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22.呼び名
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新居に引っ越した次の日は、初めて誰にも会わなくていい休日だった。
お昼頃に起きた私は、やることも無いから家を出て散策に向かった。
風が気持ちよくて深呼吸をした。
こんな森とは無縁だったから、凄く新鮮に感じる。
しばらく歩くと、花壇を眺めている紫々井先生を見付けた。
「紫々井先生!」
「巫女様。こんにちは。」
「こんにちは。何をされてたんですか?」
「この花壇は薬草を植えてるので、様子を見に来ました。」
「薬草・・・治療に使うんですか?」
「漢方薬の調合に使う予定です。」
「漢方薬・・・魔法があるから、存在しないと思ってました。」
「魔法は万能ではありません。治療費が高額にもなります。漢方薬は重宝してますよ。」
「そうなんですか。先生が調合するんですか?」
「調合師が別におります。何を作るかは私の判断なので、把握のためにも確認しています。巫女様はどちらに行かれるんですか?」
「家に居ても何もすることがないので、散策に来ました。あの、巫女様って呼び方、変えてもらえませんか?」
「そんな恐れ多いことはできません。」
「私の要望は聞いてくれるんですよね。」
「そうは言いましたが・・・」
「むず痒いし、距離がありすぎてなんというか・・・」
「では、神凪様。」
「様は嫌です。紫々井先生はこの先ずっと私の主治医をしてくれるんですよね?か、楓さん、とか・・・」
断られることを見越して、つい欲張った。
「すみません、無理」
「楓さん。」
呼んでくれるとは思わなくて二度見した。
目が合って真剣な顔にドキリとした。
「それなら、私のことも、名前で呼んでいただけますか?」
「えっ!?」
「私だけお名前で呼ばせていただくと、他の守り手に不敬やと言われてしまいます。ですから、明さんとお呼びください。」
イケおじを名前で・・・名前で呼び合うなんて・・・。
「あ、明さん・・・」
まさかこんなことになるとは思わなかった。
呼んでみたら恥ずかしくて顔を逸らした。
「す、すみません・・・こうなるとは思わなくて・・・」
「名前で呼び合うなら、もう少し砕けた話し方をさせてもらえませんか。」
「はい!それは勿論!」
「ありがとうございます。」
微笑みに心をやられた。イケおじの笑みは手榴弾くらい威力がある。
「ではタメ口で。」
「はい・・・ええっ!?」
「そういう意味ではなかったのですか?」
「あ、いえ、そうです・・・!」
勢いで返してしまったけど、紫々井先生とタメ口で話すのはやばい。
恋人同士みたいじゃない。
「顔真っ赤やで。」
「こういうの、慣れてなくて・・・」
「ははっ、可愛いなぁ。」
やばい。これはやばい。破壊力がとんでもない。顔から火が出そうなくらい火照った顔を背けて隠した。
「良かったら一緒に散策しいひん?」
「はい・・・!あっ、うん・・・!」
「ほな行こか。」
静寂が包む庭を、明さんと歩幅を合わせて歩く。
白衣も大好きだけど、私服もかっこいい。
お昼頃に起きた私は、やることも無いから家を出て散策に向かった。
風が気持ちよくて深呼吸をした。
こんな森とは無縁だったから、凄く新鮮に感じる。
しばらく歩くと、花壇を眺めている紫々井先生を見付けた。
「紫々井先生!」
「巫女様。こんにちは。」
「こんにちは。何をされてたんですか?」
「この花壇は薬草を植えてるので、様子を見に来ました。」
「薬草・・・治療に使うんですか?」
「漢方薬の調合に使う予定です。」
「漢方薬・・・魔法があるから、存在しないと思ってました。」
「魔法は万能ではありません。治療費が高額にもなります。漢方薬は重宝してますよ。」
「そうなんですか。先生が調合するんですか?」
「調合師が別におります。何を作るかは私の判断なので、把握のためにも確認しています。巫女様はどちらに行かれるんですか?」
「家に居ても何もすることがないので、散策に来ました。あの、巫女様って呼び方、変えてもらえませんか?」
「そんな恐れ多いことはできません。」
「私の要望は聞いてくれるんですよね。」
「そうは言いましたが・・・」
「むず痒いし、距離がありすぎてなんというか・・・」
「では、神凪様。」
「様は嫌です。紫々井先生はこの先ずっと私の主治医をしてくれるんですよね?か、楓さん、とか・・・」
断られることを見越して、つい欲張った。
「すみません、無理」
「楓さん。」
呼んでくれるとは思わなくて二度見した。
目が合って真剣な顔にドキリとした。
「それなら、私のことも、名前で呼んでいただけますか?」
「えっ!?」
「私だけお名前で呼ばせていただくと、他の守り手に不敬やと言われてしまいます。ですから、明さんとお呼びください。」
イケおじを名前で・・・名前で呼び合うなんて・・・。
「あ、明さん・・・」
まさかこんなことになるとは思わなかった。
呼んでみたら恥ずかしくて顔を逸らした。
「す、すみません・・・こうなるとは思わなくて・・・」
「名前で呼び合うなら、もう少し砕けた話し方をさせてもらえませんか。」
「はい!それは勿論!」
「ありがとうございます。」
微笑みに心をやられた。イケおじの笑みは手榴弾くらい威力がある。
「ではタメ口で。」
「はい・・・ええっ!?」
「そういう意味ではなかったのですか?」
「あ、いえ、そうです・・・!」
勢いで返してしまったけど、紫々井先生とタメ口で話すのはやばい。
恋人同士みたいじゃない。
「顔真っ赤やで。」
「こういうの、慣れてなくて・・・」
「ははっ、可愛いなぁ。」
やばい。これはやばい。破壊力がとんでもない。顔から火が出そうなくらい火照った顔を背けて隠した。
「良かったら一緒に散策しいひん?」
「はい・・・!あっ、うん・・・!」
「ほな行こか。」
静寂が包む庭を、明さんと歩幅を合わせて歩く。
白衣も大好きだけど、私服もかっこいい。
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