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偽装恋愛、解消します
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週が開けた月曜日。
玲奈と昼ご飯を一緒に食べる約束をしていた。
今日はお弁当はお休みの日だ。
社員食堂に先に着き、私は中華定食を注文して席に座っていた。
すぐに玲奈も唐揚げ定食がのったトレーを手に席までやって来て開口一番、謝罪してきた。
「梨音、土曜はホントにごめんね」
「もういいよ。終わったことだし」
「よくないよ!能勢さんは酷すぎる」
玲奈は憤慨した様子で唐揚げを頬張る。
居酒屋で私や立花さんとやり取りした後、能勢さんは玲奈たちの元に戻って私の悪口を散々言って先に帰ったと教えてくれた。
多分、玲奈たちに言っただけじゃ気が収まらなくて、わざわざ私たちの後を追いかけて暴言を吐いたんだろう。
どんなことを言ったのか玲奈は言葉を濁したけど、尻軽とか私に向けて放ったことと同じような内容を好き勝手に言っている姿が目に浮かんだ。
「私が無理矢理、梨音を誘ってしまったから……」
玲奈に誘われて合コンに行き、結果能勢さんに絡まれたのは事実。
だけど、暴言を吐いたのは能勢さんで玲奈が悪い訳じゃないし、責任を感じることはない。
「玲奈が気にすることじゃないよ」
「でも……」
玲奈は優しい子だから、いつまでも引きずりそうだ。
「だから大丈夫だって言ってるでしょ。私も気にしていないし。もう能勢さんの話は終わり!」
私は明るい声を出して強引に話を終わらせた。
「ねぇ、梨音。能勢さんが言ってたんだけど……」
少し言いにくそうな感じで口を開く。
今、あの人の話は終わりって言ったのに何だろう。
「居酒屋に梨音の彼氏がいたって言っていたんだけど、ホントなの?」
窺うように聞いてくる。
そういえば立花さんが私を助けた時に能勢さんに向かって彼氏だと言っていた。
どんな風に能勢さんが玲奈たちに話したか分からないけど、誤魔化さない方がいいのかもしれない。
「言いそびれてたんだけど、つい最近出来たんだよね」
「マジで?この前まで彼氏欲しいか聞いたらよく分かんないとか言ってたのに」
「いや、そうだったんだけどなりゆきでね」
「えー、何それ!羨ましい」
玲奈は頬を膨らませる。
私は話しながらむなしくなっていた。
立花さんは偽装彼氏、ホントの彼氏じゃない。
それに、この関係はもうすぐ終わる。
立花さんの恋が成就したら偽装恋愛の解消をすることになると思う。
いつその事を切り出されるのか考えるだけで気持ちが落ち込んでくる。
それだったら、いっそのこと私から言った方がいいのかもしれない。
「私なんて惨敗よ。てか、干場さんもあんな人だと思わなかった」
「どういうこと?」
干場さんというのは玲奈が気になっていた人だ。
苛立ちを含んだ言い方が引っ掛かった。
「能勢さんが梨音の悪口を言った時に同調するようなことを言ってたの」
そう言って目を伏せる。
玲奈と昼ご飯を一緒に食べる約束をしていた。
今日はお弁当はお休みの日だ。
社員食堂に先に着き、私は中華定食を注文して席に座っていた。
すぐに玲奈も唐揚げ定食がのったトレーを手に席までやって来て開口一番、謝罪してきた。
「梨音、土曜はホントにごめんね」
「もういいよ。終わったことだし」
「よくないよ!能勢さんは酷すぎる」
玲奈は憤慨した様子で唐揚げを頬張る。
居酒屋で私や立花さんとやり取りした後、能勢さんは玲奈たちの元に戻って私の悪口を散々言って先に帰ったと教えてくれた。
多分、玲奈たちに言っただけじゃ気が収まらなくて、わざわざ私たちの後を追いかけて暴言を吐いたんだろう。
どんなことを言ったのか玲奈は言葉を濁したけど、尻軽とか私に向けて放ったことと同じような内容を好き勝手に言っている姿が目に浮かんだ。
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だけど、暴言を吐いたのは能勢さんで玲奈が悪い訳じゃないし、責任を感じることはない。
「玲奈が気にすることじゃないよ」
「でも……」
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「だから大丈夫だって言ってるでしょ。私も気にしていないし。もう能勢さんの話は終わり!」
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「ねぇ、梨音。能勢さんが言ってたんだけど……」
少し言いにくそうな感じで口を開く。
今、あの人の話は終わりって言ったのに何だろう。
「居酒屋に梨音の彼氏がいたって言っていたんだけど、ホントなの?」
窺うように聞いてくる。
そういえば立花さんが私を助けた時に能勢さんに向かって彼氏だと言っていた。
どんな風に能勢さんが玲奈たちに話したか分からないけど、誤魔化さない方がいいのかもしれない。
「言いそびれてたんだけど、つい最近出来たんだよね」
「マジで?この前まで彼氏欲しいか聞いたらよく分かんないとか言ってたのに」
「いや、そうだったんだけどなりゆきでね」
「えー、何それ!羨ましい」
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それだったら、いっそのこと私から言った方がいいのかもしれない。
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「どういうこと?」
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苛立ちを含んだ言い方が引っ掛かった。
「能勢さんが梨音の悪口を言った時に同調するようなことを言ってたの」
そう言って目を伏せる。
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