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3.美声のオジ様
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目を覚ました私の視界には、白い天井が映った。
私、助かったんだ。
左右に首を動かして見渡すと病室だと分かった。しかもスイートルームの様に広い。
口には酸素マスク、周りには医療機器が置かれていて、電子音が一定のリズムを刻んでいた。
起き上がろうとして、体の異変に気付いた。
どこも痛くない。
無理矢理動かしていた足首も、打ち付けたはずの全身も、倒れた時に擦りむいたはずの手も、全く痛くない。
布団を捲ると、足首は元通りになっていた。
私、長い間眠ってたのかな。
とりあえず看護師さんを呼ぼう。そう思ってナースコールに手を伸ばした時、駆けてくる足音が聞こえた。
重い足音は複数あった。まさかこの部屋じゃないだろう、とナースコールを掴んだら、足音は私の病室の前で止まった。
「えっ。」
ゆっくりとした三回のノック音。
『貴女を保護した警察の者です。』
我が耳を疑う程のバリトンボイスに動揺した。
『お会いしてお話をお伺いしたいのですが、中に入ってもよろしいでしょうか。』
色気の漂う甘い美声。私は扉の奥の男性がイケオジである事を確信した。
メイクを直したいけど時間が無い。道具も鏡も無い。私はせめてもの足掻きに、服を整え、手ぐしで髪を整えた。
「ど、どうぞ。」
ゆっくり扉が開いた。
そこに立っていたのは、セミロングの黒髪で眉まで掛かる前髪揺れる中年男性だった。
淡い黄色の細いサングラスを掛け、スリーピースのスーツは黒を基調としてスラッとした体に合っていていた。
私は思った。
こっ、好みどストライク!!!
叫びそうになって口を手で塞いだ。
「驚かせて申し訳ありません。できましたら、あと三人同席させていただきたいのですが...」
「ど、どうぞ...!」
「ありがとうございます。」
ドアを開けて、イケおじは、入れ、と言った。
なんて美声なんだ。この声に沢山の女性が落ちたことだろう。
入って来た一人目は小太りのおじさん。薄らハゲで脂汗をかいて、大きめの革の鞄を抱えていた。二人目は長い髪を張り付けるようにセットした50代くらいの女性。
私は目を見開いた。
現れたのは、40代くらいで、高身長で黒縁眼鏡、目にかかる前髪でガタイは良く、シャツ以外は黒色だった。
こっ、こっちもストライク!!!
「医師の診察に同席させていただきたいのですが」
「ど、どうぞ!大丈夫です!」
思わず食い気味になってしまった。
美声のイケオジは微笑んで、ありがとうございます、と返した。
ヤバい。手が付けられない興奮を押さえ付けて、平静を装った。
医師は時間を掛けて診察して、問題ないと診断結果を伝えた。
美声のイケオジと小太りのおじさんが前列に並んで座り、女性が後列に座った。黒縁眼鏡のイケオジは何故か壁際に立った。
「彼は職務上、立っている方が都合がいいんです。お気になさらず。」
「はい。」
イケおじの後ろにイケおじ。正に眼福だ。
「まず、自己紹介をさせていただきます。私、内閣魔力消失対策室室長の水無瀬京介です。」
聞き惚れていた私は、自己紹介が終わってから、おかしい言葉が混ざっていたことに気付いた。
「魔法...?」
私、助かったんだ。
左右に首を動かして見渡すと病室だと分かった。しかもスイートルームの様に広い。
口には酸素マスク、周りには医療機器が置かれていて、電子音が一定のリズムを刻んでいた。
起き上がろうとして、体の異変に気付いた。
どこも痛くない。
無理矢理動かしていた足首も、打ち付けたはずの全身も、倒れた時に擦りむいたはずの手も、全く痛くない。
布団を捲ると、足首は元通りになっていた。
私、長い間眠ってたのかな。
とりあえず看護師さんを呼ぼう。そう思ってナースコールに手を伸ばした時、駆けてくる足音が聞こえた。
重い足音は複数あった。まさかこの部屋じゃないだろう、とナースコールを掴んだら、足音は私の病室の前で止まった。
「えっ。」
ゆっくりとした三回のノック音。
『貴女を保護した警察の者です。』
我が耳を疑う程のバリトンボイスに動揺した。
『お会いしてお話をお伺いしたいのですが、中に入ってもよろしいでしょうか。』
色気の漂う甘い美声。私は扉の奥の男性がイケオジである事を確信した。
メイクを直したいけど時間が無い。道具も鏡も無い。私はせめてもの足掻きに、服を整え、手ぐしで髪を整えた。
「ど、どうぞ。」
ゆっくり扉が開いた。
そこに立っていたのは、セミロングの黒髪で眉まで掛かる前髪揺れる中年男性だった。
淡い黄色の細いサングラスを掛け、スリーピースのスーツは黒を基調としてスラッとした体に合っていていた。
私は思った。
こっ、好みどストライク!!!
叫びそうになって口を手で塞いだ。
「驚かせて申し訳ありません。できましたら、あと三人同席させていただきたいのですが...」
「ど、どうぞ...!」
「ありがとうございます。」
ドアを開けて、イケおじは、入れ、と言った。
なんて美声なんだ。この声に沢山の女性が落ちたことだろう。
入って来た一人目は小太りのおじさん。薄らハゲで脂汗をかいて、大きめの革の鞄を抱えていた。二人目は長い髪を張り付けるようにセットした50代くらいの女性。
私は目を見開いた。
現れたのは、40代くらいで、高身長で黒縁眼鏡、目にかかる前髪でガタイは良く、シャツ以外は黒色だった。
こっ、こっちもストライク!!!
「医師の診察に同席させていただきたいのですが」
「ど、どうぞ!大丈夫です!」
思わず食い気味になってしまった。
美声のイケオジは微笑んで、ありがとうございます、と返した。
ヤバい。手が付けられない興奮を押さえ付けて、平静を装った。
医師は時間を掛けて診察して、問題ないと診断結果を伝えた。
美声のイケオジと小太りのおじさんが前列に並んで座り、女性が後列に座った。黒縁眼鏡のイケオジは何故か壁際に立った。
「彼は職務上、立っている方が都合がいいんです。お気になさらず。」
「はい。」
イケおじの後ろにイケおじ。正に眼福だ。
「まず、自己紹介をさせていただきます。私、内閣魔力消失対策室室長の水無瀬京介です。」
聞き惚れていた私は、自己紹介が終わってから、おかしい言葉が混ざっていたことに気付いた。
「魔法...?」
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