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激動
71.試練の街
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「もう8つ目の街かぁ。」
「俺達の旅ももう半年だ。」
私はクロードと旅を続けている。
街から街へ、玉藻に乗って旅をしている。
「半年で8つも回れたのは玉藻のおかげだよ。ありがとう。」
旅に欠かせない存在になった、白銀の狐の神獣、玉藻の顎を撫ぜた。
私に擦り寄った玉藻に顔を埋めた。このモフモフに幾度となく癒されてきた。
「検問が近い。タマモ、小さくなってくれ。」
玉藻は頷いて、私の肩に乗れる程小さくなって、私の鞄に入った。
街に入ると、まずはギルドに行って、街での活動の申請を行う。
この時私達はギルドで集められる情報を集められるだけ集めて、街の情報が集められる依頼をいくつか選ぶ。
情報収集は何より大切な作業だ。次は情報源の確保。ギルド以外に情報が掴めそうな店や人に目星を付ける。
それが終わってやっと、泊まれる宿を探し、日没まで時間があれば買い出しに向かう。
これがルーティーンだ。
いつものルーティーンをこなしていると、魔管の職員とすれ違った。
最近はどの魔管の職員も殺気立っている。
「流石に多くなってきたね。」
「派手に活動してるからね。魔管は躍起だろう。」
魔管が躍起になって探している私達は、それを尻目に買い物をしていた。
道中、細い小道を見付けて覗き込んだ。魔法で視力を高めて奥まで良く見ると、路上に座り込んでいる浮浪者達が同じビンを持っている事に気付いた。
「ツバキ、あまりじろじろ見るな。」
「ごめん。」
私は先に進んだクロードの後を追った。
追い付くと、肩を寄せて小声で言った。
「さっきの路地に居た浮浪者、みんな青い小瓶を持ってた。手の中に納まるくらいの小さいやつ。もしかしてあれがそうかな。」
「ギルドで聞いたビンの特徴と合致しているね。浮浪者の様子も重度の中毒者のそれだった。」
「やっぱり。」
ギルドで私達は、最近魔法ドラッグの被害が増えていると聞いていた。すぐにそれが確認できたんだから、他の街より深刻な状態なんだろう。
宿屋の部屋で荷解きを終えた頃、クロードが部屋を訪ねて来た。
これもルーティーン。この街で何をするかを決める会議をするためだ。
クロードを招き入れて、ソファに向かい合って座ると、クロードは神妙な面持ちで私に聞いた。
「ツバキの世界でのドラッグの症状はどんなものだった。」
「基本こっちと同じだよ。向こうは科学と医療技術が発達しているから、体内でどんなことが起こっているか解明されてるけど。」
「体内の変化?」
「例えば、脳が溶けたり。」
「脳みそが溶ける?ドラッグで?」
「うん。種類によって、脳以外の場所への影響は様々なんだけど、シンナーってドラッグは脳を溶かすの。ほら、カリエンで目が見えなくなった中毒者も居るって聞いたでしょ?あれはおそらくシンナーと同じ症状が起こって、脳の視覚を司る部分が溶けてしまって目が見えなくなったの。他にも、臓器に悪影響を及ぼして病気を発症したりする。」
「ツバキは中毒者に関わる仕事をしていたのか?」
「ううん。私の国では、子供の頃にドラッグの危険性について学ぶの。だから基礎知識だよ。ドラッグの被害を減らしたいなら、そういう教育が大事なの。」
「この国では難しいな…」
「クロードはドラッグの問題に取り組みたいの?」
「俺達の旅ももう半年だ。」
私はクロードと旅を続けている。
街から街へ、玉藻に乗って旅をしている。
「半年で8つも回れたのは玉藻のおかげだよ。ありがとう。」
旅に欠かせない存在になった、白銀の狐の神獣、玉藻の顎を撫ぜた。
私に擦り寄った玉藻に顔を埋めた。このモフモフに幾度となく癒されてきた。
「検問が近い。タマモ、小さくなってくれ。」
玉藻は頷いて、私の肩に乗れる程小さくなって、私の鞄に入った。
街に入ると、まずはギルドに行って、街での活動の申請を行う。
この時私達はギルドで集められる情報を集められるだけ集めて、街の情報が集められる依頼をいくつか選ぶ。
情報収集は何より大切な作業だ。次は情報源の確保。ギルド以外に情報が掴めそうな店や人に目星を付ける。
それが終わってやっと、泊まれる宿を探し、日没まで時間があれば買い出しに向かう。
これがルーティーンだ。
いつものルーティーンをこなしていると、魔管の職員とすれ違った。
最近はどの魔管の職員も殺気立っている。
「流石に多くなってきたね。」
「派手に活動してるからね。魔管は躍起だろう。」
魔管が躍起になって探している私達は、それを尻目に買い物をしていた。
道中、細い小道を見付けて覗き込んだ。魔法で視力を高めて奥まで良く見ると、路上に座り込んでいる浮浪者達が同じビンを持っている事に気付いた。
「ツバキ、あまりじろじろ見るな。」
「ごめん。」
私は先に進んだクロードの後を追った。
追い付くと、肩を寄せて小声で言った。
「さっきの路地に居た浮浪者、みんな青い小瓶を持ってた。手の中に納まるくらいの小さいやつ。もしかしてあれがそうかな。」
「ギルドで聞いたビンの特徴と合致しているね。浮浪者の様子も重度の中毒者のそれだった。」
「やっぱり。」
ギルドで私達は、最近魔法ドラッグの被害が増えていると聞いていた。すぐにそれが確認できたんだから、他の街より深刻な状態なんだろう。
宿屋の部屋で荷解きを終えた頃、クロードが部屋を訪ねて来た。
これもルーティーン。この街で何をするかを決める会議をするためだ。
クロードを招き入れて、ソファに向かい合って座ると、クロードは神妙な面持ちで私に聞いた。
「ツバキの世界でのドラッグの症状はどんなものだった。」
「基本こっちと同じだよ。向こうは科学と医療技術が発達しているから、体内でどんなことが起こっているか解明されてるけど。」
「体内の変化?」
「例えば、脳が溶けたり。」
「脳みそが溶ける?ドラッグで?」
「うん。種類によって、脳以外の場所への影響は様々なんだけど、シンナーってドラッグは脳を溶かすの。ほら、カリエンで目が見えなくなった中毒者も居るって聞いたでしょ?あれはおそらくシンナーと同じ症状が起こって、脳の視覚を司る部分が溶けてしまって目が見えなくなったの。他にも、臓器に悪影響を及ぼして病気を発症したりする。」
「ツバキは中毒者に関わる仕事をしていたのか?」
「ううん。私の国では、子供の頃にドラッグの危険性について学ぶの。だから基礎知識だよ。ドラッグの被害を減らしたいなら、そういう教育が大事なの。」
「この国では難しいな…」
「クロードはドラッグの問題に取り組みたいの?」
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