次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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予想外の提案

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立花課長と食事をするのは今日限りだ。
堅苦しい雰囲気より、お互いに楽しい気分になった方がいいと思い、それに従った。

「分かりました。では、立花さんでいいですか?」
「ああ。出来れば仕事の時もそれで呼んで欲しいけどね。堅苦しいのは嫌なんだ」

ニッコリと笑顔を浮かべた。

「出来るだけ努力します」

今までずっと役職付きで呼んでいたので、慣れるまでは難しそうだけど。

「せっかく一緒にご飯食べてるんだから、ざっくばらんに何でも聞いてね」
「はい」

何でもと言われても、どこまで聞いていいのか難しいところだ。
話をしていたら前菜が運ばれてきた。
季節の彩りサラダという名の通り、トマトの赤やレタスの緑など目でも楽しめる。
料理はどれも美味しくて目の前に置かれたお皿の中身を見るたびにテンションが上がってしまった。
そして、メインの牛フィレ肉のソテーも残さず食べた。
最後にデザートが運ばれてきた。
シフォンケーキの横に自家製ジェラートが添えられている。
ミントをよけて、ジェラートをスプーンですくって口の中にいれた。

「んー、美味しい」

思わず口に出してしまった。
それを見ていた立花さんはクスクスと笑う。

「河野さんてホントに美味しそうに食べるよね。さっきもニコニコしながら食べていたし、見てて気持ちがいいよ」

そんなことを言われ、恥ずかしさで顔が赤く染まった。

「すみません」

どうして黙って食べていられなかったんだろう。
うるさかったかな。
しかも、食いしん坊とか思われてそうで居心地が悪い。

「どうして謝るの?美味しそうに料理を食べる子って好きだよ」

恋愛関係にあまり免疫のない私は好きと言う言葉にドキッとしてしまう。
美味しそうに食べる子が好きと言っただけで、私が好きということではないと分かっているけど、立花さんにそんなことを言われたら勘違いする人は続出すると思う。
それにしても、箸の持ち方から食べ方まで立花さんは何をするのもスマートで所作が綺麗。
優しいし格好いいし、仕事は出来るし御曹司だしパーフェクトだよね。
こういう人をハイスペック男子っていうんだろうな。

本当に彼女がいないのか怪しいところだ。
不意に友田さんの話を思い出した。
立花さんは何でも聞いていいと言っていたので、思い切って口を開いた。

「あの、立花さんは彼女がいなんですよね?」

彼女がいないから、こうして私と食事に行ったりできるんだよね。
居たら出来ないはずだ。

「俺のプライベートに興味をもってくれた?」
「えっ、いや、そういう訳じゃ……」

しどろもどろになりながら答えると、立花さんはクスクスと笑う。

「彼女はいないけど、気になっている人ならいるよ。だけど俺の片想い。もう五年ぐらいになるかな」

優しそうな表情で話す。
きっと、その女性のことを想っているんだろうなという感じがした。
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