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23.仕事をする理由
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「明さんの一族は、なんで巫女の守り手になったの?」
「巫女様が御先祖様を助けただけではなく、医療に対する志を評価して薬祖神様の庇護が受けられるよう取り計らってくださった。せやから、紫々井一族は人の治癒能力の限界を超える権能を持ってんねん。」
「限界を超える?」
「才能や修行では超えることができひん天井ってあるやろ?それを突き破れる権利を戴いた。せやから、紫々井家の特に力がある者は、どの医者でもできひん治療ができんねん。世界初の手術に成功したりとか。」
「そういう効果もあるんだ。」
「巫女様やからできることなんやで。」
「私にだからできる・・・その方法って文献とかがあるの?」
「無いよ。巫女様はそういう時は絶対部屋に人を入れへんかった。巫女様の神々と繋がる方法は謎や。」
「じゃあできないね。」
「楓さんならできるよ。巫女様はみんな自分でその方法を見付けてる。」
「そっか・・・」
そんな大それた事が私なんかにできるのか、想像が付かなかった。
「明さんは産まれた時からお医者さんになることが決まってたんだよね。他の仕事はしたくなかった?」
「役者になりたかった。」
これだけの甘いマスクと美声だ。役者として活躍する姿は想像に容易かった。
「芝居は人の感情を揺り動かせる。それに憧れた。」
「そうなんだ。」
「でも、医者になって良かったよ。俺にしか救えん命があるから。」
誠実な人なんだろうな。横顔を見ながら思った。
「楓さんはなんでプログラマーになったん?」
「楽しかったから。プログラムを組むのも、それを使った人が喜ぶのを見るのも、すごく楽しかった。だからプログラマーになったはずなのに・・・」
勤めだしてからは、そんなことには縁遠かった。
ただただ指示された仕事をこなす毎日。クライアントやユーザーの顔を見ることなんてなかった。
「私、こんな思いをするなら仕事なんてしたくなかった。仕事は物凄くハードで、 なんでプログラマーになったんだろうって、何度も思って、それが辛かった。」
「楓さん・・・」
足が引っ張られる様に重くて立ち止まった。
顔を見られたくなくて俯いて、顔を手で覆った。
「私、プログラマーの仕事をしなくてよくなったことにほっとしてるの。プログラマーとしてまた働こうって思えない。あんなに、あんなに好きだったのに・・・それが一番辛いの・・・」
堰を切った様に涙が溢れた。
「明さんみたいに良かったって思えない・・・ごめんなさい、急にこんなこと・・・」
明さんが優しく私を抱きしめた。
「楓さんには休息が必要なんや。ゆっくり休んで、酷い環境に身を置くことはないって体も分かれば、意欲は自然に湧いてくるよ。その為には気持ちを吐き出さんとあかん。いくらでも泣いてええんやで。」
私は明さんの背中に手を回して抱き締めた。
「俺の胸くらいいくらでも使ったらええから。」
「ありがとう・・・」
「巫女様が御先祖様を助けただけではなく、医療に対する志を評価して薬祖神様の庇護が受けられるよう取り計らってくださった。せやから、紫々井一族は人の治癒能力の限界を超える権能を持ってんねん。」
「限界を超える?」
「才能や修行では超えることができひん天井ってあるやろ?それを突き破れる権利を戴いた。せやから、紫々井家の特に力がある者は、どの医者でもできひん治療ができんねん。世界初の手術に成功したりとか。」
「そういう効果もあるんだ。」
「巫女様やからできることなんやで。」
「私にだからできる・・・その方法って文献とかがあるの?」
「無いよ。巫女様はそういう時は絶対部屋に人を入れへんかった。巫女様の神々と繋がる方法は謎や。」
「じゃあできないね。」
「楓さんならできるよ。巫女様はみんな自分でその方法を見付けてる。」
「そっか・・・」
そんな大それた事が私なんかにできるのか、想像が付かなかった。
「明さんは産まれた時からお医者さんになることが決まってたんだよね。他の仕事はしたくなかった?」
「役者になりたかった。」
これだけの甘いマスクと美声だ。役者として活躍する姿は想像に容易かった。
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「そうなんだ。」
「でも、医者になって良かったよ。俺にしか救えん命があるから。」
誠実な人なんだろうな。横顔を見ながら思った。
「楓さんはなんでプログラマーになったん?」
「楽しかったから。プログラムを組むのも、それを使った人が喜ぶのを見るのも、すごく楽しかった。だからプログラマーになったはずなのに・・・」
勤めだしてからは、そんなことには縁遠かった。
ただただ指示された仕事をこなす毎日。クライアントやユーザーの顔を見ることなんてなかった。
「私、こんな思いをするなら仕事なんてしたくなかった。仕事は物凄くハードで、 なんでプログラマーになったんだろうって、何度も思って、それが辛かった。」
「楓さん・・・」
足が引っ張られる様に重くて立ち止まった。
顔を見られたくなくて俯いて、顔を手で覆った。
「私、プログラマーの仕事をしなくてよくなったことにほっとしてるの。プログラマーとしてまた働こうって思えない。あんなに、あんなに好きだったのに・・・それが一番辛いの・・・」
堰を切った様に涙が溢れた。
「明さんみたいに良かったって思えない・・・ごめんなさい、急にこんなこと・・・」
明さんが優しく私を抱きしめた。
「楓さんには休息が必要なんや。ゆっくり休んで、酷い環境に身を置くことはないって体も分かれば、意欲は自然に湧いてくるよ。その為には気持ちを吐き出さんとあかん。いくらでも泣いてええんやで。」
私は明さんの背中に手を回して抱き締めた。
「俺の胸くらいいくらでも使ったらええから。」
「ありがとう・・・」
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