
雅楽代さんの手を握って目を閉じた。
「ほんの少しだけ流しますよ。」
ほんの少しと言われたけど、鳥肌が立って手を離しかけた。
「どうでしたか?」
「戦わなきゃ!って思いました。」
雅楽代さんは急に真顔になった。
「戦っても無駄死にです。逃げてください。」
「すみません。」
私は一時間、雅楽代さんに付き合ってもらって実験を行った。
結果分かった事は、雅楽代さんに魔力を送って貰うことで殻に若干の影響を感じることと、その効果的な魔力の伝え方が。
「あ、あの、ほんとにこれ以外無いんですか・・・?」
「一番効率的です。」
全方向から魔力を送った方がいいとなって、雅楽代さんが導き出した一番効率的な体勢が、抱き合う、だった。
おずおずと背中に手を回し、肩に顔を埋めた。ほのかに甘い匂いがした。
危険を感じるのに、胸は高鳴ってしまう。
男性と抱き合う事すら耐性の無い私が、こんなに素敵なイケおじに抱き締められるんだから、致し方ない。
けど、雅楽代さんの何の変化も無い心音を感じ取ると、冷水を浴びた様に意識が正気に戻った。
「これから他の方法も考えていきましょう。」
「はい。」
「では私はこれで失礼します。」
「ありがとうございました。」
「いえ、仕事ですから。明日もまた同じ時間に参りますので、窓を開けておいてください。」
「わかりました。」
雅楽代さんは靴を持って、躊躇わず窓から飛び降りた。ここ二階なんだけど。
窓から下を覗くと、靴を履いた雅楽代さんは私を見上げて一礼した。
私は心底思った事を呟いた。
「かっこいい・・・」
「ええ。攻撃的な発し方というのは、俗に言う殺気です。」
「雅楽代さんが言っていた無理矢理殻を壊す方法は、攻撃的な魔力を流し込んで負荷を掛けるってことですか?」
「強力な解術魔法を使ってヒビを入れて、攻撃的な魔力を流し込んで砕くんです。解術魔法を使わないと魔力は流し込めません。」
「じゃあ、痛みを感じずに攻撃的な魔力を感じる事はできますか?」
「ええ。まずそこから、という事ですか。」
「はい。紫々井先生が手を握ってくれた時、暖かい魔力を感じたんです。」
「では、私の手を握って頂けますか?」
「はい。」
雅楽代さんの手を握って目を閉じた。
「ほんの少しだけ流しますよ。」
ほんの少しと言われたけど、鳥肌が立って手を離しかけた。
「どうでしたか?」
「戦わなきゃ!って思いました。」
雅楽代さんは急に真顔になった。
「戦っても無駄死にです。逃げてください。」
「すみません。」
私は一時間、雅楽代さんに付き合ってもらって実験を行った。
結果分かった事は、雅楽代さんに魔力を送って貰うことで殻に若干の影響を感じることと、その効果的な魔力の伝え方が。
「あ、あの、ほんとにこれ以外無いんですか・・・?」
「一番効率的です。」
全方向から魔力を送った方がいいとなって、雅楽代さんが導き出した一番効率的な体勢が、抱き合う、だった。
おずおずと背中に手を回し、肩に顔を埋めた。ほのかに甘い匂いがした。
危険を感じるのに、胸は高鳴ってしまう。
男性と抱き合う事すら耐性の無い私が、こんなに素敵なイケおじに抱き締められるんだから、致し方ない。
けど、雅楽代さんの何の変化も無い心音を感じ取ると、冷水を浴びた様に意識が正気に戻った。
「これから他の方法も考えていきましょう。」
「はい。」
「では私はこれで失礼します。」
「ありがとうございました。」
「いえ、仕事ですから。明日もまた同じ時間に参りますので、窓を開けておいてください。」
「わかりました。」
雅楽代さんは靴を持って、躊躇わず窓から飛び降りた。ここ二階なんだけど。
窓から下を覗くと、靴を履いた雅楽代さんは私を見上げて一礼した。
私は心底思った事を呟いた。
「かっこいい・・・」
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