次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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予想外の提案

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本当に彼女がいないんだ。
それに五年という長い間、片想いをしてるなんて思わなかった。
立花さんはイケメンだし、仕事だって出来る。
勝手な偏見だけど、立花さんぐらいの人は告白したら絶対に両想いになれそうなのに。

「余計な事かもしれないんですけど、気持ちを伝えないんですか?」
「実はそんなに話したことがないんだ」

肩を竦めながら言う。

「えっ?」
「五年前に会った時、その子は俺のことは眼中になかったんだ。しかも、俺は仕事で海外に行ってしまったからね。その間は全然会えなかったし。今年、こっちに戻ってきて、最近その子と話せるようになったんだ。やっとスタートラインに立てたって感じかな。いきなり告白しても相手を驚かせそうだから、徐々に距離を縮めていこうと思っているんだ」
「そうなんですね」

立花さんが気になる人、、きっと素敵な人なんだろう。
でも、立花さんのことが眼中にないってそんなこともあるんだ。
恋愛って難しいな。
食後に運ばれてきたコーヒーをひと口飲んだ。

「あの、聞いてもいいですか?」
「何?」
「好きな人に告白するのは怖くないですか?」

さっき、興味本意で立花さんに気持ちを伝えないのかと聞いてしまったことを少し後悔していた。
私は、告白しても好きな人に振り向いてもらえない辛さを知っている。
人を好きになって想いを伝えても、振り向いてもらえなかったら……と思うだけで怖くて堪らない。

「どうしてそんな風に思うの?」

立花さんは不思議そうな表情で聞いてくる。

私には、恋愛が怖いと思うようになったきっかけがあった。
人によっては大したことがないと思うかもしれないけど、私にとってはトラウマレベルになってしまったんだ。
私は自分の過去の出来事を立花さんに話し出した。

「昔、好きだった人に告白して振られたことがあるんです。本気で好きだったからその分、ショックが大きくて……。それ以来、恋をするのが怖くなったんです」

立花さんは、少し考え込んで口を開く。

「なるほどね。確かに告白するのは勇気がいるけど、自分の想いを伝えるのは大切なことだと思うよ。振られるのは怖いかも知れないけど、自分から動かなきゃ何も始まらない。言わずに後悔するより、言って後悔した方が気持ち的にも全然違うと思うよ。だから、俺は時が来たら好きな人に告白しようと思っている。河野さんは恋愛に対してネガティブなイメージを持ってるから怖いって感じるんじゃない?」

そう言われて、ドキッとした。

「言わずに後悔したことは何年経っても自分の心に残ると思うんだ。こうしておけばよかったとか、あれこれ考えて何もしなかった時の方が間違いなく悔いが残る。自分の気持ちを伝えるってことは、どんな形であれ答えが出るだろ?その方が気持ち的に前を向ける気がするんだ。まぁ、これは俺の持論だけど」

立花さんの言葉を聞いて目からうろこというか、そういう考えもあるんだと気付かされた。

気持ちを伝えたら答えが出る、か。 立花さんの言葉を聞いて恋愛がトラウマになる前のことが頭を過った。
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