次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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偽装恋愛、解消します

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「お前さ、よくここを利用しているけど自分の噂を知ってるのか?」
「噂って」
「あの立花翔真に彼女が出来たって噂」
「あぁ、そのことか。知ってるよ。噂じゃなくて事実だし。あ、彼女が作ってくれたハンバーグの方が旨いな」

ハンバーグを食べながら平然と言う。
高柳課長は、あっさりと認めた立花さんをまじまじと見る。

「やっぱり確信犯じゃねぇか!さっきだって想像に任せるとか誤魔化して、普通に彼女の手作り弁当を食べてるって言えばよかっただろ!てか、然り気無く惚気るなよ」
「別に惚気てるつもりはないよ。本当のことだし」
「お前……」

高柳課長は呆れている。
立花さんはどうしてそんなことを言うの?
私は恥ずかしいやら居たたまれない気持ちになり、水の入っているコップに口をつけた。

「ゴホッ」

動揺して水を飲んだからか、むせてしまった。

「おい、河野大丈夫か?」
「だ、大丈夫。むせただけだから」
「ホントかよー。お前、アレだからまた夏風邪ぶり返したんじゃないのか?」

アレだからって濁したけど、バカだからって言いたいんでしょ!
さっき私が宮沢をからかったお返しとばかりに、ニヤニヤしている。

「そんなわけないでしょ」
「いや、その可能性はあるかも知れないよ」
「えっ」

私が反論したら、なぜか立花さんが会話に入ってきてキョトンとしてしまった。

「喉の調子が悪くてむせたんじゃない?」
「いえ、そういうわけでは……」
「確かにこの前、河野さん体調を崩してたよね」

高柳課長も心配そうに言ってくる。
もう元気なんですけど。

「念の為、医務室で診てもらった方がいいから連れて行くわ。高柳、トレーの片付け頼んだぞ。行こう、河野さん」
「まぁ、それは別にいいけどっておい!」

立花さんは私に立つように促し、強引に片付けを高柳課長に押し付け食堂を出る。
というか、立花さん食べるの早いんですけど。
私は訳も分からず立花さんの後を追う。

「あの、大丈夫ですよ。風邪はもう治ってるので」
「分かってる」

健康そのものだから医務室に行く必要がないので声をかけたけど一蹴された。
それならどうして?
エレベーターで一階まで降りると医務室へ向かい、ドアをノックして立花さんが入って行く。
ここまで来て引き返すことも出来ず、私も医務室に足を踏み入れた。

「武さん、お疲れ様。少しの間、この部屋使わせてもらってもいい?」
「翔真か。何だよ、藪から棒に」

立花さんは椅子に座っていた白衣の男性に声をかけた。
医務室にはベッドが三つあったり、薬品棚があったりと学校の保健室みたいだ。
この前、体調を崩した時は医務室には寄らずに早退した。
だから入社して初めて医務室に入ったのでソワソワしてしまう。
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