おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

２０．傀儡

「余計なことをしてくれたな。」

「俺は護衛のために最善の選択をしたまでです。」

水無瀬の怒気は普通の人間ならたじろぐ程であったが、雪野は動じなかった。

「あのままでは守り手に取られていた可能性が高かったと思います。ですから、こちらにもチャンスが巡るようにアドバイスをしました。」

「政府でと言えば良かっただろう。」

「それでは唯一の信頼を失います。どちらかの味方をするのは危険でした。」

「くっそ･･･計画が狂った･･･早く成果を出さなければ法案が･･･」

珍しく取り乱す水無瀬を見て雪野は思った。哀れだと。

巫女が政府の傀儡かいらいになったところで、水無瀬一人の望みである法案の成立が叶うとは思えなかった。

水無瀬もまた傀儡だ。それを分かっていながらも、一縷の望みを諦められず、汚れごとにも手を染め、人生を捧げている水無瀬の姿を、雪野は見ていられなかった。

水無瀬は雪野の大学の先輩だった。

あの事件が起こるまでは、水無瀬はよく笑い、朗らかな性格で面倒見も良く、周りから愛されていた。

事件が水無瀬を狂わせたのだ。そのせいで性格まで変わってしまった。

楓への助言は、あれ以来もがき苦しみ続ける水無瀬のための助言でもあった。

もう、こんな哀れな姿を見たくはない。

そう願う雪野は、なんとなく、楓が現状を変える気がしてならなかった。

彼女の味方をしよう。そう決意して、雪野は執務室を出た。