次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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社内恋愛の醍醐味?

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定時になり、友田さんと桐野さんは早々と帰っていった。
あれから私の恋バナを聞かれることはなかったからよかったけど、やっぱり私は自分の話をするのは苦手だなと改めて思った。
これ以上、追求されないことを心の底から願う。

さて、そろそろ玲奈にドタキャンの連絡をしよう。
ふと隣を見ると、宮沢がボーッと一点を見つめていた。
今日は定時に帰るために仕事を終わらせるって言ってたんだけど。

「ねぇ、片付けないの?」
「……」
「宮沢、定時過ぎてるよ。おーい、宮沢!」

私の声が耳に届いていなかった様子の宮沢の腕を軽く叩く。

「あ、もうそんな時間か」
「ちょっと、大丈夫?」

心ここにあらず、といった感じで心配になる。
私も一緒にいた方がいいんじゃないかと思うほど。
だけど、それじゃあ告白するチャンスを逃しそうだから難しいところだ。

でも、宮沢なら決める時は決めてくれると思う。
仕事でもそうだし。

「大丈夫だ。ちょっと考え事をしてただけだから。まぁ、当たって砕けろで頑張ってくるよ」
「うん、その意気だよ!じゃあ、私は玲奈に断りのメッセージを送っておくね」
「河野、万が一駄目だったらフォロー頼んだぞ」

急に弱気なことを言う宮沢に苦笑いしてしまう。
でも、告白は私も経験があるけど、勇気がいるし弱気にもなる気持ちも分かる。

「分かった。あとこのとは気にせず、宮沢はしっかり自分の気持ちを伝えなよ」

私は宮沢の検討を祈りながらスマホを取り出し、玲奈にメッセージを送る。

【お疲れさま。急なんだけど、残業することになったから飲み会に行けなくなった。宮沢には言ってるけど、ごめんね】

謝罪のスタンプも一緒に送るとすぐに返信が来た。

【お疲れ~。了解。じゃあ、宮沢と飲んでくるよ。仕事、頑張って!】

変なキャラの頑張れ!というスタンプが送られてきた。
私のドタキャンを怪しむ様子はなくてよかった。

さて、お膳立てはした。
あとは宮沢が頑張るだけだ。

「お疲れ。じゃあ行ってくるよ」
「お疲れさま。頑張って!」

宮沢は静かに頷き、背を向ける。
私は上手くいきますようにという思いを込めて見送った。

玲奈に残業すると言った手前、あと少し仕事をして帰ろうと思っていたらスマホにメッセージが届いた。
画面を見ると立花さんからだった。

【お疲れさま。もうすぐ会社に戻るので、帰りに梨音ちゃんのところに寄るね】

もうすぐ会社に?
しかも、私の家に寄ってくれるみたいで一気にテンションが上がる。

【お疲れ様です!よかったら晩御飯、うちで食べますか?】

メッセージを送信したら、すぐに返信が来た。

【いいの?だったらお願いしてもいい?】
【いいですよ!何が食べたいですか?】
【和食が食べたいかな】
【了解しました】

こうしちゃいられない!
残業する予定を変更し、私はそそくさと変える準備をして会社をあとにした。

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