救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

茨の道の第１歩

３２．プログラマー、冒険者になる

受ける依頼が決められず、私はギルドの依頼掲示板を眺めていた。

「冒険者様。」

「えっ、あ、はい。私ですか？」

「はい。あちらのカウンターで依頼の紹介をしております。よければご利用ください。」

「でも、あれだけ並んでるので...」

何回かギルドに来ているけど、いつ来ても紹介カウンターは長蛇の列ができていた。

「では、今回は私が紹介しましょう。」

「ありがとうございます。初めてなので、危険が少なくて同じ地域の依頼をまとめて３つお願いします。できれば、みんながやりたがらなくてキツい仕事がいいです。」

「あるにはありますが、女性には不向きですよ。」

「大丈夫です。私、結構力持ちだし、魔法が使えますから。」

「依頼を諦める場合はペナルティで罰金がありますから気を付けてくださいね。」

「はい。」

受付嬢の女性は、少し背伸びをしながら依頼が書かれた羊皮紙を取った。

「ありがとうございます。」

「何で面倒な依頼を選ぶんですか？」

「そういうところほど、情報が得られるからです。」

私は依頼実行の手続きをして早速依頼者の元に向かった。

それから２ヶ月、私は誰もやりたがらない依頼を中心に受け続けた。

虫の魔物相手の依頼はキツかったけど、サーチ魔法と瞬間凍結の魔法を磨く良い練習にはなった。二度とやりたくないけど。

「さて...忘れ物は無いよね。」

私は入念に荷物のチェックをして、仕事用のカバンを肩に掛けた。

私の冒険者ランクはＦからＥに上がって、このまま地道に依頼をこなせば、街を出る前にＤになるなもしれない。

けど、それじゃ足りなかった。

前の街でのランクの一つ下のランクから始めなければならないという規定がギルドにはあった。

Ｄランクでやっと低レベルの中型魔物の依頼が受けられる。だから最低でも、Ｃランクになっておきたい。

旅の道中を考えても合理的な判断だ。

「よし、出発しよう。」

私は街を出ると、あの森に向かった。

毎日のトレーニングで身体能力が上がった私は、すぐに森に着いた。

ギルドのランクを上げる方法は依頼をこなす以外にもう１つある。

それは、自分より高ランクの魔物を倒すことだ。

だから、街を出る時には倒しておこうと思っていた魔物を狩ることにした。私の因縁の相手だ。

「待ってろ、サウルタイガー。」