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仲間
61.神獣
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街を後にする前に、私はあのランガルフォックスの親子の様子を見に行くと無事に暮らしていた。
「良かった。これなら大丈夫そうだね。」
「ああ。昼夜問わずのゴミの撤去と土壌の除染作業の甲斐あって、少しだが、もう戻って来ている魔物もいる。食料問題はそう遠くない内に解決するさ。」
私が提案した被害者支援団体も上手くいっている。
後ろ髪を引かれることは無くなった。
「さあ、戻って街に」
私達はランガルフォックスがこちらを見ていることに気付いた。
「隠蔽を掛けてるのに気付いた…?」
ランガルフォックスは私達を見詰めた後、長い遠吠えをした。
「逃げた方が良さそうだ。」
「そうだね。クロードの転移で」
私達の周りに吹き飛ばされそうな程の風が吹いて、咄嗟に目を守った腕を下げると、目の前には4メートル程の魔獣が佇んでいた。
銀色の毛で狼の様だったけど、鼻の長さと切れ長な目、ふさふさの尻尾で狐だとわかった。
「テウメソスの狐…!!」
クロードが驚愕を顔に浮かべた。
攻撃する気は無い様だけど、狐は私をじっと見つめていた。
「クロード、逃げた方がいい?」
「テウメソスの狐は神獣だ。逃げたところで襲われたら助からない。」
「神獣…?神様の獣って書く?」
「ああ。伝説上の生き物だとされている。実在したなんて…」
『森の魔物達を救ったのは汝か。』
女性の澄み切った声が頭の中に直接聞こえた。
「喋った…!?」
『汝か。』
「は、はい。でも、ゴミの撤去はギルドの人達がしてくれています。」
『この子に餌をやり、森に引き返させたのは汝か。』
「はい。」
『人間に襲われた魔物達を治癒し、森に帰したのは汝か。』
「はい。」
『毎日の様にこの山に来ては全域に治癒魔法を掛けていたのは汝か。』
「はい。お腹は満たせませんが、回復すれば麓に降りる必要が減ると思って。」
『私からも礼を言う。』
「そんな!私は人間達のしたことの始末を付けただけです。」
『数百年前に受けた傷が治らず、私と息子は長らくこの森で息を潜めて殆どの時間眠っていた。それが汝の治癒のおかげで、私と息子はこうして動けるようになった。』
狐の後ろから、2メートル以上ある、同じ特徴の狐が現れた。
『汝に頼みがある。』
「た、頼み!?私に!?」
『この子を、旅に同行させて欲しい。』
「えっ!?」
「神獣が人間に子供を預けるって言うのか!?」
『本来私達は旅をする。汝と旅をした方が、この子は成長するだろう。』
「貴女も一緒に?」
『私はまだ行けない。この森が心配だ。親離れの時期でもある。案ずるな。汝が望めば私も駆け付けよう。』
「クロード、どうしよう。」
「ツバキが決めることだ。」
『頼む。』
迷ったけど、私はわかりましたと答えた。
「でも、私は戦いに身を投じます。もしかしたら戦争に参加したり、人を殺めるかもしれませんよ。」
『そんなことは心配に及ばぬ。頼んだぞ。』
「はい。責任を持って預からせていただきます。」
狐は頷いて、強い風を吹かせて去って行った。
「ツバキ、まずは名前を付けるんだ。それを神獣が受け入れれば主従関係が結ばれる。」
「わかった。じゃあ…玉藻。」
「タマモ…?」
「私の国の伝説の魔物の名前から取ったの。どう?」
子どもの狐は頷いた。刹那、子供の狐と魔力が繋がったような感覚がした。
「よろしくね!玉藻!」
玉藻は深く頷いた。
「良かった。これなら大丈夫そうだね。」
「ああ。昼夜問わずのゴミの撤去と土壌の除染作業の甲斐あって、少しだが、もう戻って来ている魔物もいる。食料問題はそう遠くない内に解決するさ。」
私が提案した被害者支援団体も上手くいっている。
後ろ髪を引かれることは無くなった。
「さあ、戻って街に」
私達はランガルフォックスがこちらを見ていることに気付いた。
「隠蔽を掛けてるのに気付いた…?」
ランガルフォックスは私達を見詰めた後、長い遠吠えをした。
「逃げた方が良さそうだ。」
「そうだね。クロードの転移で」
私達の周りに吹き飛ばされそうな程の風が吹いて、咄嗟に目を守った腕を下げると、目の前には4メートル程の魔獣が佇んでいた。
銀色の毛で狼の様だったけど、鼻の長さと切れ長な目、ふさふさの尻尾で狐だとわかった。
「テウメソスの狐…!!」
クロードが驚愕を顔に浮かべた。
攻撃する気は無い様だけど、狐は私をじっと見つめていた。
「クロード、逃げた方がいい?」
「テウメソスの狐は神獣だ。逃げたところで襲われたら助からない。」
「神獣…?神様の獣って書く?」
「ああ。伝説上の生き物だとされている。実在したなんて…」
『森の魔物達を救ったのは汝か。』
女性の澄み切った声が頭の中に直接聞こえた。
「喋った…!?」
『汝か。』
「は、はい。でも、ゴミの撤去はギルドの人達がしてくれています。」
『この子に餌をやり、森に引き返させたのは汝か。』
「はい。」
『人間に襲われた魔物達を治癒し、森に帰したのは汝か。』
「はい。」
『毎日の様にこの山に来ては全域に治癒魔法を掛けていたのは汝か。』
「はい。お腹は満たせませんが、回復すれば麓に降りる必要が減ると思って。」
『私からも礼を言う。』
「そんな!私は人間達のしたことの始末を付けただけです。」
『数百年前に受けた傷が治らず、私と息子は長らくこの森で息を潜めて殆どの時間眠っていた。それが汝の治癒のおかげで、私と息子はこうして動けるようになった。』
狐の後ろから、2メートル以上ある、同じ特徴の狐が現れた。
『汝に頼みがある。』
「た、頼み!?私に!?」
『この子を、旅に同行させて欲しい。』
「えっ!?」
「神獣が人間に子供を預けるって言うのか!?」
『本来私達は旅をする。汝と旅をした方が、この子は成長するだろう。』
「貴女も一緒に?」
『私はまだ行けない。この森が心配だ。親離れの時期でもある。案ずるな。汝が望めば私も駆け付けよう。』
「クロード、どうしよう。」
「ツバキが決めることだ。」
『頼む。』
迷ったけど、私はわかりましたと答えた。
「でも、私は戦いに身を投じます。もしかしたら戦争に参加したり、人を殺めるかもしれませんよ。」
『そんなことは心配に及ばぬ。頼んだぞ。』
「はい。責任を持って預からせていただきます。」
狐は頷いて、強い風を吹かせて去って行った。
「ツバキ、まずは名前を付けるんだ。それを神獣が受け入れれば主従関係が結ばれる。」
「わかった。じゃあ…玉藻。」
「タマモ…?」
「私の国の伝説の魔物の名前から取ったの。どう?」
子どもの狐は頷いた。刹那、子供の狐と魔力が繋がったような感覚がした。
「よろしくね!玉藻!」
玉藻は深く頷いた。
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