救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

仲間

４５．奇跡を起こす治癒師

私は床に手を付いて、患者達の寝かされた場所を長方形で囲むイメージを描いた。

「地に宿る力、手を差し伸べろよ。」

床から伸びた蔓つるはイメージ通りの形を描いた。

そこに領域を定義する結界を張った。

これで結界が維持しやすくなって、魔術も掛けやすくなる。地道に研究して得た知見だ。

「治癒魔法を掛けます！！！患者から手を離して！！！」

魔術書の治癒魔法を書き直した魔術を使おう。どこまで治るかわからないけど、少しは治るはず。

「慈愛の女神よ、我が領域の者に慈悲の涙を。治癒の力を授け給え。」

青白い光が私を中心に広がって、結界の隅々まで届いて消えた。

「傷が...！！」

「嘘だろ...」

片足を失っている患者は、足の傷以外が治っていた。

「先生！！患者の傷が！！傷が治りました！！傷口が塞がってます！！」

「あ、足！！！足持って来ました！！！」

安堵はまだまだ早い。他にも患者は居るし、外では戦いが起きてるんだから。

私は足をくっ付けて置いた。

「待て！！失敗したら」

「黙ってて！」

体をくっつける医療は時間勝負だ。喧嘩をしてる時間はない。

初めて人に使う長文の魔術、動物では成功しているけど、人でどうなるかわからない。

責任の重さに生唾を飲んで、患者の足と冷たい左足の前に手を付いた。

呪文を唱え始めると、無数の白い光が糸になって、足を繋いでいった。

左足は引き寄せられて、呪文を唱え終わった直後、白い光の糸は消えた。

「念の為もう一度患部を治癒します。」

治癒を掛けた後、私はくっ付けた左足を抓った。

患者の顔が歪んだ。

「良かった...神経が繋がってる...」

私は鞄を開けて、羊皮紙の束を置いた。

「ここに治癒魔術の魔術カードを並べます！！！回数制限は各１００回です！！！効果の高さと効能は呪文の下に書いてあるので参考にしてください！！！左側が状態異常、右側が外傷の治癒魔術です！！！無料です！！！」

近くのテーブルに、いざと言う時のために書き溜めた魔術カードを並べた。

「治癒師の姉ちゃん！！こっちに来てくれ！！」

私を呼んだ男性は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔をしていた。