上 下
69 / 72
激動

71.試練の街

しおりを挟む
「もう8つ目の街かぁ。」

「俺達の旅ももう半年だ。」

私はクロードと旅を続けている。

街から街へ、玉藻に乗って旅をしている。

「半年で8つも回れたのは玉藻のおかげだよ。ありがとう。」

旅に欠かせない存在になった、白銀の狐の神獣、玉藻の顎を撫ぜた。

私に擦り寄った玉藻に顔を埋めた。このモフモフに幾度となく癒されてきた。

「検問が近い。タマモ、小さくなってくれ。」

玉藻は頷いて、私の肩に乗れる程小さくなって、私の鞄に入った。

街に入ると、まずはギルドに行って、街での活動の申請を行う。

この時私達はギルドで集められる情報を集められるだけ集めて、街の情報が集められる依頼をいくつか選ぶ。

情報収集は何より大切な作業だ。次は情報源の確保。ギルド以外に情報が掴めそうな店や人に目星を付ける。

それが終わってやっと、泊まれる宿を探し、日没まで時間があれば買い出しに向かう。

これがルーティーンだ。

いつものルーティーンをこなしていると、魔管の職員とすれ違った。

最近はどの魔管の職員も殺気立っている。

「流石に多くなってきたね。」

「派手に活動してるからね。魔管は躍起やっきだろう。」

魔管が躍起になって探している私達は、それを尻目に買い物をしていた。

道中、細い小道を見付けて覗き込んだ。魔法で視力を高めて奥まで良く見ると、路上に座り込んでいる浮浪者達が同じビンを持っている事に気付いた。

「ツバキ、あまりじろじろ見るな。」

「ごめん。」

私は先に進んだクロードの後を追った。

追い付くと、肩を寄せて小声で言った。

「さっきの路地に居た浮浪者、みんな青い小瓶を持ってた。手の中に納まるくらいの小さいやつ。もしかしてあれがそうかな。」

「ギルドで聞いたビンの特徴と合致しているね。浮浪者の様子も重度の中毒者のそれだった。」

「やっぱり。」

ギルドで私達は、最近魔法ドラッグの被害が増えていると聞いていた。すぐにそれが確認できたんだから、他の街より深刻な状態なんだろう。

宿屋の部屋で荷解きを終えた頃、クロードが部屋を訪ねて来た。

これもルーティーン。この街で何をするかを決める会議をするためだ。

クロードを招き入れて、ソファに向かい合って座ると、クロードは神妙な面持ちで私に聞いた。

「ツバキの世界でのドラッグの症状はどんなものだった。」

「基本こっちと同じだよ。向こうは科学と医療技術が発達しているから、体内でどんなことが起こっているか解明されてるけど。」

「体内の変化?」

「例えば、脳が溶けたり。」

「脳みそが溶ける?ドラッグで?」

「うん。種類によって、脳以外の場所への影響は様々なんだけど、シンナーってドラッグは脳を溶かすの。ほら、カリエンで目が見えなくなった中毒者も居るって聞いたでしょ?あれはおそらくシンナーと同じ症状が起こって、脳の視覚を司る部分が溶けてしまって目が見えなくなったの。他にも、臓器に悪影響を及ぼして病気を発症したりする。」

「ツバキは中毒者に関わる仕事をしていたのか?」

「ううん。私の国では、子供の頃にドラッグの危険性について学ぶの。だから基礎知識だよ。ドラッグの被害を減らしたいなら、そういう教育が大事なの。」

「この国では難しいな…」

「クロードはドラッグの問題に取り組みたいの?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ
ファンタジー
逆恨みから1000回目の転生に繋がる異世界転生、全ての世界の経験が1人の元少女を強くする!

聖なる幼女のお仕事、それは…

咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。  村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。  それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。  この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

王都交通整理隊第19班~王城前の激混み大通りは、平民ばかりの“落ちこぼれ”第19班に任せろ!~

柳生潤兵衛
ファンタジー
ボウイング王国の王都エ―バスには、都内を守護する騎士の他に多くの衛視隊がいる。 騎士を含む彼らは、貴族平民問わず魔力の保有者の中から選抜され、その能力によって各隊に配属されていた。 王都交通整理隊は、都内の大通りの馬車や荷台の往来を担っているが、衛視の中では最下層の職種とされている。 その中でも最も立場が弱いのが、平民班長のマーティンが率いる第19班。班員も全員平民で個性もそれぞれ。 大きな待遇差もある。 ある日、そんな王都交通整理隊第19班に、国王主催の夜会の交通整理という大きな仕事が舞い込む。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...