次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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社内恋愛の醍醐味?

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金曜日、『フレッシュスター』でぶどうジュースを買って出社した。
皮ごとミックスされているので、栄養素を余すことなく堪能できる。
席に座り、ジュースを飲んで一息つきながら卓上カレンダーに視線を向けた。

立花さんは数日前から泊まりの出張に行っているから、立花さんの分のお弁当も晩ご飯も必要ない。

「寂しいな……」

ポツリ、本音がこぼれ落ちる。

「何が寂しいんだ?」
「へっ?」

宮沢が不思議そうな顔をして聞いてくる。
脳内で言ったつもりだったけど、どうやら思っていたことを口に出していたみたいだ。

「いや、何でもないよ。それより、今日は作戦決行だからね」

自分のことは誤魔化し、親指を立ててサムズアップのポーズをとった。

今日の夜に玲奈と宮沢の三人で飲み行く約束をしている。
事前に宮沢と打ち合わせした通り、私は急に用事が出来て行けなくなったとドタキャンすることになっている。

「あぁ」

宮沢はいつもより表情が固く、緊張しているのが手に取るように分かる。

「大丈夫?飲み過ぎてヘマしないようにしなよ」
「分かってるよ。全く、他人事だと思って」

ブツブツと呟く。
聞き捨てならない言葉に私は速攻で抗議した。

「ちょっと、他人事だなんて思ってないよ。何のために私が協力してると思っているの?二人が上手くいけばいいなと思ってるからだよ!」
「お、おう。ありがと」

私の勢いに驚いたのか、宮沢は引き気味に答える。

「分かってくれたらいいよ」

言いたいことを言って満足した私はパソコンの電源を入れた。

朝礼が終わり、十時から始まる会議資料のコピーを頼まれていた。
原稿をセットし、スタートボタンを押した。
排出トレイから用紙を取り、席に戻る。
会議資料をまとめると高柳課長の元へ向かい、声をかけた。

「課長、資料出来ました。会議室の準備をしましょうか?」
「いや、大丈夫。ありがとう」
「分かりました。失礼します」

軽く頭を下げ、自分の席に戻ると今朝買ったジュースが半分以上残っていたことに気づく。
氷も解けてぬるくなったジュースを全部飲み干す。

届いたメールを確認していたら友田さんが私をじっと見つめていた。

「何?また困ったことがあった?」
「いえ」
「じゃあどうしたの?私の顔になにかついてる?」
「ついているというか、綺麗になったなと思って」
「へ?」

友田さん何を言ってるんだろう。
今のは聞き間違いだろうか?

「最近、梨音先輩が綺麗になったなと思っていたんです。梨音先輩って見た目は可愛い系だと思うんですけど、綺麗になったというか色気が出てるような気がして」

友田さんの言葉に絶句した。
い、色気?

「分かる!私も梨音ちゃんの雰囲気が変わったなと思っていたの」
「恵美先輩もそう思ってたんですね!」

会話に加わってきた桐野さんと友田さんは興奮気味に話す。
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