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24.揺れる気持ち
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明さんは、私に診断を下した。
『極度のストレスによる精神障害』
少なくとも一週間は安静にすること。明さんがそう言ったから、私は一週間の休暇を貰った。
何もしなくていいとなったら、一週間、私は寝て起きて食べて寝てを繰り返した。
ぐうたらしてたんじゃなく、食事くらいの理由じゃないとベッドから動くことができなかった。
おまけに高熱も出した。
「原因は?」
イラついている様子の水無瀬さんは聞いた。
「免疫ができていないことが原因と思われます。我々は産まれた時から長い時間を掛けて様々な菌やウイルスへの耐性を付けます。でも、楓さんは異世界から来たので耐性が無いんです。今後も今回のように体調不良を度々起こすはずです。今は精神障害で免疫機能も下がってますから、特に注意が必要です。」
明さんは私にポカリを飲ませてくれた。
「魔性の菌、ウイルスはこちらの世界にしかありません。こうなって当然です。」
「そんなことは一言も聞いてない。」
「それを聞いて政府が良い行動をするとは思えませんでしたから。楓さん、後一週間安静にしててな。」
私は頷いて水無瀬さんを見た。
高熱に浮かされながらも考えていた。
なんとなく、水無瀬さんが悪い人には思えなかったから、水無瀬さんが急ぐ理由が気になった。
「これ以上症状が悪化したら直ぐに呼んで。じゃあ・・・」
「水無瀬さんと、二人で話したいです・・・」
「私と?」
「はい。」
「楓さん、それは・・・」
「お願いします・・・」
「わかった。終わったらもう一度来るから。」
明さんは席を外してくれて、明さんが座っていたイスに座った。
「高熱が出ているのに、私と何を話したいんですか?」
「手、握ってもいいですか?」
「何故ですか?」
私は手を差し出した。
水無瀬さんは訝しげながらも私の手を握ってくれた。
水無瀬さんの指先はザラザラしていた。
「冷たい・・・」
「神凪さんが熱いんです。」
「手、仕事頑張ってる、手ですね・・・」
「仕事ですから。」
「文献を読んだり、資料を捲ってる手・・・水無瀬さんは、私で何がしたくて、なんでそんなに急いでるんですか・・・?」
「職務を全うしているだけです。」
「隈、できてますよ・・・私でできる、ことがあるなら、話して・・・頑張り、ます、から・・・」
「っ・・・!」
水無瀬さんの顔が辛そうに歪んだ。
「それが神凪さんにとって不利益でも?」
「いいですよ・・・水無瀬さん、ずっと、苦しそう、だから・・・」
水無瀬さんはサングラスを外して、ベッドに片膝を着いて、私の顔の横に手を着いた。
「水無瀬さん・・・?」
「目を、よく見せて。」
サングラスを取った水無瀬さんはやっぱりかっこよかった。溺れている時のような苦しそうな顔じゃなければ嬉しかったのに。
水無瀬さんの瞳には私が映っていたけど、水無瀬さんは私を見ていない。私を誰かと重ねているようだった。
薄らと水無瀬さんの唇が動いた。
「水無瀬さん・・・」
「・・・すみません。」
水無瀬さんはベッドから退いて、サングラスを掛けた。
「話はそれだけですか?」
「まだ話を・・・」
「安静にするようにと先程言われたばかりでしょう。今日はこれで帰ります。回復したら話し相手にはなりましょう。」
水無瀬さんはそう言って部屋を出ていった。
『極度のストレスによる精神障害』
少なくとも一週間は安静にすること。明さんがそう言ったから、私は一週間の休暇を貰った。
何もしなくていいとなったら、一週間、私は寝て起きて食べて寝てを繰り返した。
ぐうたらしてたんじゃなく、食事くらいの理由じゃないとベッドから動くことができなかった。
おまけに高熱も出した。
「原因は?」
イラついている様子の水無瀬さんは聞いた。
「免疫ができていないことが原因と思われます。我々は産まれた時から長い時間を掛けて様々な菌やウイルスへの耐性を付けます。でも、楓さんは異世界から来たので耐性が無いんです。今後も今回のように体調不良を度々起こすはずです。今は精神障害で免疫機能も下がってますから、特に注意が必要です。」
明さんは私にポカリを飲ませてくれた。
「魔性の菌、ウイルスはこちらの世界にしかありません。こうなって当然です。」
「そんなことは一言も聞いてない。」
「それを聞いて政府が良い行動をするとは思えませんでしたから。楓さん、後一週間安静にしててな。」
私は頷いて水無瀬さんを見た。
高熱に浮かされながらも考えていた。
なんとなく、水無瀬さんが悪い人には思えなかったから、水無瀬さんが急ぐ理由が気になった。
「これ以上症状が悪化したら直ぐに呼んで。じゃあ・・・」
「水無瀬さんと、二人で話したいです・・・」
「私と?」
「はい。」
「楓さん、それは・・・」
「お願いします・・・」
「わかった。終わったらもう一度来るから。」
明さんは席を外してくれて、明さんが座っていたイスに座った。
「高熱が出ているのに、私と何を話したいんですか?」
「手、握ってもいいですか?」
「何故ですか?」
私は手を差し出した。
水無瀬さんは訝しげながらも私の手を握ってくれた。
水無瀬さんの指先はザラザラしていた。
「冷たい・・・」
「神凪さんが熱いんです。」
「手、仕事頑張ってる、手ですね・・・」
「仕事ですから。」
「文献を読んだり、資料を捲ってる手・・・水無瀬さんは、私で何がしたくて、なんでそんなに急いでるんですか・・・?」
「職務を全うしているだけです。」
「隈、できてますよ・・・私でできる、ことがあるなら、話して・・・頑張り、ます、から・・・」
「っ・・・!」
水無瀬さんの顔が辛そうに歪んだ。
「それが神凪さんにとって不利益でも?」
「いいですよ・・・水無瀬さん、ずっと、苦しそう、だから・・・」
水無瀬さんはサングラスを外して、ベッドに片膝を着いて、私の顔の横に手を着いた。
「水無瀬さん・・・?」
「目を、よく見せて。」
サングラスを取った水無瀬さんはやっぱりかっこよかった。溺れている時のような苦しそうな顔じゃなければ嬉しかったのに。
水無瀬さんの瞳には私が映っていたけど、水無瀬さんは私を見ていない。私を誰かと重ねているようだった。
薄らと水無瀬さんの唇が動いた。
「水無瀬さん・・・」
「・・・すみません。」
水無瀬さんはベッドから退いて、サングラスを掛けた。
「話はそれだけですか?」
「まだ話を・・・」
「安静にするようにと先程言われたばかりでしょう。今日はこれで帰ります。回復したら話し相手にはなりましょう。」
水無瀬さんはそう言って部屋を出ていった。
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