次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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優しさに触れて

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朝、起きた時に自分の体調に違和感があった。
いつもはスッキリ通っている鼻が、今日は詰まり気味だった。
もしかして風邪を引いたのかもしれない。
ベッドから降りて、寝室の棚に置いていた救急箱から体温計を出して熱を測ると36.9。
熱はないけど微妙に身体がだるい気がする。

洗面所で顔を洗った後、キッチンに行き冷蔵庫を開けてタマゴを取り出す。

玉子焼きを作り、お皿にのせて包丁で食べやすい大きさに切った。
その端っこを食べて味見をしたけど鼻が詰まっているせいか、味がしない。
これはヤバイかもしれない。

今日は立花さんにお弁当を作ることになっている。
だけど、味が分からない状態で作ったお弁当を食べてもらう訳にはいかない。
どうせなら美味しい料理を食べてもらいたい。
立花さんには寝坊したことにして、お弁当が作れなかったとメッセージを送ろう。

【おはようございます。今日は寝坊してしまってお弁当が作れませんでした。すみません】

最後にウサギのキャラが謝罪しているスタンプを押して送信した。
しばらくしてメッセージが届いた。

【おはよう。寝坊したんだね。弁当のことは気にしなくていいよ。早く準備して会社に遅れないようにね。また、作ってな!】

クマのスタンプつきでメッセージが送られてきた。
立花さんは何気に可愛いスタンプをよく使っている。
パッと見はそんなの使いそうにないのに、このギャップが可愛いなとか思ってしまう。

メイクをしようとドレッサーの前に座った。
メイクボックスには立花さんからもらった口紅が入っている。
シャイニングローズシンデレラという新色で、発売されたばかりのシンデレラシリーズの口紅だった。

普段、私が手に取るのはピンク系の口紅ばかりでローズ系は買ったことがない。
ローズ系は大人の女性の色という感じがするので、使うのは気後れしてしまう。
私はどちらかといえば童顔だから、舞ぐらい美人系の顔だったら似合いそうだ。
でも、せっかくもらったし使わない方が失礼だよね。
いつこの口紅を使おうかな、なんて考えながら頬にチークをのせた。
メイクを終え、着替えるために立ち上がった。


会社に着くと、カードリーダーに社員証をかざしてオフィスに入った。

「おはようございます」
「おはよ、って鼻声だね。風邪?」

出社して早々、私のマスク姿を見た桐野さんが心配そうに聞いてくる。
家を出る前にマスクをつけた。
こんな状態で出社して「この人、風邪引いてるのにマスクしてないとか最悪」なんて思われたら嫌だし。
やっぱりエチケットとしてマスクは必要だ。

「多分、そうなのかなと。でも熱はないんですけどね」
「そうなのね。あまり無理はしないようにね」
「はい、ありがとうございます」

席に座るとパソコンを起動させ、昨日の定時以降に届いていたメールチェックを始めた。
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