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愛を確かめ合う

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「あのさ、私は一般家庭で育ったし、家柄的にもテツには不釣り合いだと思うんだよね」

「なに馬鹿なこと言っているんだ。そんなの関係ないだろ」

「でも……」

「でもじゃねぇよ。うちの親が早く美桜を連れてこいってうるさいんだから。特にお袋なんか早く嫁に来てほしいとか言ってるし」

テツが呆れたように言う。

「よ、嫁?」

そんな風に言ってくれているとは思わなかった。
子供の頃はテツママにもよく可愛がってもらっていた記憶はある。

「そうだよ。うちの親は美桜のことお気に入りだから心配することなんて全くない」

心配することはないとか言うけど、創立記念パーティーって自社の社員や取引先の人とか参加するんだよね。

「でも、大規模なパーティーでしょ。不安しかないんだけど」

「大丈夫だよ。親に会ってもらうだけだから美桜は途中参加でいいよ。少しの間でいいから俺の隣で笑ってくれていたらそれで十分なんだ」

「隣で笑う?」

「俺、まだ独身だろ。おせっかいな連中が縁談話を持ち掛けたりするんだよ。だから、美桜が隣にいてくれるだけでそういった煩わしい話から逃げれるんだ」

「要は、女避けというか、面倒ごとをスルーするために私を利用するってこと?」

「おい、言い方!でも、美桜は婚約者だから俺は隠すつもりはない。と言っても、まだ正式な発表をするわけじゃないからそこは安心して」

大企業の創立記念パーティーに参加するなんて緊張しかしないけど、これからもテツと一緒にいるということは避けられないことなんだ。
というか、パーティーってどんな服を着たらいいんだろう。

「ねぇ、パーティーで着る服なんて持ってないけど。どんな感じがいいの?また買いに行かないと」

「それなら大丈夫。お袋が美桜に着てもらいたいとか言ってて、すでに準備してあるから」

「待って。それってもう私が行くこと前提だったってこと?」

「まあそうだな。で、これが美桜に着てもらいたいってお袋が選んだ服」

テツがスマホの画面を見せてきた。
そこに写っていたのは、淡いパープルのドレスだった。
ビスチェ風のデザインで、胸元には刺繍が施してあり、ミモレ丈のフィッシュテールスカート。
ブラックのボレロ、ネックレスやイヤリング、バッグまで添付されていた。

このドレス、めちゃくちゃ可愛くて画像を見ただけで着てみたくなった。
テツママのセンスのよさが光っている。

「こんな素敵なドレスを用意してもらっていいのかな。もしかして一式準備してくれているの?」

「当然だろ。自分が見立てた服を美桜に着てもらいたいってさ。色はどうしても紫って譲らなかったんだ」

「テツママは紫が好きなの?」

「よく分かんねぇけど、お袋の推しの担当の色が紫らしい。自分は紫は似合わないから美桜に着てほしいんだって」

「推し?」

「年甲斐もなく動画配信者にハマってて、紫色のやつをいろいろ集めているみたいなんだ」

「へえ、そうなんだ。テツママも若いね」

「美桜に着てもらうんだと張り切って選んでいたから着てもらえると助かる。それと、パンプスは当日に美桜が店員にサイズを伝えてくれって言ってた」

「そこまでしてもらわなくてもいいのに」

「お袋の気のすむまでやらせてやって。俺ら男兄弟しかいないから、女の子の服を選んだりするのが楽しいって言ってたからな」

「ありがとう。会った時にテツママにもお礼を言うね」

テツママが用意してくれた素敵なドレスに似合うような女性にならなくちゃいけないよね。
それと同時に、テツの隣に立っても恥ずかしくないよう立ち居振る舞いも気を付けようと思った。

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