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悩む日々
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完成したオリジナルキャラ第二弾、ちーすけの文房具のサンプル。
ちーすけ単体のもあるけど、もふりんとコラボした文房具も作られることになった。
プロジェクトメンバーが段ボールの周りに集まってくる。
「お、いい出来じゃないか」
高柳課長が梱包材を外すと、ちーすけが描かれた文房具が出てきた。
「そうですね。色もいい感じですし」
デザイナーの野中さんがデザインや色をチェックする。
「うわ、これも可愛いね」
広報部の水谷志保さんがクリアファイルを手に取った。
志保さんは、私より一歳上で玲奈の直属の先輩にあたる。
セミロングの黒髪を緩く巻いていて、柔らかな雰囲気の人だ。
ノート、下敷き、クリアファイルなどの文房具にちーすけが描かれている。
あと、私が一番初めに考えたちーすけの物差しもあった。
感動して泣きそうだ。
私はシャーペンを手に取った。
先の部分にちーすけの人形がついている。
大き過ぎず、小さ過ぎずでちょうどいい大きさだ。
カチカチと芯を出して白い紙に試し書きをしてみた。
この文房具が店頭に並ぶんだよね。
嬉しいやら緊張やらいろんな感情が渦巻いている。
ふと、高柳課長と話している立花さんが視界に入った。
真剣な表情で書類に目を通している姿にドキッとする。
恋のリハビリをしてみないかと提案されてから、立花さんのことを意識するというか、自然と目で追ってしまう私がいた。
仕事をしている姿を見ていると、あんな提案をしそうにないんだけど。
あの時の立花さんは正気だったのかなと首を傾げるぐらいだ。
でも、私はもちろん立花さんもアルコールは一滴も口にしていない。
「……さん、河野さん!」
「へ?」
考え事をしていて、呼ばれていることに気がつかなかった。
声の主は立花さんだった。
「もしかして調子悪い?」
心配そうに顔を覗き込んできて、心拍数が急上昇する。
「いえ、そんなことはないです。大丈夫です」
焦りながら首を左右に振って大丈夫だということをアピールする。
「それならいいけど。そうだ、ちーすけの設定面白かったよ。大阪から東京に引っ越ししてきたとか細かい部分まで考えられていて、よく出来てたと思うよ」
前回の打ち合わせの時に、ちーすけのバックグラウンドを考えるように言われていた。
もふりんにもキャラ設定があるので、ちーすけの生みの親の私に考えて欲しいと頼まれた。
性格とかによってキャラの表情も変わってくるので、デザイナーの大野さんと相談しながら設定を考えた。
身長やら家族構成、好きな食べ物とか、もふりんの設定を元にちーすけのプロフィールを作成したんだ。
「本当ですか?ありがとうございます」
「売り上げ次第では今後の展開も広がるから、頑張って営業するよ」
笑顔で言われ、ドキドキしてしまう。
「よろしくお願いします」
私は勢いよく頭を下げると、立花さんは「じゃあ」と言って会議室を出ていった。
その後ろ姿を見送り、小さく息をはいた。
立花さんと仕事で顔を合わせることはあっても、会社ではプライベートな話は一切しない。
当たり前のことだけど。
例の件は私からの返事待ちだから立花さんからは何も言ってこない。
だからと言って、このままスルーという訳にもいかない。
早く返事をしなきゃとは思うけど、いまだに決断出来ないでいた。
ちーすけ単体のもあるけど、もふりんとコラボした文房具も作られることになった。
プロジェクトメンバーが段ボールの周りに集まってくる。
「お、いい出来じゃないか」
高柳課長が梱包材を外すと、ちーすけが描かれた文房具が出てきた。
「そうですね。色もいい感じですし」
デザイナーの野中さんがデザインや色をチェックする。
「うわ、これも可愛いね」
広報部の水谷志保さんがクリアファイルを手に取った。
志保さんは、私より一歳上で玲奈の直属の先輩にあたる。
セミロングの黒髪を緩く巻いていて、柔らかな雰囲気の人だ。
ノート、下敷き、クリアファイルなどの文房具にちーすけが描かれている。
あと、私が一番初めに考えたちーすけの物差しもあった。
感動して泣きそうだ。
私はシャーペンを手に取った。
先の部分にちーすけの人形がついている。
大き過ぎず、小さ過ぎずでちょうどいい大きさだ。
カチカチと芯を出して白い紙に試し書きをしてみた。
この文房具が店頭に並ぶんだよね。
嬉しいやら緊張やらいろんな感情が渦巻いている。
ふと、高柳課長と話している立花さんが視界に入った。
真剣な表情で書類に目を通している姿にドキッとする。
恋のリハビリをしてみないかと提案されてから、立花さんのことを意識するというか、自然と目で追ってしまう私がいた。
仕事をしている姿を見ていると、あんな提案をしそうにないんだけど。
あの時の立花さんは正気だったのかなと首を傾げるぐらいだ。
でも、私はもちろん立花さんもアルコールは一滴も口にしていない。
「……さん、河野さん!」
「へ?」
考え事をしていて、呼ばれていることに気がつかなかった。
声の主は立花さんだった。
「もしかして調子悪い?」
心配そうに顔を覗き込んできて、心拍数が急上昇する。
「いえ、そんなことはないです。大丈夫です」
焦りながら首を左右に振って大丈夫だということをアピールする。
「それならいいけど。そうだ、ちーすけの設定面白かったよ。大阪から東京に引っ越ししてきたとか細かい部分まで考えられていて、よく出来てたと思うよ」
前回の打ち合わせの時に、ちーすけのバックグラウンドを考えるように言われていた。
もふりんにもキャラ設定があるので、ちーすけの生みの親の私に考えて欲しいと頼まれた。
性格とかによってキャラの表情も変わってくるので、デザイナーの大野さんと相談しながら設定を考えた。
身長やら家族構成、好きな食べ物とか、もふりんの設定を元にちーすけのプロフィールを作成したんだ。
「本当ですか?ありがとうございます」
「売り上げ次第では今後の展開も広がるから、頑張って営業するよ」
笑顔で言われ、ドキドキしてしまう。
「よろしくお願いします」
私は勢いよく頭を下げると、立花さんは「じゃあ」と言って会議室を出ていった。
その後ろ姿を見送り、小さく息をはいた。
立花さんと仕事で顔を合わせることはあっても、会社ではプライベートな話は一切しない。
当たり前のことだけど。
例の件は私からの返事待ちだから立花さんからは何も言ってこない。
だからと言って、このままスルーという訳にもいかない。
早く返事をしなきゃとは思うけど、いまだに決断出来ないでいた。
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