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偽装恋愛、始めます
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目の前にあるボールペンを見て顔を綻ばせた。
このボールペンは飲料メーカー、マチダの販売促進用のノベルティーグッズ。
マチダの担当者から日常使えてたくさんあっても困らない物にして欲しいと依頼され、過去のノベルティーグッズの資料を参考にボールペンはどうかと提案した。
担当者の了解がもらえ、企画をつめていった。
宣伝活動の為に無料配布されるので、その企業に合ったものを提供しないといけない。
マチダが推している五種類の飲料水のボールペンにしてくれとのことだった。
デザイナーの大野さんと相談し、商品の色とパッケージを取り入れたデザインにした。
デザイン案が通れば、ボールペンの太さなど諸々の詳細を決めていく。
ボールペンに企業名を入れて完成し、先日サンプルを持ってマチダに出向いた。
サンプル披露の時、担当者だけでなくマチダの社長も立ち合いかなり緊張した。
ボールペンの出来に社長も喜んでくれ、それまでの努力が報われた気がした。
今日はその納品日だ。
さっき物流部の比嘉さんから商品を発送したと連絡があり、ホッと息を吐いたところだ。
今回は企業のノベルティーグッズだったけど、商品企画から始まって、開発や製造、営業や広報など社内のさまざまな部門の人の力が集結して一つの文房具が出来上がり、それが店頭に並ぶ。
この喜びは何度味わってもいいものだし、やりがいがある。
「今日も立花課長が手作り弁当を食べてましたよ」
感慨に浸っていたら、社員食堂から戻ってきた友田さんが話しかけてきた。
数日前、立花さんが社食で手作り弁当を食べていたという噂は一気に広まった。
それと同時に、立花さんに彼女ができたということも。
そのことでショックを受けている女子社員もいて"立花ロス"になっているとかいないとか。
当の本人は気にする様子は一切なく、私が作ったお弁当を今日も変わらず社食で食べているみたいだ。
高柳課長が「アイツは策士だ。これ見よがしにみんながいる前で弁当を食べて彼女がいるアピールして、これ以上女子社員が言い寄ってこないように仕向けてる」と言っていた。
噂のことを相談したら、立花さんは彼女が出来たと社内に広まっても問題ないと言った。
ということは、立花さんの気になる人は社内の人ではないということになる。
だから私と偽装恋愛してもその人に知られることはない。
このメリットがあったから私にあんな提案をしたのかと、ようやく腑に落ちた。
「立花課長、彼女の前だとどんな感じなんだろう。プライベートが謎だから想像できないなぁ。甘えたりするのかな。梨音先輩はどう思います?」
「えっ、どうだろう。私も想像できないかな……」
そんな話を私に振らないで欲しい。
「普段、真面目で落ち着いている感じの立花課長が、家では彼女にべったり甘えてたりしてたらギャップ萌えですよね」
友田さんの妄想は止まらない。
偽装とはいえ、一応今は付き合っているのでこれ以上は聞くに堪えない。
「ほら、そんなことはいいから仕事しなよ。机の上、また汚れてるよ」
「はーい」
一度、机の上が汚くて失敗していることもあり、私が話題を変えると友田さんは素直に返事をした。
このボールペンは飲料メーカー、マチダの販売促進用のノベルティーグッズ。
マチダの担当者から日常使えてたくさんあっても困らない物にして欲しいと依頼され、過去のノベルティーグッズの資料を参考にボールペンはどうかと提案した。
担当者の了解がもらえ、企画をつめていった。
宣伝活動の為に無料配布されるので、その企業に合ったものを提供しないといけない。
マチダが推している五種類の飲料水のボールペンにしてくれとのことだった。
デザイナーの大野さんと相談し、商品の色とパッケージを取り入れたデザインにした。
デザイン案が通れば、ボールペンの太さなど諸々の詳細を決めていく。
ボールペンに企業名を入れて完成し、先日サンプルを持ってマチダに出向いた。
サンプル披露の時、担当者だけでなくマチダの社長も立ち合いかなり緊張した。
ボールペンの出来に社長も喜んでくれ、それまでの努力が報われた気がした。
今日はその納品日だ。
さっき物流部の比嘉さんから商品を発送したと連絡があり、ホッと息を吐いたところだ。
今回は企業のノベルティーグッズだったけど、商品企画から始まって、開発や製造、営業や広報など社内のさまざまな部門の人の力が集結して一つの文房具が出来上がり、それが店頭に並ぶ。
この喜びは何度味わってもいいものだし、やりがいがある。
「今日も立花課長が手作り弁当を食べてましたよ」
感慨に浸っていたら、社員食堂から戻ってきた友田さんが話しかけてきた。
数日前、立花さんが社食で手作り弁当を食べていたという噂は一気に広まった。
それと同時に、立花さんに彼女ができたということも。
そのことでショックを受けている女子社員もいて"立花ロス"になっているとかいないとか。
当の本人は気にする様子は一切なく、私が作ったお弁当を今日も変わらず社食で食べているみたいだ。
高柳課長が「アイツは策士だ。これ見よがしにみんながいる前で弁当を食べて彼女がいるアピールして、これ以上女子社員が言い寄ってこないように仕向けてる」と言っていた。
噂のことを相談したら、立花さんは彼女が出来たと社内に広まっても問題ないと言った。
ということは、立花さんの気になる人は社内の人ではないということになる。
だから私と偽装恋愛してもその人に知られることはない。
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「立花課長、彼女の前だとどんな感じなんだろう。プライベートが謎だから想像できないなぁ。甘えたりするのかな。梨音先輩はどう思います?」
「えっ、どうだろう。私も想像できないかな……」
そんな話を私に振らないで欲しい。
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友田さんの妄想は止まらない。
偽装とはいえ、一応今は付き合っているのでこれ以上は聞くに堪えない。
「ほら、そんなことはいいから仕事しなよ。机の上、また汚れてるよ」
「はーい」
一度、机の上が汚くて失敗していることもあり、私が話題を変えると友田さんは素直に返事をした。
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