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35.狸親父
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中に入ると、既に総理らしき人と数人の中高年の男性が待っていた。
落ち着いたバリトンボイスで、加々宮総理は自己紹介をし、握手を求めた。
昔はかなりモテたであろう甘いマスクに、オールバックにしたセミロングの白髪。いつもならときめくところだけど、この人は私を軟禁して利用しようとしている張本人だから、不快感しかなかった。
仕方なく握手をして座った私は、饒舌に上辺だけの歓迎の言葉を連ねる総理の言葉を遮った。
「本題に入ってください。心のない言葉は無用です。」
「失礼。」
「今後私をどうしたいんですか?」
「随分せっかちな方だ。」
「無駄な会話は嫌いです。私を政治に利用したいんですよね。なら要件をさっさと言ってください。」
「理の巫女を使うなんてとんでもない。」
総理はわざとらしく笑った。
「私にスピーチをさせてその後はどうするんですか?答えないなら会見には出ません。」
「巫女様、今のお立場はお分かりですか?」
「ええ。政府の保護を受けていますよ。けれど、私には守り手が居ます。保護してあげてるだなんて烏滸がましいですよ。」
「総理、今のお言葉は守り手を完全に敵に回しますよ。」
「失礼、そんなつもりではなかったんだ。立場というのは巫女という立場のことだよ。」
「私は水無瀬さんの為に動いています。国の為、ましてや総理の為に動くんじゃありません。」
あまりに不快で顔を顰めたら、調度品やペンがカタカタと震えだした。
「神凪さん、魔力が放出されています。」
「・・・すみません。」
「凄まじい魔力量だ。素晴らしい。」
「私は兵器になる気はありませんよ。」
「巫女様は気が早い。それに勘繰り過ぎだ。」
「そう願いたいですけど。」
わざとキツく接した。そんなこと向こうもお見通しだと思うけど、容易にコントロールできると思われるよりマシだ。
終始気を張りながら打ち合わせを済ませて、私は会見場に向かった。
「楓様、我々はこちらに立っておりますので、有事の際にはこちらに来てください。」
「勝手な事を言わないで下さい。」
「臨機応変な判断をしたまでだ。君より俺の方が強いんだから。」
「それは学生時代の話です。」
「俺に勝ったとは思えないが。」
あっ、凄い因縁だこれ・・・。二人の視線の間に火花が散って見えた。
「こっちに来ていただけると助かります。私、咄嗟に判断できる自信が無いので・・・」
「・・・承知しました。」
何とか会話を終わらせた。なんでこんなに仲の悪い人をぶつけてくるの。
リハーサルも終了し、本番前、私は会見場の前で立ち止まった。
「水無瀬さん、これで、水無瀬さんのやりたいことはできるんですよね。」
「まだわかりません。」
「少しでも役には立ってますか?」
「ええ。」
「なら良かった。」
私が笑顔で返すと、水無瀬さんは目を背けた。
「神凪さん、そろそろです。」
「はい。」
ドアが開けられると、目の前が真っ白になる程フラッシュを焚かれた。
私は意を決して踏み出した。
落ち着いたバリトンボイスで、加々宮総理は自己紹介をし、握手を求めた。
昔はかなりモテたであろう甘いマスクに、オールバックにしたセミロングの白髪。いつもならときめくところだけど、この人は私を軟禁して利用しようとしている張本人だから、不快感しかなかった。
仕方なく握手をして座った私は、饒舌に上辺だけの歓迎の言葉を連ねる総理の言葉を遮った。
「本題に入ってください。心のない言葉は無用です。」
「失礼。」
「今後私をどうしたいんですか?」
「随分せっかちな方だ。」
「無駄な会話は嫌いです。私を政治に利用したいんですよね。なら要件をさっさと言ってください。」
「理の巫女を使うなんてとんでもない。」
総理はわざとらしく笑った。
「私にスピーチをさせてその後はどうするんですか?答えないなら会見には出ません。」
「巫女様、今のお立場はお分かりですか?」
「ええ。政府の保護を受けていますよ。けれど、私には守り手が居ます。保護してあげてるだなんて烏滸がましいですよ。」
「総理、今のお言葉は守り手を完全に敵に回しますよ。」
「失礼、そんなつもりではなかったんだ。立場というのは巫女という立場のことだよ。」
「私は水無瀬さんの為に動いています。国の為、ましてや総理の為に動くんじゃありません。」
あまりに不快で顔を顰めたら、調度品やペンがカタカタと震えだした。
「神凪さん、魔力が放出されています。」
「・・・すみません。」
「凄まじい魔力量だ。素晴らしい。」
「私は兵器になる気はありませんよ。」
「巫女様は気が早い。それに勘繰り過ぎだ。」
「そう願いたいですけど。」
わざとキツく接した。そんなこと向こうもお見通しだと思うけど、容易にコントロールできると思われるよりマシだ。
終始気を張りながら打ち合わせを済ませて、私は会見場に向かった。
「楓様、我々はこちらに立っておりますので、有事の際にはこちらに来てください。」
「勝手な事を言わないで下さい。」
「臨機応変な判断をしたまでだ。君より俺の方が強いんだから。」
「それは学生時代の話です。」
「俺に勝ったとは思えないが。」
あっ、凄い因縁だこれ・・・。二人の視線の間に火花が散って見えた。
「こっちに来ていただけると助かります。私、咄嗟に判断できる自信が無いので・・・」
「・・・承知しました。」
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「まだわかりません。」
「少しでも役には立ってますか?」
「ええ。」
「なら良かった。」
私が笑顔で返すと、水無瀬さんは目を背けた。
「神凪さん、そろそろです。」
「はい。」
ドアが開けられると、目の前が真っ白になる程フラッシュを焚かれた。
私は意を決して踏み出した。
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