おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

文字の大きさ
上 下
46 / 105

46.雅楽代薫の激昂

しおりを挟む

「そりゃああんた達は困らないからどっちでも良いだろう。だが、椎崎家はそうじゃないだろう?そっちの味方をしているが、三軍の椎崎家は巫女が100%の力で権能を与えなければ、折角の大チャンスを棒に振るどころか、権能の自然消滅さえありうる。」

「巫女様が死ぬくらいなら、そうなった方がマシですよ。 」

「当主は潔が良いねえ。でも、あんたの兄弟はそうじゃないだろ?」

「兄弟が何と言おうと当主の俺の選択が椎崎家の選択です。 」

「それで統率が取れたら良いが。」

「取れますよ。」

雅楽代は椎崎の言葉を鼻で笑った。

「綺麗事だ。あんたらのやってることは巫女の今後を考えた行動とは言えない。巫女を死ぬまで籠の鳥にするつもりか?力を使えない巫女なんて存在意義が無い。政府からも守り手からも命を狙われ続けるんだぞ。」 

「死んだら元も子もない。巫女様は俺達が守り抜く。」

雅楽代は顔を歪めて横に倒れていたイスを片足で蹴り飛ばした。

「ふざけるな!!!戦えない奴等が守るなんて言葉を軽々しく遣うな!!!」

イスは倒れていたテーブルやイスを巻き込んで、ひしゃげた壁にクレーター状の大きな凹みを作った。

「ゆ、雪野さん・・・!」

「動じるな。まず建物の周辺の現象をクリアにしろ。完了したら外からも囲んで結界を張る。ポイントに到着したら知らせろ。」

「はい・・・!!」

動揺を堪えてインカムで他の隊員に指示を出した高辻の顎に伝った汗が床に落ちた。

高辻は震える手に力を入れた。

雅楽代薫は間違いなく世界最強の男だった。たった一人で一個小隊を殲滅した等の逸話を多く持ち、雪野が唯一勝てない人物でもあった。

自分が一生掛かっても勝てないと思う相手が勝てない相手を前にして、生存本能がサイレンを鳴らしたのだ。

「外敵から守るなんて言葉は、巫女の為に人を殺せる者しか使う事は許されない。もし陰の守り手が全員仕事を拒否したらどうするんだ?俺の様な敵からどうやって巫女を守るんだ?言ってみろ!!!」

「方法は考える。」

雅楽代はイスを紫々井に向かって蹴り飛ばした。

紫々井の魔力で軌道を逸れたイスは、紫々井の頬を掠って背後の壁にめり込んだ。

窓は粉々になり、外壁までもが雅楽代の魔力放出でひしゃげた。その圧は当然人間にも影響が大きく、雪野でさえも体が押し潰される様な圧を感じた。

「話にならない。」

雪野はこの状況の打開策を考え続けたが、答えは未だ見つからなかった。

両者とも一理ある意見を主張している。その二つは対極にあるが故に折衷案が見当たらない。しかも両者とも譲る気が無い。

にっちもさっちもいかない状況だった。

「あんたらは人を信じすぎだ。この世界のほぼ全ての人間は信じるに値しないと言うのに。」

「そうでもない。」

「典型的な陽の人間だな。脳内がご陽気だ。」

「今後巫女様にあんな提案はするな。」

話はループするばかりだった。

高辻のインカムに巫女の監視担当から連絡が入った。

「巫女がこちらに向かっています!!」

全員の魔力の放出がピタリと止まった。

「まだ動いたらあかん言うたのに・・・!」

紫々井は刀を納め、楓の元に走って行った。

雅楽代は詠川達を一瞥して、雪野の横を通って建物を出て行った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜

くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。 いや、ちょっと待て。ここはどこ? 私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。 マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。 私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ! だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの! 前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

目が覚めたら男女比がおかしくなっていた

いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。 一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!? 「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」 ##### r15は保険です。 2024年12月12日 私生活に余裕が出たため、投稿再開します。 それにあたって一部を再編集します。 設定や話の流れに変更はありません。

冷静沈着敵国総督様、魔術最強溺愛王様、私の子を育ててください~片思い相手との一夜のあやまちから、友愛女王が爆誕するまで~

KUMANOMORI(くまのもり)
恋愛
フィア・リウゼンシュタインは、奔放な噂の多い麗しき女騎士団長だ。真実を煙に巻きながら、その振る舞いで噂をはねのけてきていた。「王都の人間とは絶対に深い仲にならない」と公言していたにもかかわらず……。出立前夜に、片思い相手の第一師団長であり総督の息子、ゼクス・シュレーベンと一夜を共にしてしまう。 宰相娘と婚約関係にあるゼクスとの、たしかな記憶のない一夜に不安を覚えつつも、自国で反乱が起きたとの報告を受け、フィアは帰国を余儀なくされた。リュオクス国と敵対関係にある自国では、テオドールとの束縛婚が始まる。 フィアを溺愛し閉じこめるテオドールは、フィアとの子を求め、ひたすらに愛を注ぐが……。 フィアは抑制剤や抑制魔法により、懐妊を断固拒否! その後、フィアの懐妊が分かるが、テオドールの子ではないのは明らかで……。フィアは子ども逃がすための作戦を開始する。 作戦には大きな見落としがあり、フィアは子どもを護るためにテオドールと取り引きをする。 テオドールが求めたのは、フィアが国を出てから今までの記憶だった――――。 フィアは記憶も王位継承権も奪われてしまうが、ワケアリの子どもは着実に成長していき……。半ば強制的に、「父親」達は育児開始となる。 記憶も継承権も失ったフィアは母国を奪取出来るのか? そして、初恋は実る気配はあるのか? すれ違うゼクスとの思いと、不器用すぎるテオドールとの夫婦関係、そして、怪物たちとの奇妙な親子関係。 母国奪還を目指すフィアの三角育児恋愛関係×あべこべ怪物育児ストーリー♡ ~友愛女王爆誕編~ 第一部:母国帰還編 第二部:王都探索編 第三部:地下国冒険編 第四部:王位奪還編 第四部で友愛女王爆誕編は完結です。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...