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花火と芽吹く想い
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土曜日、親友の上原舞と会う約束をしていた。
舞とは母親同士も親友で生まれた時からの付き合いだ。
彼女は化粧品会社で働いている。
いつもバッチリメイク、肩までのボブヘアでスラリとした長身の美人さん。
舞が小学校卒業と同時に引っ越してから少し疎遠になったけど、同じ高校に入学して私たちの付き合いは復活した。
ちなみに、舞には双子の兄の颯太がいる。
頭がよくてトップクラスの進学校に合格し、そこからエリートコースまっしぐらだ。
駅で待ち合わせをし、ある場所を目指す。
ある場所とは『ダークムーン』、いとこの小林音波の兄、朔斗がオーナーをしているバーだ。
大袈裟かもしれないけど、私にとってトラウマの場所でもある。
でも、立花さんと会ったことで恋に対して前向きに考えられるようになった。
それに、先日音波ちゃんと話してから自分でも驚くぐらいここに行くことに抵抗はなくなっていた。
どうしてこのバーに来ることになったかというと、今日は舞が話があると私を誘ってきた。
舞が賑やかな居酒屋みたいな飲食店じゃなく、落ち着いた雰囲気のところで話がしたいと言ってきて、私が思いつくのはこのバーしかなかった。
前の私ならバーに来ることは躊躇していた。
だけど、前向きに進めている今なら大丈夫な気がしたので舞とこのバーで会う約束をした。
大通りから一本裏道に入ると、いくつもの雑居ビルが立ち並んでいる。
お洒落な雑貨屋や飲食店が目立つけど、そのバーは油断していたら通り過ぎてしまうほどひっそりと佇んでいる。
まさに、隠れ家的存在の店。
五年振りか……。
いざ、店の前に立つと緊張する。
「どうしたの?」
店の前から動こうとしない私を舞が不思議そうに見ている。
「どうもしないよ。入ろうか」
意を決してシンプルな木製のドアを開けた。
カラン、とドアベルが鳴る。
店内は薄暗く落ち着いた雰囲気でBGMにジャズが流れている。
私はゆっくりと店内を見回した。
席はカウンターの十席のみ。
そのカウンターの奥の棚にはたくさんの種類のお酒の瓶が並べられている。
あの時と全く変わってない。
お客さんは年配の男性が一人、カウンターの隅で静かにお酒を飲んでいた。
「いらっしゃいませ」
バーテンダーの低くてよく通る声にドキッとした。
私は小さく息を吐き、笑顔を見せた。
「こんばんは」
「えっ、梨音か?」
「久しぶり、朔ちゃん」
朔ちゃんは驚いて目を見開いた後、嬉しそうに目を細めて笑う。
音波ちゃんから朔ちゃんが私のことを心配してくれているという話を聞いていた。
さっきの表情からホントに私のことを思ってくれていたんだなというのが伝わってきた。
「久しぶり。よく来てくれたな」
「うん。舞、座ろうか」
私は照れくささで少しはにかみながら席に座った。
舞とは母親同士も親友で生まれた時からの付き合いだ。
彼女は化粧品会社で働いている。
いつもバッチリメイク、肩までのボブヘアでスラリとした長身の美人さん。
舞が小学校卒業と同時に引っ越してから少し疎遠になったけど、同じ高校に入学して私たちの付き合いは復活した。
ちなみに、舞には双子の兄の颯太がいる。
頭がよくてトップクラスの進学校に合格し、そこからエリートコースまっしぐらだ。
駅で待ち合わせをし、ある場所を目指す。
ある場所とは『ダークムーン』、いとこの小林音波の兄、朔斗がオーナーをしているバーだ。
大袈裟かもしれないけど、私にとってトラウマの場所でもある。
でも、立花さんと会ったことで恋に対して前向きに考えられるようになった。
それに、先日音波ちゃんと話してから自分でも驚くぐらいここに行くことに抵抗はなくなっていた。
どうしてこのバーに来ることになったかというと、今日は舞が話があると私を誘ってきた。
舞が賑やかな居酒屋みたいな飲食店じゃなく、落ち着いた雰囲気のところで話がしたいと言ってきて、私が思いつくのはこのバーしかなかった。
前の私ならバーに来ることは躊躇していた。
だけど、前向きに進めている今なら大丈夫な気がしたので舞とこのバーで会う約束をした。
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まさに、隠れ家的存在の店。
五年振りか……。
いざ、店の前に立つと緊張する。
「どうしたの?」
店の前から動こうとしない私を舞が不思議そうに見ている。
「どうもしないよ。入ろうか」
意を決してシンプルな木製のドアを開けた。
カラン、とドアベルが鳴る。
店内は薄暗く落ち着いた雰囲気でBGMにジャズが流れている。
私はゆっくりと店内を見回した。
席はカウンターの十席のみ。
そのカウンターの奥の棚にはたくさんの種類のお酒の瓶が並べられている。
あの時と全く変わってない。
お客さんは年配の男性が一人、カウンターの隅で静かにお酒を飲んでいた。
「いらっしゃいませ」
バーテンダーの低くてよく通る声にドキッとした。
私は小さく息を吐き、笑顔を見せた。
「こんばんは」
「えっ、梨音か?」
「久しぶり、朔ちゃん」
朔ちゃんは驚いて目を見開いた後、嬉しそうに目を細めて笑う。
音波ちゃんから朔ちゃんが私のことを心配してくれているという話を聞いていた。
さっきの表情からホントに私のことを思ってくれていたんだなというのが伝わってきた。
「久しぶり。よく来てくれたな」
「うん。舞、座ろうか」
私は照れくささで少しはにかみながら席に座った。
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