救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

激動

６８．救国の魔女の意図

邸宅に戻り、先程の部屋に入るなり、カインは力任せにテーブルを叩いた。

冷静沈着を絵に描いた様なカインがここまで怒りを顕あらわにするのは、シアンズも数回しか見たことがなかった。

「これは流石に父上も動かざるを得ないだろう。」

シアンズは冷静に筆を走らせた。

「こんな事をされたら魔女の捜索に本腰を入れなければならないな。公務は全てキャンセルする。」

カインは目撃情報が並べられた地図に目をやった。

椿は遠回りをしながらも帝都に近付いている。

「兵を増員して、魔女が次に向かいそうな街にも捜索隊を出す。これだけ網目を掻い潜って来たのだから無駄だとは思うが気休めにはなるだろう。カイン、魔女は帝都で何をすると思う。俺は素直に国に保護を求めるとは思えない。」

「今までのように帝都の状況を把握して、貧困層の問題の解決を試みると思う。国に保護を求めるのはその後だろう。」

「なら、貧困層にスパイを送って監視させておこう。カイン、村人からアレを貰い受けることは可能かと思うか？」

「魔女が残した最後の物だ。かなり厳しいだろう。あのサンという男に交渉してみよう。少なくとも話は聞いてくれる。」

「交渉は頼んだ。」

「ああ。これからどうする。」

「明日、ラクタナのギルドで魔女について聞き取りを行う。村もあのままにはできない。最低でも住民達の仮住まいができるまでは、ここを離れる訳にはいかない。」

「魔管に先を越される訳にはいかない。」

「魔管が戻ってこないとも限らない。戻って来たら今度こそ村人の命は無いんだ。冷静になれ。」

「･･･すまない。」

「魔女は遠回りで帝都に向かっている。真っ直ぐ帝都に戻っても手持ち無沙汰になるだろう。それなら、ここに留まってできることをやるべきだ。」

カインズは手紙を書きながらも、村の救済措置の計画を考えていた。

生活に余裕ができたと言っていただけあって、村には生まれて間も無い子供や、妊娠中の女性が比較的多かった。

幼児や妊婦の扱いや再建までの仮住まい、衣食の確保まで、考えなければならない問題が山積している。

しばらくは動けそうにないとシアンズは思った。

「カイン、何故魔女は国と魔管に後を追わせたかったんだろうな。」

「派手に飛び回ることが何かのメッセージかもしれない。ラクタナのギルドマスターに聞けば分かるんじゃないか。」

「そうだな。あの人に会うのは子供の時以来だが、性格が変わっていなければ、会わないと教えられない情報を持っている可能性がある。」

幼少期、剣術を褒められた記憶が蘇った。