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プログラマー、魔法技術者に転職する

4.遭難

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「とは言うものの、手掛かりが無いなぁ...」

ポケットを確認してみたけど、何も持っていなかった。当然だ。家の中で倒れたのだから。

わかっていながら確認するのは虚しかった。

「あっ、アイテムボックスは!?」

これも一通りワードを試したけど無駄だった。

「闇雲に歩くしか無いのかな...」

何が潜んでいるかわからないし、地球の植物と同じに見えても、毒があるかもしれない。

魔法があるなら魔物もいる。この森は地球の森よりずっと危険なはずだ。

途方に暮れる私の耳に微かに届いた音に、反射的に振り返った。

今の音は風で木々が揺れた音じゃなかった。

また同じ音がした。さっきより少し近くで。

何かがこっちに向かっている。それも小さいモノじゃない。

「逃げなきゃ...!」

悠長なことは言ってられない。

私は覚悟を決めて立ち上がり、木々の隙間を縫って走った。

足の感覚が無くなるまで走っても、私を追いかける足音は近付いて来た。

木々をなぎ倒す音、猛獣の唸り声も聞こてくる。

イザナミ様、大丈夫って言ったじゃないですか。

全然大丈夫じゃないじゃないですか。私、食われかけてます。

足を止めたら死ぬ。私はどれだけ傷付いても走った。

ようやく光が見えたのは、もう足元が覚束なくなって来た時だった。

焦った私は、木の根っこにつまずいて転んでしまった。

あと少しなのに。

仰向けになって、光に手を伸ばす私の前に、地球ではありえないサイズの大きな虎の様な生き物が現れた。

獲物が弱るのを待っていたんだ。

虎が開けた口からよだれしたたった。

牙が体に刺さりかけた瞬間、私は何もしていないのに虎が弾き飛ばされた。

私は何もしていない。加護のおかげだろうか。

そんなこともうどうでもいいや。

薄れゆく意識の中、声が聞こえた。

『間に合って良かった。』

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