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偽装恋愛、解消します
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ここ一年、玲奈に彼氏はいないはずだ。
だから今回の合コンには気合いをいれていたのに、あんなことになってしまった。
そういえば、玲奈の前の彼氏の二股が発覚して別れた時に私と宮沢で慰め会をしたことがあった。
酔っ払った玲奈の介抱を宮沢がしていて、愚痴も全て受け止めて『そんな最低なヤツは早く忘れろよ』って言っていたのを思い出す。
何だかんだ言いながらも宮沢は玲奈の面倒を見ていた気がする。
同じように軽口は言うけど、微妙に私と玲奈の扱いが違うなとは思っていた。
いつも私にはイラっとするぐらい適当感満載だった。
ただの同期の扱いと、恋心を秘めた人の扱いが違うのは当たり前か。
玲奈も友達思いの真っ直ぐないい子だ。
宮沢もいいやつだし、何だかんだ玲奈とはお似合いかもしれない。
「そうか……俺もそろそろ覚悟決めないとな」
宮沢はボソリと呟く。
「それってもしかして」
「あぁ。今までは同期としての関係を崩したくなかったから我慢してたけど、何もしないまま他のヤツに奪われるなんて御免だからな」
そう言った宮沢の目は、強い決意の光が宿っている感じがした。
きっと、宮沢なら玲奈のことを大切にしてくれそうだ。
「ねぇ、いつから玲奈のことが好きだったの?」
「バカ河野!デカイ声を出すなよ」
宮沢は周りをキョロキョロと見回す。
バカと言われたけど、今日のところは目をつむっておく。
「出してないよ。宮沢の声の方が大きいでしょ。で、いつから?」
「お前、面白がってるだろ」
「失礼ね。そんなこと……少しはあるけど」
「って、あるのかよ!」
ガクッとズッコケる宮沢を見て笑ってしまう。
そんなやり取りを見ていたであろう男性の声が耳に届いた。
「二人は相変わらず仲がいいな。隣、いい?」
「あっ、どうぞ」
定食がのったトレーを手にした高柳課長が宮沢の隣に座った。
「宮沢と河野さんのやり取りを見ていると、コントみたいで面白いな。なぁ、翔真」
高柳課長はフッと笑い、同意を求めるように私の横に視線を移した。
翔真?
「そうだな。ここ、邪魔するね」
私の隣の椅子を引いて座るのは、まさかの立花さんだった。
土曜日、立花さんの前から逃げるように帰ってしまったので気まずくて隣を見ることが出来ない。
メッセージもそっけなく返信してしまった自覚はあるし。
そんな私をよそに、高柳課長と立花さんは二人で話し始めた。
「翔真と昼飯を食べるの久々だよな」
「そうだな」
「ここではもっぱら手作り弁当食べてるんだろ。あれ、誰が作ってるんだ?」
「さぁ、誰だろうな。高柳の想像に任せるよ」
「何だよ、それ」
私は二人が話している間、必死に箸を動かしていた。
内容が内容なだけに居心地が悪く、早くこの場から離れたかった。
最後の一口を食べ、やっと解放されると思っていたら高柳課長の言葉に動きを止めた。
だから今回の合コンには気合いをいれていたのに、あんなことになってしまった。
そういえば、玲奈の前の彼氏の二股が発覚して別れた時に私と宮沢で慰め会をしたことがあった。
酔っ払った玲奈の介抱を宮沢がしていて、愚痴も全て受け止めて『そんな最低なヤツは早く忘れろよ』って言っていたのを思い出す。
何だかんだ言いながらも宮沢は玲奈の面倒を見ていた気がする。
同じように軽口は言うけど、微妙に私と玲奈の扱いが違うなとは思っていた。
いつも私にはイラっとするぐらい適当感満載だった。
ただの同期の扱いと、恋心を秘めた人の扱いが違うのは当たり前か。
玲奈も友達思いの真っ直ぐないい子だ。
宮沢もいいやつだし、何だかんだ玲奈とはお似合いかもしれない。
「そうか……俺もそろそろ覚悟決めないとな」
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「それってもしかして」
「あぁ。今までは同期としての関係を崩したくなかったから我慢してたけど、何もしないまま他のヤツに奪われるなんて御免だからな」
そう言った宮沢の目は、強い決意の光が宿っている感じがした。
きっと、宮沢なら玲奈のことを大切にしてくれそうだ。
「ねぇ、いつから玲奈のことが好きだったの?」
「バカ河野!デカイ声を出すなよ」
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バカと言われたけど、今日のところは目をつむっておく。
「出してないよ。宮沢の声の方が大きいでしょ。で、いつから?」
「お前、面白がってるだろ」
「失礼ね。そんなこと……少しはあるけど」
「って、あるのかよ!」
ガクッとズッコケる宮沢を見て笑ってしまう。
そんなやり取りを見ていたであろう男性の声が耳に届いた。
「二人は相変わらず仲がいいな。隣、いい?」
「あっ、どうぞ」
定食がのったトレーを手にした高柳課長が宮沢の隣に座った。
「宮沢と河野さんのやり取りを見ていると、コントみたいで面白いな。なぁ、翔真」
高柳課長はフッと笑い、同意を求めるように私の横に視線を移した。
翔真?
「そうだな。ここ、邪魔するね」
私の隣の椅子を引いて座るのは、まさかの立花さんだった。
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メッセージもそっけなく返信してしまった自覚はあるし。
そんな私をよそに、高柳課長と立花さんは二人で話し始めた。
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「そうだな」
「ここではもっぱら手作り弁当食べてるんだろ。あれ、誰が作ってるんだ?」
「さぁ、誰だろうな。高柳の想像に任せるよ」
「何だよ、それ」
私は二人が話している間、必死に箸を動かしていた。
内容が内容なだけに居心地が悪く、早くこの場から離れたかった。
最後の一口を食べ、やっと解放されると思っていたら高柳課長の言葉に動きを止めた。
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