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愛を確かめ合う
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「堂島、会社まで来てどういうつもりだ。俺に絡むならだましも、美桜に接触するのはあり得ない」
テツの怒りをはらんだ声が堂島さんに向く。
出先から戻ってきたみたいだけど、どこから聞いていたんだろう。
「て、哲平……。だって、電話しても出てくれないから直接会いに来るしかないじゃない」
「いい加減にしてくれよ。お前の会社とは関わりがあるけど、お前自身と俺は無関係だ」
テツは私を隠すように前に出て堂島さんと対峙し、キッパリと言い放つ。
「はっきり言わせてもらうけど、高校時代に堂島と付き合ったのは本意ではなかった。全校生徒の前で堂島の告白を断ったら恥をかかせることになり、さすがに可哀想だと思ったからだ。申し訳ないが、昔も今も堂島に対しての気持ちは一ミリもない」
「ひどい……」
堂島さんはショックを受けたような表情を浮かべている。
でも、それを見ても私は何も思わなかった。
だって、堂島さんはテツの顔とか家のことしか見ていないからだ。
「酷いってどの口が言うんだよ。堂島も俺の顔や家柄しか興味がないんだろ。俺の中身はいらないと言っているようなもんだぞ。それも酷いだろ」
「それは……」
「不細工で無一文な男とは付き合えないって、ドン引きなんだけど」
テツの冷たい視線が堂島さんに突き刺さる。
あ、それも聞いていたんだ。
「俺も堂島みたいなブランド大好き、男の容姿や家柄しか興味ない女はこっちから願い下げ。二度と俺と美桜の前に姿を見せるな。不愉快だ」
テツの低く鋭い声ではっきりと告げられた堂島さんは言葉をなくし、逃げるようにその場を後にした。
あそこまで言われたら、もう二度と私たちの前には現れない気がした。
「美桜、大丈夫か?」
「うん。大丈夫。助けてくれてありがとう」
「いや、俺は何もしてないよ。堂島が会社まで押しかけてくるとは思わなかった。ごめんな」
「なんでテツが謝るの?あの人とは関係ないんでしょ。テツが気にする必要はないよ」
申し訳なさそうに謝罪するテツに私は笑って言った。
テツと無関係な人が勝手に待ち伏せして、私に絡んできただけだ。
「会社に戻ってきたら、美桜と堂島が話をしているのを見かけてマジで焦った。何事もなくて本当によかった」
テツは人目もはばからず私を抱きしめてきた。
「俺が助けようとしたのに、美桜はめちゃくちゃかっこいいし」
「えっ?」
「俺だから好きになってくれたんだろ。しかも俺がお金がなくてもイケメンじゃなくても気持ちは変わらないって」
もしかして、ほぼ全部話を聞いてたってこと?
恥ずかしすぎる。
テツはギュッと抱きしめる力を強め、耳元で囁いた。
「男前すぎて惚れ直した」
そんなことを言われるとは思わず、顔が赤くなる。
私も一瞬抱きしめ返したあと、テツの胸を押して距離を取った。
「まだ仕事残っているんでしょ。私、先に帰ってご飯作っておくから。何が食べたい?」
照れを隠すように早口で告げると、テツは少し不服そうな顔をしながらも答えてくれた。
「今日はパスタが食べたい」
「了解。帰る時間をまた教えて。パスタ茹でる時間を調整するから」
「分かった。バス停まで送ろうか?」
「ふふ、すぐそこだから大丈夫よ」
ここでもテツの心配性が出ている。
本当に歩いてすぐなので、そこまでしてもらう必要はない。
私はテツに手を振り、バス停に向かった。
テツの怒りをはらんだ声が堂島さんに向く。
出先から戻ってきたみたいだけど、どこから聞いていたんだろう。
「て、哲平……。だって、電話しても出てくれないから直接会いに来るしかないじゃない」
「いい加減にしてくれよ。お前の会社とは関わりがあるけど、お前自身と俺は無関係だ」
テツは私を隠すように前に出て堂島さんと対峙し、キッパリと言い放つ。
「はっきり言わせてもらうけど、高校時代に堂島と付き合ったのは本意ではなかった。全校生徒の前で堂島の告白を断ったら恥をかかせることになり、さすがに可哀想だと思ったからだ。申し訳ないが、昔も今も堂島に対しての気持ちは一ミリもない」
「ひどい……」
堂島さんはショックを受けたような表情を浮かべている。
でも、それを見ても私は何も思わなかった。
だって、堂島さんはテツの顔とか家のことしか見ていないからだ。
「酷いってどの口が言うんだよ。堂島も俺の顔や家柄しか興味がないんだろ。俺の中身はいらないと言っているようなもんだぞ。それも酷いだろ」
「それは……」
「不細工で無一文な男とは付き合えないって、ドン引きなんだけど」
テツの冷たい視線が堂島さんに突き刺さる。
あ、それも聞いていたんだ。
「俺も堂島みたいなブランド大好き、男の容姿や家柄しか興味ない女はこっちから願い下げ。二度と俺と美桜の前に姿を見せるな。不愉快だ」
テツの低く鋭い声ではっきりと告げられた堂島さんは言葉をなくし、逃げるようにその場を後にした。
あそこまで言われたら、もう二度と私たちの前には現れない気がした。
「美桜、大丈夫か?」
「うん。大丈夫。助けてくれてありがとう」
「いや、俺は何もしてないよ。堂島が会社まで押しかけてくるとは思わなかった。ごめんな」
「なんでテツが謝るの?あの人とは関係ないんでしょ。テツが気にする必要はないよ」
申し訳なさそうに謝罪するテツに私は笑って言った。
テツと無関係な人が勝手に待ち伏せして、私に絡んできただけだ。
「会社に戻ってきたら、美桜と堂島が話をしているのを見かけてマジで焦った。何事もなくて本当によかった」
テツは人目もはばからず私を抱きしめてきた。
「俺が助けようとしたのに、美桜はめちゃくちゃかっこいいし」
「えっ?」
「俺だから好きになってくれたんだろ。しかも俺がお金がなくてもイケメンじゃなくても気持ちは変わらないって」
もしかして、ほぼ全部話を聞いてたってこと?
恥ずかしすぎる。
テツはギュッと抱きしめる力を強め、耳元で囁いた。
「男前すぎて惚れ直した」
そんなことを言われるとは思わず、顔が赤くなる。
私も一瞬抱きしめ返したあと、テツの胸を押して距離を取った。
「まだ仕事残っているんでしょ。私、先に帰ってご飯作っておくから。何が食べたい?」
照れを隠すように早口で告げると、テツは少し不服そうな顔をしながらも答えてくれた。
「今日はパスタが食べたい」
「了解。帰る時間をまた教えて。パスタ茹でる時間を調整するから」
「分かった。バス停まで送ろうか?」
「ふふ、すぐそこだから大丈夫よ」
ここでもテツの心配性が出ている。
本当に歩いてすぐなので、そこまでしてもらう必要はない。
私はテツに手を振り、バス停に向かった。
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