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予想外の提案
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立花さんといえば次期社長で御曹司。
そんな人が私でも住めるようなマンションで生活しているなんて誰が想像できるだろう。
大豪邸の実家暮らし、もしくはセレブが住むような高層マンションとかそんな感じかなと勝手に思っていた。
遠い存在だと感じていたけど、少しだけ親近感がわいた。
「河野さんは何階?」
「私は三階です。立花さんは?」
「俺は七階だよ」
「そうなんですね」
そんな話をしているうちにマンションにつき、立花さんは駐車場に車を止めた。
車を降り、立花さんと二人で並んでマンションのエントランスに入る。
そういえば、と思い口を開いた。
「今まで会ったことがないですよね」
「そうだね。まぁ、去年まで海外にいてここに住みだしたのは四月からだし」
エレベーターに乗り込むと、あっという間に三階に着いた。
少しの名残惜しさを感じるのは、立花さんと過ごした時間が楽しかったからだろう。
「今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ一緒に食事が出来て嬉しかったよ」
「とんでもないです。私も楽しかったです」
「ご近所さんてことで、またご飯とか誘ってもいい?」
ん?また、というのはどういうことだろう。
この前のお礼で食事に行っただけという認識で、今日限りだと思っていたんだけど。
「私でよければ」
立花さんの意図がわからなかったけど、きっと社交辞令だと思い頷いた。
エレベーターの扉が閉まりかけて慌てて降りると、なぜか立花さんも一緒に降りてきた。
「どうかしたんですか?」
立花さんは七階のはずで三階で降りる必要はないのに、と首を傾げた。
「河野さん、さっき恋がしてみたいって言ってたよね?」
「えっ、はい……」
話の流れで話したけど、改めて聞かれると恥ずかしいものがある。
でも、久々に恋はしてみたいと思ったけど、相手もいないし好きな人もいない。
だからといって合コンとか行きたい訳じゃないし。
恋をするなんて当分先のことだろうなと考えていたら、立花さんがとんでもないことを言い出した。
「だったら俺と恋、してみない?」
今なんて言った?
立花さんと恋?
驚き過ぎて数回瞬きした。
「あの、それってどういうことですか?」
「河野さん、恋から遠ざかっているんだよね?俺も、しばらく海外にいてこっちのデートスポットとかよく分からないんだ。だから、今後のためにもお互いに恋のリハビリが必要かなと思って」
「恋のリハビリ……ですか?」
立花さんに言われた言葉を必死に理解しようと頭を働かせる。
「そう。偽装恋愛してリハビリするんだ。どうかな、この提案」
どうかなと言われて困惑した。
立花さんは本気で言っているんだろうか。
顔を見た限り、真面目な表情で話しているので冗談ではなさそうだけど。
立花課長といえば、次期社長で普通だったら手の届かないような存在の人。
そんな人と偽装恋愛とか勿体ないというか、恐れ多いというか躊躇するのは当然だと思う。
立花さんの言葉を聞いて恋愛に対して前向きに考えられるようになったけど、彼氏いない歴イコール年齢で私の恋愛レベルはかなり低い。
仕事以外で男性と話す機会なんてなかったし、話題が豊富なわけでもない。
恋愛することに臆病になっていて、ずっと殻に閉じこもっていた私には恋のリハビリは必要かもしれない。
だけど、立花さんには好きな人がいるのに私と偽装恋愛する必要があるのか些か疑問だ。
「ちょっと待ってください。立花さんには好きな人がいるんですよね?それなのに、私と偽装恋愛なんかしてメリットがありますか?」
「メリットがあるから提案したんだ。俺はここ何年も仕事ばかりで恋愛に関してはさっぱりでね。だから、俺にもリハビリが必要だと思ったから、河野さんに協力してもらえたら助かるんだ」
私で役に立てることなんてあるのか怪しいところだけど。
「考えさせてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろんだよ」
立花さんはそう言って頷いた。
さすがにすぐに返事をする事はできなかった。
立花さんの提案を受け入れたらトキメクことや恋するという気持ちを思い出せるかも知れない。
でも、五年も恋心というものから遠ざかっているので、偽装とはいえ立花さんと恋をするということがいまいちピンとこない。
私はしばらく頭を悩ませることになった。
そんな人が私でも住めるようなマンションで生活しているなんて誰が想像できるだろう。
大豪邸の実家暮らし、もしくはセレブが住むような高層マンションとかそんな感じかなと勝手に思っていた。
遠い存在だと感じていたけど、少しだけ親近感がわいた。
「河野さんは何階?」
「私は三階です。立花さんは?」
「俺は七階だよ」
「そうなんですね」
そんな話をしているうちにマンションにつき、立花さんは駐車場に車を止めた。
車を降り、立花さんと二人で並んでマンションのエントランスに入る。
そういえば、と思い口を開いた。
「今まで会ったことがないですよね」
「そうだね。まぁ、去年まで海外にいてここに住みだしたのは四月からだし」
エレベーターに乗り込むと、あっという間に三階に着いた。
少しの名残惜しさを感じるのは、立花さんと過ごした時間が楽しかったからだろう。
「今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ一緒に食事が出来て嬉しかったよ」
「とんでもないです。私も楽しかったです」
「ご近所さんてことで、またご飯とか誘ってもいい?」
ん?また、というのはどういうことだろう。
この前のお礼で食事に行っただけという認識で、今日限りだと思っていたんだけど。
「私でよければ」
立花さんの意図がわからなかったけど、きっと社交辞令だと思い頷いた。
エレベーターの扉が閉まりかけて慌てて降りると、なぜか立花さんも一緒に降りてきた。
「どうかしたんですか?」
立花さんは七階のはずで三階で降りる必要はないのに、と首を傾げた。
「河野さん、さっき恋がしてみたいって言ってたよね?」
「えっ、はい……」
話の流れで話したけど、改めて聞かれると恥ずかしいものがある。
でも、久々に恋はしてみたいと思ったけど、相手もいないし好きな人もいない。
だからといって合コンとか行きたい訳じゃないし。
恋をするなんて当分先のことだろうなと考えていたら、立花さんがとんでもないことを言い出した。
「だったら俺と恋、してみない?」
今なんて言った?
立花さんと恋?
驚き過ぎて数回瞬きした。
「あの、それってどういうことですか?」
「河野さん、恋から遠ざかっているんだよね?俺も、しばらく海外にいてこっちのデートスポットとかよく分からないんだ。だから、今後のためにもお互いに恋のリハビリが必要かなと思って」
「恋のリハビリ……ですか?」
立花さんに言われた言葉を必死に理解しようと頭を働かせる。
「そう。偽装恋愛してリハビリするんだ。どうかな、この提案」
どうかなと言われて困惑した。
立花さんは本気で言っているんだろうか。
顔を見た限り、真面目な表情で話しているので冗談ではなさそうだけど。
立花課長といえば、次期社長で普通だったら手の届かないような存在の人。
そんな人と偽装恋愛とか勿体ないというか、恐れ多いというか躊躇するのは当然だと思う。
立花さんの言葉を聞いて恋愛に対して前向きに考えられるようになったけど、彼氏いない歴イコール年齢で私の恋愛レベルはかなり低い。
仕事以外で男性と話す機会なんてなかったし、話題が豊富なわけでもない。
恋愛することに臆病になっていて、ずっと殻に閉じこもっていた私には恋のリハビリは必要かもしれない。
だけど、立花さんには好きな人がいるのに私と偽装恋愛する必要があるのか些か疑問だ。
「ちょっと待ってください。立花さんには好きな人がいるんですよね?それなのに、私と偽装恋愛なんかしてメリットがありますか?」
「メリットがあるから提案したんだ。俺はここ何年も仕事ばかりで恋愛に関してはさっぱりでね。だから、俺にもリハビリが必要だと思ったから、河野さんに協力してもらえたら助かるんだ」
私で役に立てることなんてあるのか怪しいところだけど。
「考えさせてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろんだよ」
立花さんはそう言って頷いた。
さすがにすぐに返事をする事はできなかった。
立花さんの提案を受け入れたらトキメクことや恋するという気持ちを思い出せるかも知れない。
でも、五年も恋心というものから遠ざかっているので、偽装とはいえ立花さんと恋をするということがいまいちピンとこない。
私はしばらく頭を悩ませることになった。
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