12 / 107
予想外の提案
5
しおりを挟む
立花さんといえば次期社長で御曹司。
そんな人が私でも住めるようなマンションで生活しているなんて誰が想像できるだろう。
大豪邸の実家暮らし、もしくはセレブが住むような高層マンションとかそんな感じかなと勝手に思っていた。
遠い存在だと感じていたけど、少しだけ親近感がわいた。
「河野さんは何階?」
「私は三階です。立花さんは?」
「俺は七階だよ」
「そうなんですね」
そんな話をしているうちにマンションにつき、立花さんは駐車場に車を止めた。
車を降り、立花さんと二人で並んでマンションのエントランスに入る。
そういえば、と思い口を開いた。
「今まで会ったことがないですよね」
「そうだね。まぁ、去年まで海外にいてここに住みだしたのは四月からだし」
エレベーターに乗り込むと、あっという間に三階に着いた。
少しの名残惜しさを感じるのは、立花さんと過ごした時間が楽しかったからだろう。
「今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ一緒に食事が出来て嬉しかったよ」
「とんでもないです。私も楽しかったです」
「ご近所さんてことで、またご飯とか誘ってもいい?」
ん?また、というのはどういうことだろう。
この前のお礼で食事に行っただけという認識で、今日限りだと思っていたんだけど。
「私でよければ」
立花さんの意図がわからなかったけど、きっと社交辞令だと思い頷いた。
エレベーターの扉が閉まりかけて慌てて降りると、なぜか立花さんも一緒に降りてきた。
「どうかしたんですか?」
立花さんは七階のはずで三階で降りる必要はないのに、と首を傾げた。
「河野さん、さっき恋がしてみたいって言ってたよね?」
「えっ、はい……」
話の流れで話したけど、改めて聞かれると恥ずかしいものがある。
でも、久々に恋はしてみたいと思ったけど、相手もいないし好きな人もいない。
だからといって合コンとか行きたい訳じゃないし。
恋をするなんて当分先のことだろうなと考えていたら、立花さんがとんでもないことを言い出した。
「だったら俺と恋、してみない?」
今なんて言った?
立花さんと恋?
驚き過ぎて数回瞬きした。
「あの、それってどういうことですか?」
「河野さん、恋から遠ざかっているんだよね?俺も、しばらく海外にいてこっちのデートスポットとかよく分からないんだ。だから、今後のためにもお互いに恋のリハビリが必要かなと思って」
「恋のリハビリ……ですか?」
立花さんに言われた言葉を必死に理解しようと頭を働かせる。
「そう。偽装恋愛してリハビリするんだ。どうかな、この提案」
どうかなと言われて困惑した。
立花さんは本気で言っているんだろうか。
顔を見た限り、真面目な表情で話しているので冗談ではなさそうだけど。
立花課長といえば、次期社長で普通だったら手の届かないような存在の人。
そんな人と偽装恋愛とか勿体ないというか、恐れ多いというか躊躇するのは当然だと思う。
立花さんの言葉を聞いて恋愛に対して前向きに考えられるようになったけど、彼氏いない歴イコール年齢で私の恋愛レベルはかなり低い。
仕事以外で男性と話す機会なんてなかったし、話題が豊富なわけでもない。
恋愛することに臆病になっていて、ずっと殻に閉じこもっていた私には恋のリハビリは必要かもしれない。
だけど、立花さんには好きな人がいるのに私と偽装恋愛する必要があるのか些か疑問だ。
「ちょっと待ってください。立花さんには好きな人がいるんですよね?それなのに、私と偽装恋愛なんかしてメリットがありますか?」
「メリットがあるから提案したんだ。俺はここ何年も仕事ばかりで恋愛に関してはさっぱりでね。だから、俺にもリハビリが必要だと思ったから、河野さんに協力してもらえたら助かるんだ」
私で役に立てることなんてあるのか怪しいところだけど。
「考えさせてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろんだよ」
立花さんはそう言って頷いた。
さすがにすぐに返事をする事はできなかった。
立花さんの提案を受け入れたらトキメクことや恋するという気持ちを思い出せるかも知れない。
でも、五年も恋心というものから遠ざかっているので、偽装とはいえ立花さんと恋をするということがいまいちピンとこない。
私はしばらく頭を悩ませることになった。
そんな人が私でも住めるようなマンションで生活しているなんて誰が想像できるだろう。
大豪邸の実家暮らし、もしくはセレブが住むような高層マンションとかそんな感じかなと勝手に思っていた。
遠い存在だと感じていたけど、少しだけ親近感がわいた。
「河野さんは何階?」
「私は三階です。立花さんは?」
「俺は七階だよ」
「そうなんですね」
そんな話をしているうちにマンションにつき、立花さんは駐車場に車を止めた。
車を降り、立花さんと二人で並んでマンションのエントランスに入る。
そういえば、と思い口を開いた。
「今まで会ったことがないですよね」
「そうだね。まぁ、去年まで海外にいてここに住みだしたのは四月からだし」
エレベーターに乗り込むと、あっという間に三階に着いた。
少しの名残惜しさを感じるのは、立花さんと過ごした時間が楽しかったからだろう。
「今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ一緒に食事が出来て嬉しかったよ」
「とんでもないです。私も楽しかったです」
「ご近所さんてことで、またご飯とか誘ってもいい?」
ん?また、というのはどういうことだろう。
この前のお礼で食事に行っただけという認識で、今日限りだと思っていたんだけど。
「私でよければ」
立花さんの意図がわからなかったけど、きっと社交辞令だと思い頷いた。
エレベーターの扉が閉まりかけて慌てて降りると、なぜか立花さんも一緒に降りてきた。
「どうかしたんですか?」
立花さんは七階のはずで三階で降りる必要はないのに、と首を傾げた。
「河野さん、さっき恋がしてみたいって言ってたよね?」
「えっ、はい……」
話の流れで話したけど、改めて聞かれると恥ずかしいものがある。
でも、久々に恋はしてみたいと思ったけど、相手もいないし好きな人もいない。
だからといって合コンとか行きたい訳じゃないし。
恋をするなんて当分先のことだろうなと考えていたら、立花さんがとんでもないことを言い出した。
「だったら俺と恋、してみない?」
今なんて言った?
立花さんと恋?
驚き過ぎて数回瞬きした。
「あの、それってどういうことですか?」
「河野さん、恋から遠ざかっているんだよね?俺も、しばらく海外にいてこっちのデートスポットとかよく分からないんだ。だから、今後のためにもお互いに恋のリハビリが必要かなと思って」
「恋のリハビリ……ですか?」
立花さんに言われた言葉を必死に理解しようと頭を働かせる。
「そう。偽装恋愛してリハビリするんだ。どうかな、この提案」
どうかなと言われて困惑した。
立花さんは本気で言っているんだろうか。
顔を見た限り、真面目な表情で話しているので冗談ではなさそうだけど。
立花課長といえば、次期社長で普通だったら手の届かないような存在の人。
そんな人と偽装恋愛とか勿体ないというか、恐れ多いというか躊躇するのは当然だと思う。
立花さんの言葉を聞いて恋愛に対して前向きに考えられるようになったけど、彼氏いない歴イコール年齢で私の恋愛レベルはかなり低い。
仕事以外で男性と話す機会なんてなかったし、話題が豊富なわけでもない。
恋愛することに臆病になっていて、ずっと殻に閉じこもっていた私には恋のリハビリは必要かもしれない。
だけど、立花さんには好きな人がいるのに私と偽装恋愛する必要があるのか些か疑問だ。
「ちょっと待ってください。立花さんには好きな人がいるんですよね?それなのに、私と偽装恋愛なんかしてメリットがありますか?」
「メリットがあるから提案したんだ。俺はここ何年も仕事ばかりで恋愛に関してはさっぱりでね。だから、俺にもリハビリが必要だと思ったから、河野さんに協力してもらえたら助かるんだ」
私で役に立てることなんてあるのか怪しいところだけど。
「考えさせてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろんだよ」
立花さんはそう言って頷いた。
さすがにすぐに返事をする事はできなかった。
立花さんの提案を受け入れたらトキメクことや恋するという気持ちを思い出せるかも知れない。
でも、五年も恋心というものから遠ざかっているので、偽装とはいえ立花さんと恋をするということがいまいちピンとこない。
私はしばらく頭を悩ませることになった。
23
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる