救国の魔女と滅国の皇子~プログラマーは魔法も作れる!?~

一条弥生

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仲間

53.一喝

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嬉しかった。けど、同時に技術者として無力さを感じた。

向こうの世界の現代医療では、切断された部分を接合することはとても高度な医療で、何ヶ月もリハビリを重ねて少し動くようなレベルだ。それも場所による。

足の切断でここまで急激な回復はありえない。

医師と研究者、技術者が必死に研究と技術を積み重ねてやっとできる治療が、この世界は魔法であっという間。それ以上のことさえできる。

この世界にはそもそも技術者の必要性が少ないんだ。

「聖女様...?」

「あっ...回復をお祈りしております。」

靴を履かせて一礼した。

「聖女様...」

心肺蘇生をした女性の父親は、私の前に跪いて手を組んだ。

「や、やめてください!」

「娘を生き返らせてくださいました。これが聖なる力と言わずしてなんと言いましょうか!」
 
「私も故郷で習った治療法です。魔法ではありません。ましてや、聖なる力なんて恐れ多いです。ですから、そんなことはしないでください。そんなことより、娘さんのご様態はいかがですか?」

「先程目を覚ましました。すぐに眠ってしまいましたが、医師はしばらく安静にしていれば大丈夫だと。」

「そうですか。後遺症が出る可能性がありますから、経過観察は怠らないようにしてくださいね。できれば毎日の体調や様子を書き留めてください。何かあった時の参考になります。」

「わかりました。」

「では皆さんお帰りください。それと、私を崇めないでください。私は人と違うことができただけのただの人間です。聖女だなんて広めないでくださいね!それじゃあ!」

半ば無理やり追い返して、私は息を吐いた。

「もう聖女が現れたって広まっているけどね。」

「えぇ...」

「じゃあ、執務室に戻ろうか。」

「あっ!もう一つ大事なことが!」

「コノエ様ー!主任はここです!」

そう、私はまだあのクソ研究者を叱っていない。

「少し時間を頂けますか?」

「いいよ。面白そうだから見せて。」

「面白くはないですけど、どうぞ。」

部下達に連れてこられたあの主任をホールの中心に立たせたら土下座された。

「すすすすみませんでした!」

「何が?」

「えっ...!?」

「先に謝ったらいいと思ってます?私、そういう謝り方大嫌いなんです。ここまでしたので許せってただのパフォーマンスですよね。土下座してどうなるんです?何か変わります?あなたのせいで無駄にした時間が戻りますか?」

ホールが凍りついたのはわかったけど止められなかった。

「考えが浅はかです。私はあの時、貴方を捕まえるために時間を割きました。その間、冒険者と魔物は戦っていた。これがどういうことかわかりますか?」

「ど、どういう事って...」

「貴方を捕まえるために割いた時間の間に、人間を噛んでしまった魔物がいたんです。」

「えっ...」

「人の味を知った魔物は殺さなければいけない。私が貴方に時間を割かなければ、その魔物は殺されずに済んだんです。」

「そ、そんな...」

「本当は貴方みたいな周りの見えてない研究バカなんてほうっておきますが、貴方のせいで大惨事が起こる可能性があったので仕方なく捕まえたんです。」

あわあわしている態度に腹が立った。

「想像してみて。それが人だったらって。このクソ研究者。ふざけないで。こともあろうに役職に就いてる者がそんな向こう見ずなことするなんて。普通逆でしょ?なんで部下に止められてるの。貴方は部下の命を預かる立場でしょ。」

「すみません...」

「謝罪は私にじゃない!!今まで散々迷惑を掛けた人達にでしょ!!特に貴方を命懸けで止めに行った部下!!」

「は、はい!!!」
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