次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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突然のお誘い

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仕事が終わり、私は自分の席で一枚の名刺と睨めっこしていた。
さて、どうしたもんかな。
立花課長は私の連絡先を知らないから、こっちから電話しないと連絡が取れない。
でも、なんて言って電話すればいいんだろう。

『仕事が終わったんですけど、食事の予定はどうします?』とか、私からそんな図々しいことを言える訳ないし。
参ったなぁ。
取りあえず、電話帳に携帯番号だけでも登録しておこう。
スマホの電話帳を呼び出し、名刺を見ながら立花課長の連絡先を入力した。

「梨音先輩、まだ残っているんですか?」

いきなり声をかけられ、慌てて立花課長の名刺をポケットにしまった。

声をかけてきたのは友田泉、後輩だ。
小柄で胸元まで伸びたふんわりとしたブラウンの髪の毛、いつもニコニコ笑っていて可愛らしい今どきのザ・女の子という感じ。
常にアンテナを巡らせていて、社内の噂話とかいい男チェックには余念がない。
友田さんは彼氏持ちだけど、それとこれとは別らしい。
まぁ、そういうリサーチは仕事さえちゃんとやってくれたら問題はないと思うけど。

「あれ?今、何か隠しませんでした?」

友田さんに目ざとく気付かれ、焦ってしまう。

「いや、別に何も隠してないよ。買い物したレシートを見ていて、それをポケットに入れただけだから」

あまりいい案が浮かばなく、名刺をレシートとして言ってみた。

「そうなんですね。そんなことよりさっき立花さんを見かけたんですよ!」

友田さんは特に怪しむ様子もなく私の言葉をスルーし、嬉しそうに話す。
逆に私はさっきまで見ていた名刺の人物の名前が出てきてドキッとした。

「立花課長っていいですよね。カッコいいし御曹司だし仕事も出来るし。絶対に彼女がいると思っていたけどフリーみたいなんですよね。私も彼氏がいなかったらアタックしてたかも」

ふふ、と楽しそうに笑う。
友田さんの中でも立花課長の評価は高い。

「でも、立花課長は誰が誘っても断られるんですよね。そういえばこの前、金城さんが告白して振られたらしいです」

友田さんの口から金城さんの名前を聞き、あの時のことを思い出す。

「でも、さすが金城さんですよ。変わり身が早くて、今度は人事の岩佐主任に声をかけているみたいなんです」
「へぇ、そうなんだ」

岩佐主任は独身でインテリ眼鏡のイケメンだ。
立花課長に断られてすぐに岩佐主任に乗り換えってこと?
金城さんのアグレッシブさには感心する。
それにしても、友田さんの情報網は半端ない。
どこからそんな情報が流れてくるんだろう。
怖くなってくる。

「あの難攻不落な立花課長をゲットする女性はどんな人なんだろう。梨音先輩も気になりません?」
「そ、そうだね」

そんな話を私に振ってこないで欲しい。
友田さんは無邪気に聞いてくるので返答に困る。


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