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第四章 そして花火が打ち上がる
第二十六話 過ちに気付いた時
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朝陽が消えてから三日が経った。その間、俺はずっと部屋に閉じこもっていた。
何もする気が起きず、畳の上で死んだように横たわっているばかり。目を閉じると朝陽が消えた時のことを思い出していた。何度も、何度も、何度も。
俺の軽はずみな言動のせいで、一人の人間が消えた。それは取り返しのつかないことだ。
こんな事態を招くことは、少し考えれば分かったはずだ。朝陽からも過去を変えるような行動はするなと助言されていたのに。
壁にかけられたカレンダーに視線を向ける。この時代に飛ばされた日から、ちょうど十日経過していた。
本当なら、今日もとの時代に帰るはずだった。だけど朝陽がいなくなったいま、もとの時代に帰る手立てを失った。
俺はもう、この時代で生きていくしかないのかもしれない。高校二年の夏から、もう一度人生をやり直す。それはとてつもなく面倒くさいことに思えた。
だけど俺がこの時代に留まれば、日和が死ぬ未来は回避できる。もしかしたら、これで良かったのかもしれない。
そんな考えが浮かんでしまった自分に、酷く失望した。やっぱり俺は、最低な父親だ。
ぼんやりと宙を仰いでいると、玄関のチャイムが鳴った。母さんが誰かと話している。遠くで聞こえた声は、足音と共に近付いてきた。
「圭ちゃん、大丈夫?」
襖の向こうから日和の声が聞こえた。心配して来てくれたのかもしれない。
「大丈夫だ」
畳に寝ころんだまま答えた。その声は、自分でも驚くほどに弱弱しく聞こえた。少し間が空いた後、日和は遠慮がちに尋ねる。
「入っていいかな?」
返答に詰まる。ここで拒むことは容易い。日和は俺の意思を無視して、勝手に押し入ってくるようなタイプではない。会いたくないといえば、素直に帰ってくれるだろう。
だけど俺は拒めずにいた。誰かに話を聞いてもらいたかったのかもしれない。
日和には、未来から来た経緯は話せない。もちろん朝陽が実の娘であることも。詳しい事情は何一つ話せないけど、朝陽が居なくなった事実を自分の中だけに留めておくことはできなかった。
重い身体を起こして、襖に手をかける。ゆっくりと横に引くと、俯いていた日和が顔を上げた。
「良かった、出てきてくれて」
「とりあえず、入れよ」
そう声をかけると、日和は遠慮がちに部屋に入った。
畳の上で正座する。俺も日和と向かい合うように腰を下ろした。
沈黙が走る。何から話せばいいのか分からなかった。黙り込む俺を見かねて、日和から先に口を開いた。
「新人賞、ダメだった?」
そういえば新人賞の結果が出るのはこの時期だった。結果は分かりきっているから、わざわざ確認することはなかったけど。
「ああ、一次選考であっさり落選したよ」
「そっか……」
日和はそっと目を伏せた。きっと日和は、俺が新人賞に落選したことで落ち込んでいると思い込んでいるのだろう。確かに八年前は落ち込んでいたけれど、いまとなってはどうでも良かった。
「落選したこと自体は、そこまでへこんでいない。一回で上手くいくなんて、思っていなかったから」
強がりに聞こえるかもしれないが、本心だった。世の中そんなに甘くないことは、この八年で身に沁みて分かっていた。
「圭ちゃんは強いんだね」
強いのではない。ただ現実を知っただけだ。
「じゃあ、落ち込んでいるのは、朝陽ちゃんのこと?」
真っすぐな問いかけに肝が冷えた。やっぱり日和は鋭い。隠しても仕方がないことだから、正直に伝えた。
「朝陽がいなくなった」
言葉にすると、抗いようのない現実になった気がした。罪悪感で押し潰されそうになる。
「いなくなったっていうのは、おうちに帰ったってこと?」
いっそのこと、日和に全部打ち明けてしまいたかった。全部打ち明けた上で、慰めてほしかった。だけど俺の中に僅かに残っていた理性が、それを許さなかった。
「そんなところだ」
「そっか。ちょっと寂しいけど、帰る気になって良かったね。朝陽ちゃん、家出中だったんでしょ?」
そういえば、朝陽は家出中という設定だった。家出中の女子高生が家に帰ったならば、周囲は一件落着と胸を撫で下ろすだろう。そして時間が経てば、朝陽がうちに居候していたことすら忘れていくはずだ。
何かの拍子に、「そういえばそんな子がいたね」なんて話題に上がることもあるかもしれないが、もう一度会いに行こうなんて発想にはならないだろう。
朝陽の存在なんて、その程度だ。この時代にいる人々は、朝陽が消えたことを本気で悲しんだりはしない。あいつの正体を知っているのは、俺だけなんだから。
誰も悲しまないなら、これで良いのかもしれない。気付けば俺は、自分の過ちを正当化しようとしていた。そのことに気付いた時、自分自身に深く失望した。
「大丈夫?」
俯く俺を気遣って、日和が声をかける。日和の真っすぐな視線が、俺の中の罪悪感をさらに掻き立てた。
「これから変なこと言うけど、聞いてくれる?」
日和の唐突な言葉に戸惑いつつも、俺は頷いた。日和は安心したように話し始める。
「私ね、神社で朝陽ちゃんを見かけたときから、初めて会った気がしなかったんだ。既視感っていうのかな? はっきりと記憶に残っているわけではないんだけど、ずっと昔から知っていたような気がしたんだよね。初対面の人にこんな感情を抱いたのは初めて。だから私は、朝陽ちゃんのことをずっと忘れないと思う」
日和は俯きながら微笑んだ。
驚いた。まさか日和が、朝陽のことを特別視していたなんて。
日和からすれば、朝陽は突然現れたよく分からない女子高生だ。突然現れて、図々しく俺の家に居候して、自由奔放に振舞う、よく分からない存在だった。
それなのに、ずっと忘れないと思えるほどに影響を与えていたなんて。
日和と朝陽は実の親子だ。だけど日和がそのことに気付く瞬間はなかったはずだ。たとえ朝陽が口を滑らせたとしても、十七歳の日和が信じるとは到底思えない。
それでも日和は、朝陽に惹かれていた。理屈では説明できない何かに、引き寄せられていたとでもいうのか?
「またいつか、会えるといいな」
ふわりと穏やかに笑う日和を見て、俺は確信した。自分がやったことが、間違いだったと。
日和の記憶には、朝陽の存在が刻まれている。いつか再会したいと願う特別な存在になっていた。その記憶をなかったことにはできない。俺は日和から、朝陽を奪ってしまったんだ。
「ごめん、日和……」
俺は畳に手をついて頭を下げた。いまさら謝ってもどうにもならないことは分かっている。だけど全身に渦巻く罪悪感から逃れるためには、謝るしか方法がなかった。
「どうして圭ちゃんが謝るの?」
戸惑いを含んだ声が、頭上から飛んでくる。俺は顔を上げることができなかった。
「朝陽には、もう会えない」
残酷な真実を伝える。当然のことながら、日和がその真意に気付くことはないだろう。もしかしたら、俺達が喧嘩別れをしたからもう会えなくなったとでも誤解しているのかもしれない。
日和は俺に気を遣ってか、それ以上追及してくることはなかった。
何もする気が起きず、畳の上で死んだように横たわっているばかり。目を閉じると朝陽が消えた時のことを思い出していた。何度も、何度も、何度も。
俺の軽はずみな言動のせいで、一人の人間が消えた。それは取り返しのつかないことだ。
こんな事態を招くことは、少し考えれば分かったはずだ。朝陽からも過去を変えるような行動はするなと助言されていたのに。
壁にかけられたカレンダーに視線を向ける。この時代に飛ばされた日から、ちょうど十日経過していた。
本当なら、今日もとの時代に帰るはずだった。だけど朝陽がいなくなったいま、もとの時代に帰る手立てを失った。
俺はもう、この時代で生きていくしかないのかもしれない。高校二年の夏から、もう一度人生をやり直す。それはとてつもなく面倒くさいことに思えた。
だけど俺がこの時代に留まれば、日和が死ぬ未来は回避できる。もしかしたら、これで良かったのかもしれない。
そんな考えが浮かんでしまった自分に、酷く失望した。やっぱり俺は、最低な父親だ。
ぼんやりと宙を仰いでいると、玄関のチャイムが鳴った。母さんが誰かと話している。遠くで聞こえた声は、足音と共に近付いてきた。
「圭ちゃん、大丈夫?」
襖の向こうから日和の声が聞こえた。心配して来てくれたのかもしれない。
「大丈夫だ」
畳に寝ころんだまま答えた。その声は、自分でも驚くほどに弱弱しく聞こえた。少し間が空いた後、日和は遠慮がちに尋ねる。
「入っていいかな?」
返答に詰まる。ここで拒むことは容易い。日和は俺の意思を無視して、勝手に押し入ってくるようなタイプではない。会いたくないといえば、素直に帰ってくれるだろう。
だけど俺は拒めずにいた。誰かに話を聞いてもらいたかったのかもしれない。
日和には、未来から来た経緯は話せない。もちろん朝陽が実の娘であることも。詳しい事情は何一つ話せないけど、朝陽が居なくなった事実を自分の中だけに留めておくことはできなかった。
重い身体を起こして、襖に手をかける。ゆっくりと横に引くと、俯いていた日和が顔を上げた。
「良かった、出てきてくれて」
「とりあえず、入れよ」
そう声をかけると、日和は遠慮がちに部屋に入った。
畳の上で正座する。俺も日和と向かい合うように腰を下ろした。
沈黙が走る。何から話せばいいのか分からなかった。黙り込む俺を見かねて、日和から先に口を開いた。
「新人賞、ダメだった?」
そういえば新人賞の結果が出るのはこの時期だった。結果は分かりきっているから、わざわざ確認することはなかったけど。
「ああ、一次選考であっさり落選したよ」
「そっか……」
日和はそっと目を伏せた。きっと日和は、俺が新人賞に落選したことで落ち込んでいると思い込んでいるのだろう。確かに八年前は落ち込んでいたけれど、いまとなってはどうでも良かった。
「落選したこと自体は、そこまでへこんでいない。一回で上手くいくなんて、思っていなかったから」
強がりに聞こえるかもしれないが、本心だった。世の中そんなに甘くないことは、この八年で身に沁みて分かっていた。
「圭ちゃんは強いんだね」
強いのではない。ただ現実を知っただけだ。
「じゃあ、落ち込んでいるのは、朝陽ちゃんのこと?」
真っすぐな問いかけに肝が冷えた。やっぱり日和は鋭い。隠しても仕方がないことだから、正直に伝えた。
「朝陽がいなくなった」
言葉にすると、抗いようのない現実になった気がした。罪悪感で押し潰されそうになる。
「いなくなったっていうのは、おうちに帰ったってこと?」
いっそのこと、日和に全部打ち明けてしまいたかった。全部打ち明けた上で、慰めてほしかった。だけど俺の中に僅かに残っていた理性が、それを許さなかった。
「そんなところだ」
「そっか。ちょっと寂しいけど、帰る気になって良かったね。朝陽ちゃん、家出中だったんでしょ?」
そういえば、朝陽は家出中という設定だった。家出中の女子高生が家に帰ったならば、周囲は一件落着と胸を撫で下ろすだろう。そして時間が経てば、朝陽がうちに居候していたことすら忘れていくはずだ。
何かの拍子に、「そういえばそんな子がいたね」なんて話題に上がることもあるかもしれないが、もう一度会いに行こうなんて発想にはならないだろう。
朝陽の存在なんて、その程度だ。この時代にいる人々は、朝陽が消えたことを本気で悲しんだりはしない。あいつの正体を知っているのは、俺だけなんだから。
誰も悲しまないなら、これで良いのかもしれない。気付けば俺は、自分の過ちを正当化しようとしていた。そのことに気付いた時、自分自身に深く失望した。
「大丈夫?」
俯く俺を気遣って、日和が声をかける。日和の真っすぐな視線が、俺の中の罪悪感をさらに掻き立てた。
「これから変なこと言うけど、聞いてくれる?」
日和の唐突な言葉に戸惑いつつも、俺は頷いた。日和は安心したように話し始める。
「私ね、神社で朝陽ちゃんを見かけたときから、初めて会った気がしなかったんだ。既視感っていうのかな? はっきりと記憶に残っているわけではないんだけど、ずっと昔から知っていたような気がしたんだよね。初対面の人にこんな感情を抱いたのは初めて。だから私は、朝陽ちゃんのことをずっと忘れないと思う」
日和は俯きながら微笑んだ。
驚いた。まさか日和が、朝陽のことを特別視していたなんて。
日和からすれば、朝陽は突然現れたよく分からない女子高生だ。突然現れて、図々しく俺の家に居候して、自由奔放に振舞う、よく分からない存在だった。
それなのに、ずっと忘れないと思えるほどに影響を与えていたなんて。
日和と朝陽は実の親子だ。だけど日和がそのことに気付く瞬間はなかったはずだ。たとえ朝陽が口を滑らせたとしても、十七歳の日和が信じるとは到底思えない。
それでも日和は、朝陽に惹かれていた。理屈では説明できない何かに、引き寄せられていたとでもいうのか?
「またいつか、会えるといいな」
ふわりと穏やかに笑う日和を見て、俺は確信した。自分がやったことが、間違いだったと。
日和の記憶には、朝陽の存在が刻まれている。いつか再会したいと願う特別な存在になっていた。その記憶をなかったことにはできない。俺は日和から、朝陽を奪ってしまったんだ。
「ごめん、日和……」
俺は畳に手をついて頭を下げた。いまさら謝ってもどうにもならないことは分かっている。だけど全身に渦巻く罪悪感から逃れるためには、謝るしか方法がなかった。
「どうして圭ちゃんが謝るの?」
戸惑いを含んだ声が、頭上から飛んでくる。俺は顔を上げることができなかった。
「朝陽には、もう会えない」
残酷な真実を伝える。当然のことながら、日和がその真意に気付くことはないだろう。もしかしたら、俺達が喧嘩別れをしたからもう会えなくなったとでも誤解しているのかもしれない。
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