救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

仲間

４１．麗しき魔獣

「私、先に行って追い返して来ます。」

「は！？先に行くって馬車よりか！？」

「はい。」

私は馬車を降りて、獣の居る方向へ向かった。

おそらく魔物だろうけど、足音からして大型の魔物が、なんでこんな麓まで下りて来てるんだろう。

サウルタイガーだってかなり奥地に生息してて、私ほどの餌があったから人里まで下りてきたのに。

かなりお腹が空いてるのかもしれない。

「ご飯あげたら帰ってくれるかも。」

私は近くをサーチして、鹿の様な魔物のヤッカー３体を補足した。

軽くジャンプをして森の上空に出ると、ヤッカーの居る方向に手を翳した。

「引き寄せろ。」

手の前に現れた魔法陣から、先が尖った蔦が伸びて、３体に向かって一直線に飛んで行った。

私が着地して程なくして、蔦が捕まえたヤッカーが足元に置かれた。

「束にしたまま渡せばいいか。」

ヤッカーを気絶させて背負って、さっきの獣の元に向かった。

向かってみると、獣はやっぱり魔獣だった。

ブルーの毛で、瞳もとても綺麗な藍色で、大きな尻尾を持つ、気品のある狐。身長は私よりも高かった。恐らく２ｍくらいだ。

魔獣は私を襲うでもなく、その場に止まって私を見据えた。

「お腹空いて...」

私は、魔獣のお腹が垂れている事に気づいて、性別を確認した。

「まさか...子供を産んだばかりなの...？」

討伐しなくて良かった。

子供を守りたい筈なのに、ここまで下りて来なきゃいけなかったなんて、森で何か起こっているのかな。

「これ、食べてください。」

私はヤッカーを魔獣の足元に投げた。

「これ以上下りたら討伐されてしまいます。だから、それをあげるので戻ってください。」

言葉が通じるはずはないけど、魔獣はヤッカーを咥えて帰って行った。

「良かった...」

街に着いてセクハラ失礼親父と別れると、私はその足でギルドに向かった。