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予想外の提案
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立花課長が連れてきてくれた場所は、ベリルスターというホテル。
ベリルスターはこの辺りでは有名なホテルで、宿泊施設だけではなく、レストラン(日本料理、フランス料理、中華料理など)やバーやカフェ、スカイラウンジ、宴会場などがある。
店舗案内の写真を見たけど、店の名前からしてどれも高級な感じがした。
今から行こうとしているカフェレストランも普段私が行くようなお店じゃないから緊張する。
それに、すれ違う人達も小綺麗な服装率が高くて、変な服じゃなくてよかったと心から思った。
ここは御曹司の御用達のホテルなのかも知れない。
普通に生活していたら一生縁がない高級ホテルで私には縁遠い場所だ。
気後れする私をエスコートするように立花課長は慣れた様子でエントランスを抜け、ロビーラウンジを横目にエレベーターに乗った。
「本当だったら最上階のスカイラウンジで食事しようかと思ってたんだけど、あいにく今日は予約で埋まってたみたいなんだ。ごめんね」
「いえ、とんでもないです」
慌てて首を左右に振った。
そんな最上階のスカイラウンジとか私には場違いだ。
逆に予約で埋まってくれてよかった。
エレベーターを降り、ふわふわした足取りで歩く。
カフェレストラン『ソルジェ』の店内に入ると、スタッフに案内されて席につく。
メニューを渡され、何が食べたいか聞かれたけど、舞い上がってしまって立花課長にお任せすることにした。
ペリエでカラカラになっていた喉を潤す。
お酒を勧められたけど、全力で断った。
立花課長は運転するからお酒を飲まないのに、連れてきてもらった私だけ飲むなんてことは絶対に出来ない。
一息つき、少しだけ緊張もほぐれてきた。
仕事をしていて、お互いに顔や部署は知っているけど、よく考えたら他のことは何も知らないので改めて軽く自己紹介した。
「立花課長は私の五歳年上だったんですね」
「ああ、来月の誕生日で三十になるんだ」
「私には兄と妹がいるんですけど、兄と同い年ですね」
立花課長は「そうだね」と言って頷いた。
てっきり二十九歳だと思っていた。
五歳年上といえば私のお兄ちゃんと同学年だ。
私は三人兄妹の二番目だ。
五歳上に兄の響也、二歳下の妹の柚音がいる。
みんな社会人になり、滅多に会うことはない。
お正月に実家で会うぐらい。
妹とは女同士ということもあり、連絡は取り合っている。
だけど、お兄ちゃんとは五年前にちょっとしたことがあり、会うのは気まずいというか出来れば会いたくない。
実家に帰るときはお兄ちゃんがいない時を見計らっている。
「さっきから思っていたんだけど、課長って呼び方は止めてもらえると嬉しい」
「どうしてですか?」
「今はプライベートなのに、課長なんて役職で呼ばれたら居心地も悪いし、仕事の延長みたいな感じでリラックスできないんだ」
立花課長の言葉に首を傾げたけど、話を聞いてなるほどなと思った。
ベリルスターはこの辺りでは有名なホテルで、宿泊施設だけではなく、レストラン(日本料理、フランス料理、中華料理など)やバーやカフェ、スカイラウンジ、宴会場などがある。
店舗案内の写真を見たけど、店の名前からしてどれも高級な感じがした。
今から行こうとしているカフェレストランも普段私が行くようなお店じゃないから緊張する。
それに、すれ違う人達も小綺麗な服装率が高くて、変な服じゃなくてよかったと心から思った。
ここは御曹司の御用達のホテルなのかも知れない。
普通に生活していたら一生縁がない高級ホテルで私には縁遠い場所だ。
気後れする私をエスコートするように立花課長は慣れた様子でエントランスを抜け、ロビーラウンジを横目にエレベーターに乗った。
「本当だったら最上階のスカイラウンジで食事しようかと思ってたんだけど、あいにく今日は予約で埋まってたみたいなんだ。ごめんね」
「いえ、とんでもないです」
慌てて首を左右に振った。
そんな最上階のスカイラウンジとか私には場違いだ。
逆に予約で埋まってくれてよかった。
エレベーターを降り、ふわふわした足取りで歩く。
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お酒を勧められたけど、全力で断った。
立花課長は運転するからお酒を飲まないのに、連れてきてもらった私だけ飲むなんてことは絶対に出来ない。
一息つき、少しだけ緊張もほぐれてきた。
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「立花課長は私の五歳年上だったんですね」
「ああ、来月の誕生日で三十になるんだ」
「私には兄と妹がいるんですけど、兄と同い年ですね」
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「どうしてですか?」
「今はプライベートなのに、課長なんて役職で呼ばれたら居心地も悪いし、仕事の延長みたいな感じでリラックスできないんだ」
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