救国の魔女と滅国の皇子~プログラマーは魔法も作れる!?~

一条弥生

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激動

63.最悪の事態

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日が傾いた頃、全身白の法衣の様な服装の男達が二十人あまりで馬に乗ってミクリア村を訪れた。

ただならぬ雰囲気に、村の男達は女子供を村の奥へ下がらせた。

「村長はいるか。」

馬に乗ったまま、先頭の男が村長を呼び出した。

「我らは魔管の職員だ。最近この国に危険な魔法を広めた大罪人がこの村に滞在していたと聞いた。ツバキ・コノエと名乗っている。」

「危険な魔法?」

「これだ。」

男は懐からツバキが開発した魔術カードを取り出し、村長に突き付けた。

「魔管以外が魔法を作る事は禁じられている!魔法を教えることも、魔法を売ることも、魔管が認めた機関のみ許可されていること!この行為は極刑に値する!」

「極刑!?」

騒ぎを聞いて駆け付けたラルが叫んだ。

「知っているのだな。」

男以外の職員が馬を降り、松明を持って村に散った。

「な、何をするんだ!!」

「おい!やめろ!」

抵抗した村人が職員に殴られ、魔法で拘束された。

「大罪の魔女が残した物は全て燃やし処分する!」

「俺達の財産だ!!魔管に何の権限があるっていうんだ!!」

「魔管と国は協定を結んでいる!!魔管の意思は国の意思だ!!貴様ら、魔女を庇い建てするのなら逮捕するぞ!!」

「や、やめてくれ!!」

魔管の行動は野盗と何ら変わらなかった。

全ての家の中を物色し、倉庫や納屋を燃やした。

「お前ら何してんだ!!!」

「サン!!」

駆け付けたサンはその光景に唖然とした。

ツバキが作った物が多く、魔管は遂には家にまで火を着けた。

「なんでこんなこと!!お前らなんなんだよ!!」

止めに入ったサンは職員を突き飛ばした。

「貴様何をする!!」

「やめろサン!!こいつらは魔管だ!!」

「魔管!?じゃあツバキを!?」

サンはツバキとの最後の約束を思い出した。来て欲しくなかった約束を果たす時が遂に来てしまったのだと、サンは理解した。

「貴様、魔女の協力者か!!捕らえろ!!」

「やめてくれ!!サンは何も関係ない!!」

暴れたサンとラルは魔法で捕らえられた。

「父ちゃん!!」

「来るなレック!!!」

職員の一人がサンの首に剣を当てた。

「魔女のことを話せ!!魔女の目的はなんだ!!何処に向かっている!!」

サンは見上げた職員を睨み、奥歯を噛んだ。

「なんだその目は!」

職員は苛立ち、サンを殴った。

「ツバキ・コノエは大罪人だ!危険な魔法を広め、世界を混乱に陥れようとしている!ツバキ・コノエが作った魔法は全て処分する!この魔法は危険なんだ!奴はお前達を殺そうとしているんだよ!!」

その言葉を鵜呑みにする村人は居なかった。

元から魔管に懐疑心を持っていた村人達の視線は冷たかった。職員達はその態度に苛立った。

「言え!!どんな目的でどこに向かっている!本当はどんな容姿なんだ!全て吐け!!」

サンは反撃したい気持ちを堪えて、何度か抵抗してから観念した演技をした。
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