次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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忍び寄る不穏な影

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宮沢の口から玲奈の名前が出て、つい頬が緩んでしてしまう。
この前、宮沢は玲奈に気持ちを伝えたという話を聞いた。

玲奈から『ねぇ、宮沢から告白されたんだけど、どうしよう』とかなり動揺した感じで連絡を受けた。
玲奈にとっては寝耳に水、宮沢のことは同期としてしか見ていなかったので返事に困っていると言っていた。
でも、宮沢の気持ちはすごく嬉しかったみたいだから、玲奈はゆっくりと考えればいいと思う。

私も立花さんに返事が出来ない日々が続いたので、玲奈の気持ちもよく分かる。
最近の玲奈は、明らかに宮沢のことを意識している様子だからいい方向に進むと思っている。

「おい、ニヤニヤすんなよ」
「は?してませんけど」

宮沢が不機嫌な表情で私を小突いてくる。
地味に痛いからやめてほしい。

「ちょっとちょっと、そこの二人~。なにイチャイチャしてるの?」

不意にかけられた声に宮沢と顔を見合わせる。

「そんなことしてませんよ」
「ホントに?なんかいい雰囲気だったけど」

冷静に宮沢が返事をすると、彼の斜め前に座っていた営業の藤崎直子さんが意味深な笑みを浮かべる。
この人は仕事は出来るみたいだけど、あまりいい噂は聞かない。
社内のゴシップネタというか、誰と誰が付き合っているとかそういう話が大好きだと玲奈が言っていた。
だから、最初の打ち合わせの時から藤崎さんとは距離を置いていたけど、運悪く同じテーブルになってしまった。

藤崎さんはかなりお酒を飲んでいるみたいで、顔も赤く明らかに酔っぱらっていた。

「前々から思ってたんだけど、二人は付き合っているよね?」
「藤崎、酔ってるでしょ?梨音ちゃんたちがビックリしてるじゃない。絡むのやめなよ」
「いいじゃない。こんな機会でしか聞けないんだから。ねぇ、どうなの?」

不躾な質問に顔を歪めた志保さんが間に入ってくれたけど、藤崎さんはお構いなしだ。
酔ってる人の相手はめんどくさい。
どうせ、何を言っても無駄だろうけど。

それにしても、同期で話しているだけで付き合っていると勘違いされるなんてあり得ない。
苛立ちを堪えながら口を開いた。

「付き合ってません。宮沢は仲のいい同期の一人です」
「えー、仲のいい同期っていうのは分かるけど、二人の距離がやたら近いんだよね」

私がハッキリと否定したら、彼女は面白くなさそうな顔になっていきなり席を立った。
(えっ?急になに?)
どこに行くんだろうと見ていたら、彼女が向かった先には高柳課長や立花さんがいた。

「高柳課長、宮沢くんと河野さんて本当に付き合ってないんですかぁ?」

思わず私は宮沢と顔を見合わせた。
この人はいったい何がしたいんだろう。

「そんな話は聞いたことがないから付き合ってないと思うよ」

高柳課長は冷静に対応する。

「えー、でもさっき顔を近付けてコソコソ話したり、腕を触ったりしていい雰囲気だったんですよぉ」

チラチラとこちらを見てくる。
ホントに勘弁して欲しい。
お酒の席とはいえ、そんなことを確認するために、わざわざ上司のところに聞きに行くなんて最悪だ。
それと同時に、この話を聞いた立花さんに誤解されないかハラハラしていた。
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