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プログラマー、魔法技術者に転職する
10.考察
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「はー!すっきりしたー!」
湯浴みだったものの、一週間振りに体を洗うことができた。
中世ヨーロッパのお風呂事情は酷いものだと思ってたけど、この世界は魔法でお湯が温められるし、ある程度石鹸が量産されていて、お風呂は習慣化されていた。
この量産化も魔法を使っているらしい。
機械の仕事を魔法が担っているのかな。一度見てみたいな。
タオルでよく髪を拭いて、私は干していたスーツを取る。
魔法で乾かしてもらったから少し暖かいスーツに袖を通した。
死んだ時は会議だから上下スーツだったけど、普段はずっとパジャマを着ていた。パジャマの時じゃなくて本当に良かった。
スーツの綻びは昨日メイルさんが繕ってくれたから問題なく着れた。本当に親切でありがたい。
着替えて外に出ると、メイルさんに声を掛けられた。
「本当にその服で良いの?」
「はい。この方が動きやすいので。」
メイルさんはお古の服をくれたけど、これからやることを考えると着るのは忍びなかった。
「メイルさん、地面に文字を書きたいんですけど、使わせてもらえるところってありますか?」
「そこの道を右にしばらく歩いたら砂地があるよ。何をするんだい?」
「ちょっと考え事を。行ってきます。」
「いってらっしゃい。すぐ暗くなるから、早めに帰っておいで。」
「はい。」
道すがら丁度良さそうな棒を拾って砂場に着くと、砂に、加護と書いた。
まずはどんな加護をもらっているかの考察だ。
サウルタイガーに追いかけられた時のことを思い出して気付いたことがある。
「テレワークで部屋に篭もりっぱなしだったし、運動神経だって平均だったのに、あんなに逃げられたなんておかしい。」
あの時は必死で気付かなかったけど、木々を避けながらなのに、世界最速記録以上の速度で走ってたと思う。
「走ってみるか...」
道を辿った50mくらい先を目標にする。
「よーい...ドン!」
速すぎて止まることができず、止まって振り返ると、数秒前居た場所は想定の倍遠かった。
「マジか...数秒で...」
駆け足くらいの力にして良かった。本気で走ってたら遥か遠くに着くかどこかにぶつかっているところだ。
今度はもっと加減をして戻った。
コントロールも体力も常人じゃ到底追いつかないレベルに上がっている。
慣れればサウルタイガーに追い掛けられた時以上の速度であの森を駆け抜けられるはずだ。
怖いけど、次はジャンプをしてみる。
トン、と凄く軽くしたはずのジャンプは、2階の住人とこんにちはができるほどの高さに至った。
「わお...」
腹筋に腕立て伏せ、以前はできなかった逆立ち、柔軟、結果は言わずもがなだった。
パンチや蹴りもしてみたけど、体が自然と動いた。
動きは無駄が少なくて、試しに蹴った大きな石は、私が無痛だったのに対して、ちょっと動いていた。
私は砂に書いた加護の文字の下に、身体能力強化と書いた。
やりすぎと思ったけど、これくらいなければ、この世界では生きていけないってことだ。
私、きっと魔物とも人間とも戦うんだ。
おそらく人を手に掛ける瞬間が来るんだろう。
恐ろしくて生唾を飲み込んだ。
きっと躊躇したら死ぬ。それは頭に常に置いておかないといけない。
深い深いため息を吐く。
イザナミ様、あの男性神を定期的にボコボコにしてください。お願いします。
湯浴みだったものの、一週間振りに体を洗うことができた。
中世ヨーロッパのお風呂事情は酷いものだと思ってたけど、この世界は魔法でお湯が温められるし、ある程度石鹸が量産されていて、お風呂は習慣化されていた。
この量産化も魔法を使っているらしい。
機械の仕事を魔法が担っているのかな。一度見てみたいな。
タオルでよく髪を拭いて、私は干していたスーツを取る。
魔法で乾かしてもらったから少し暖かいスーツに袖を通した。
死んだ時は会議だから上下スーツだったけど、普段はずっとパジャマを着ていた。パジャマの時じゃなくて本当に良かった。
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着替えて外に出ると、メイルさんに声を掛けられた。
「本当にその服で良いの?」
「はい。この方が動きやすいので。」
メイルさんはお古の服をくれたけど、これからやることを考えると着るのは忍びなかった。
「メイルさん、地面に文字を書きたいんですけど、使わせてもらえるところってありますか?」
「そこの道を右にしばらく歩いたら砂地があるよ。何をするんだい?」
「ちょっと考え事を。行ってきます。」
「いってらっしゃい。すぐ暗くなるから、早めに帰っておいで。」
「はい。」
道すがら丁度良さそうな棒を拾って砂場に着くと、砂に、加護と書いた。
まずはどんな加護をもらっているかの考察だ。
サウルタイガーに追いかけられた時のことを思い出して気付いたことがある。
「テレワークで部屋に篭もりっぱなしだったし、運動神経だって平均だったのに、あんなに逃げられたなんておかしい。」
あの時は必死で気付かなかったけど、木々を避けながらなのに、世界最速記録以上の速度で走ってたと思う。
「走ってみるか...」
道を辿った50mくらい先を目標にする。
「よーい...ドン!」
速すぎて止まることができず、止まって振り返ると、数秒前居た場所は想定の倍遠かった。
「マジか...数秒で...」
駆け足くらいの力にして良かった。本気で走ってたら遥か遠くに着くかどこかにぶつかっているところだ。
今度はもっと加減をして戻った。
コントロールも体力も常人じゃ到底追いつかないレベルに上がっている。
慣れればサウルタイガーに追い掛けられた時以上の速度であの森を駆け抜けられるはずだ。
怖いけど、次はジャンプをしてみる。
トン、と凄く軽くしたはずのジャンプは、2階の住人とこんにちはができるほどの高さに至った。
「わお...」
腹筋に腕立て伏せ、以前はできなかった逆立ち、柔軟、結果は言わずもがなだった。
パンチや蹴りもしてみたけど、体が自然と動いた。
動きは無駄が少なくて、試しに蹴った大きな石は、私が無痛だったのに対して、ちょっと動いていた。
私は砂に書いた加護の文字の下に、身体能力強化と書いた。
やりすぎと思ったけど、これくらいなければ、この世界では生きていけないってことだ。
私、きっと魔物とも人間とも戦うんだ。
おそらく人を手に掛ける瞬間が来るんだろう。
恐ろしくて生唾を飲み込んだ。
きっと躊躇したら死ぬ。それは頭に常に置いておかないといけない。
深い深いため息を吐く。
イザナミ様、あの男性神を定期的にボコボコにしてください。お願いします。
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