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偽装恋愛、始めます
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仕事終わりにマンション近くのスーパーに寄った。
節約の為に自炊をすることが多い。
小さい頃から母親に料理は教わっていたから、比較的得意な方だ。
今日はタコとジャガイモが特売で安かったのでもちろん購入。
冷蔵庫に何が入っていたか思い出し、脳内でメニューを決め、買い物を済ませて家に帰った。
今日の晩ご飯は母親直伝のタコ飯、肉じゃが、ほうれん草のおひたしにみそ汁。
一人暮らしだから一汁三菜とまではいかないけど。
しかもひとり分を作るのは難しく、いつも余らせるので次の日にも食べたり、お弁当に入れたりする。
今日も普通に肉じゃがとか余ったし。
テレビを見ながらくつろいでいたら無性に炭酸が飲みたくなった。
だけど、残念ながら冷蔵庫には入っていない。
近所のコンビニで買うことにし、鍵と財布を手に部屋を出た。
マンションから歩いて五分ほどの場所にコンビニがある。
店内に入ると、お弁当のコーナーに立っているサラリーマンがいた。
見覚えのあるその後ろ姿にハッとした。
立花さんだ。
家を出る時、時計を見たら二十時前だった。
お弁当を選んでいるということは今から晩ご飯を食べるんだろうか。
どうしよう、声をかけようかな。
気付いているのに無視するのも感じ悪いよね。
「こんばんは」
背後から声をかけると、立花さんが振り向いた。
「あっ、河野さんか。こんばんは。君も買い物?」
一瞬驚いた表情のあと、笑顔で聞いてくる。
「はい。急に炭酸が飲みたくなったので。あの、立花さんはこれからご飯ですか?」
見るつもりはなかったんだけど、立花さんが持っていたかごが視界に入ってしまった。
その中には弁当やサラダ、インスタントのみそ汁やお酒などが入っている。
「あぁ。料理が出来ないからいつも弁当か外食になってしまうんだ」
「えっ?失礼ですけど立花さんはいつもそういったものばかり食べているんですか?」
気になってしまったので再び質問すると、立花さんは返事の代わりに気まずそうに頬を掻く。
立花さんは何もかもが完璧で、料理も作れると思っていたからすごく意外だ。
それより、外食とかお弁当ばかりじゃ栄養が偏るんじゃないのかな。
そう思ったら、勝手に口が動いていた。
「もしよかったらでいいんですけど、うちでご飯を食べますか?」
「それは、どういう……」
「私、自炊しているんですけど、ひとり分を作るのは難しくていつも残ってしまうんです。今日も余らせたので……」
自分の失言に気付き、慌てて口を覆う。
立花さんに余りものを勧めるとか何を言っているんだろう。
それこそ失礼じゃないの!
「いえ、なんでもないです。失礼します」
私はお辞儀し、飲料水のコーナーへ足を向けた。
「ちょっと待って。今の話、ホントにいいの?」
立花さんが私の腕を掴み引き留めて聞いてくる。
私から言ってしまった手前、引っ込みがつかなくなっていた。
「立花さんがよければ……」
「いいに決まっているだろ。河野さんの手料理を食べれるんだから」
立花さんは嬉しそうに言うと、そそくさとかごの中に入れていたお弁当などを返却していく。
その間に私は炭酸ジュースを選び、手に取りレジに向かおうとした。
「それ、買うんだろ?貸して」
私の手からジュースを取り、立花さんが持っていたかごの中へ入れた。
「あの、ジュース……」
「ついでだから一緒に支払いするよ」
「でも悪いです」
「いいから気にしないで」
笑顔で言われ、その言葉に甘えることにした。
支払いを済ませると立花さんと並んでマンションへと向かった。
節約の為に自炊をすることが多い。
小さい頃から母親に料理は教わっていたから、比較的得意な方だ。
今日はタコとジャガイモが特売で安かったのでもちろん購入。
冷蔵庫に何が入っていたか思い出し、脳内でメニューを決め、買い物を済ませて家に帰った。
今日の晩ご飯は母親直伝のタコ飯、肉じゃが、ほうれん草のおひたしにみそ汁。
一人暮らしだから一汁三菜とまではいかないけど。
しかもひとり分を作るのは難しく、いつも余らせるので次の日にも食べたり、お弁当に入れたりする。
今日も普通に肉じゃがとか余ったし。
テレビを見ながらくつろいでいたら無性に炭酸が飲みたくなった。
だけど、残念ながら冷蔵庫には入っていない。
近所のコンビニで買うことにし、鍵と財布を手に部屋を出た。
マンションから歩いて五分ほどの場所にコンビニがある。
店内に入ると、お弁当のコーナーに立っているサラリーマンがいた。
見覚えのあるその後ろ姿にハッとした。
立花さんだ。
家を出る時、時計を見たら二十時前だった。
お弁当を選んでいるということは今から晩ご飯を食べるんだろうか。
どうしよう、声をかけようかな。
気付いているのに無視するのも感じ悪いよね。
「こんばんは」
背後から声をかけると、立花さんが振り向いた。
「あっ、河野さんか。こんばんは。君も買い物?」
一瞬驚いた表情のあと、笑顔で聞いてくる。
「はい。急に炭酸が飲みたくなったので。あの、立花さんはこれからご飯ですか?」
見るつもりはなかったんだけど、立花さんが持っていたかごが視界に入ってしまった。
その中には弁当やサラダ、インスタントのみそ汁やお酒などが入っている。
「あぁ。料理が出来ないからいつも弁当か外食になってしまうんだ」
「えっ?失礼ですけど立花さんはいつもそういったものばかり食べているんですか?」
気になってしまったので再び質問すると、立花さんは返事の代わりに気まずそうに頬を掻く。
立花さんは何もかもが完璧で、料理も作れると思っていたからすごく意外だ。
それより、外食とかお弁当ばかりじゃ栄養が偏るんじゃないのかな。
そう思ったら、勝手に口が動いていた。
「もしよかったらでいいんですけど、うちでご飯を食べますか?」
「それは、どういう……」
「私、自炊しているんですけど、ひとり分を作るのは難しくていつも残ってしまうんです。今日も余らせたので……」
自分の失言に気付き、慌てて口を覆う。
立花さんに余りものを勧めるとか何を言っているんだろう。
それこそ失礼じゃないの!
「いえ、なんでもないです。失礼します」
私はお辞儀し、飲料水のコーナーへ足を向けた。
「ちょっと待って。今の話、ホントにいいの?」
立花さんが私の腕を掴み引き留めて聞いてくる。
私から言ってしまった手前、引っ込みがつかなくなっていた。
「立花さんがよければ……」
「いいに決まっているだろ。河野さんの手料理を食べれるんだから」
立花さんは嬉しそうに言うと、そそくさとかごの中に入れていたお弁当などを返却していく。
その間に私は炭酸ジュースを選び、手に取りレジに向かおうとした。
「それ、買うんだろ?貸して」
私の手からジュースを取り、立花さんが持っていたかごの中へ入れた。
「あの、ジュース……」
「ついでだから一緒に支払いするよ」
「でも悪いです」
「いいから気にしないで」
笑顔で言われ、その言葉に甘えることにした。
支払いを済ませると立花さんと並んでマンションへと向かった。
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