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13.水無瀬京介は食えない男
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「隊長!」
「静かに。眠らせた。」
楓に睡眠の魔術を掛けた雪野は、楓を抱き上げた。
「休ませるのは別の部屋の方がいい。スペアの病室に移す。準備を。」
「はい。」
「隊長、怪我の手当を。」
「これくらい自分で治せる。」
誰も近寄らせずに楓を別の病室に移した雪野は、楓をベッドに降ろすと、楓の乱れた髪を整えた。
必死に主張し、助けを求める楓が、幼少期の自分に重なった。だから、雪野には楓に今必要なものが分かったのだった。
「雪野くん。」
駆け付けた水無瀬は、雪野の顔色を確認した。
「無茶をしたらしいね。」
「彼女は魔力を放出しただけです。それを生身で受けることくらい、なんともありません。そんなことより、今後どうなさいますか。」
「総理達も流石に動くだろうね。」
「上の話はしていません。室長がどうなさるかを聞いています。」
その場の全員が雪野の静かな怒りを察して、病室は緊張感に包まれた。
「計画を早める。」
「それだけですか?」
「他に何ができるっていうの?やれることは全部やっているよ。」
「その結果がこれなら、計画は破綻しています。殺処分になってしまいますよ。」
「君に言われなくてもわかっているよ。」
「それならもっと手立てを考えてください。俺達の任務は彼女の護衛。殺すことではありません。」
雪野は語気を強めた。必死に足掻く楓を殺めたくはなかった。
「そうだねぇ。」
水無瀬は雪野の怒りをさらりとかわして、楓の顔を覗いた。
「どうしたものかな。僕だって殺したくはないよ。」
「目が覚めたら、彼女はまた同じことをしますよ。」
「彼女のお守りは君に任せよう。定期的に」
「それでは今までと変わりません。室長、やろうと思えばできるのではありませんか。」
水無瀬が楓を外に出したくないことはわかっていた。
水無瀬は慎重で狡猾な男だ。手懐ければ強力な駒になる楓を誰よりもコントロールしたがっている。
「これ以上彼女を抑え込むことは不可能です。」
「君の案を聞こうか。」
「彼女にとって最大のストレスは情報から遮断されていることです。まず情報を与えるべきです。」
「どんな情報を?」
「理の巫女のことです。」
「それは難しいねぇ。」
「もし彼女が歩魔法を使って自殺できると知ったら、彼女は自殺しますよ。自分が何故生かされているのかという問いが、俺には死にたいと聞こえました。」
「君がそこまで言うなら掛け合ってみるよ。」
「そうしていちいち許可を取っていては間に合いません。」
「話すことを掛け合うんじゃない。僕に一任してほしいと掛け合うんだよ。」
水無瀬はそう言って、僅かに口角を上げた。
水無瀬はこれを狙っていたのかもしれない。
何事もなかったかのように去っていった水無瀬の後ろ姿を見て、雪野は不快感に眉を顰めた。
「静かに。眠らせた。」
楓に睡眠の魔術を掛けた雪野は、楓を抱き上げた。
「休ませるのは別の部屋の方がいい。スペアの病室に移す。準備を。」
「はい。」
「隊長、怪我の手当を。」
「これくらい自分で治せる。」
誰も近寄らせずに楓を別の病室に移した雪野は、楓をベッドに降ろすと、楓の乱れた髪を整えた。
必死に主張し、助けを求める楓が、幼少期の自分に重なった。だから、雪野には楓に今必要なものが分かったのだった。
「雪野くん。」
駆け付けた水無瀬は、雪野の顔色を確認した。
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「彼女は魔力を放出しただけです。それを生身で受けることくらい、なんともありません。そんなことより、今後どうなさいますか。」
「総理達も流石に動くだろうね。」
「上の話はしていません。室長がどうなさるかを聞いています。」
その場の全員が雪野の静かな怒りを察して、病室は緊張感に包まれた。
「計画を早める。」
「それだけですか?」
「他に何ができるっていうの?やれることは全部やっているよ。」
「その結果がこれなら、計画は破綻しています。殺処分になってしまいますよ。」
「君に言われなくてもわかっているよ。」
「それならもっと手立てを考えてください。俺達の任務は彼女の護衛。殺すことではありません。」
雪野は語気を強めた。必死に足掻く楓を殺めたくはなかった。
「そうだねぇ。」
水無瀬は雪野の怒りをさらりとかわして、楓の顔を覗いた。
「どうしたものかな。僕だって殺したくはないよ。」
「目が覚めたら、彼女はまた同じことをしますよ。」
「彼女のお守りは君に任せよう。定期的に」
「それでは今までと変わりません。室長、やろうと思えばできるのではありませんか。」
水無瀬が楓を外に出したくないことはわかっていた。
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「君の案を聞こうか。」
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「君がそこまで言うなら掛け合ってみるよ。」
「そうしていちいち許可を取っていては間に合いません。」
「話すことを掛け合うんじゃない。僕に一任してほしいと掛け合うんだよ。」
水無瀬はそう言って、僅かに口角を上げた。
水無瀬はこれを狙っていたのかもしれない。
何事もなかったかのように去っていった水無瀬の後ろ姿を見て、雪野は不快感に眉を顰めた。
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