101 / 115
愛を確かめ合う
10
しおりを挟む
「あのさ、私は一般家庭で育ったし、家柄的にもテツには不釣り合いだと思うんだよね」
「なに馬鹿なこと言っているんだ。そんなの関係ないだろ」
「でも……」
「でもじゃねぇよ。うちの親が早く美桜を連れてこいってうるさいんだから。特にお袋なんか早く嫁に来てほしいとか言ってるし」
テツが呆れたように言う。
「よ、嫁?」
そんな風に言ってくれているとは思わなかった。
子供の頃はテツママにもよく可愛がってもらっていた記憶はある。
「そうだよ。うちの親は美桜のことお気に入りだから心配することなんて全くない」
心配することはないとか言うけど、創立記念パーティーって自社の社員や取引先の人とか参加するんだよね。
「でも、大規模なパーティーでしょ。不安しかないんだけど」
「大丈夫だよ。親に会ってもらうだけだから美桜は途中参加でいいよ。少しの間でいいから俺の隣で笑ってくれていたらそれで十分なんだ」
「隣で笑う?」
「俺、まだ独身だろ。おせっかいな連中が縁談話を持ち掛けたりするんだよ。だから、美桜が隣にいてくれるだけでそういった煩わしい話から逃げれるんだ」
「要は、女避けというか、面倒ごとをスルーするために私を利用するってこと?」
「おい、言い方!でも、美桜は婚約者だから俺は隠すつもりはない。と言っても、まだ正式な発表をするわけじゃないからそこは安心して」
大企業の創立記念パーティーに参加するなんて緊張しかしないけど、これからもテツと一緒にいるということは避けられないことなんだ。
というか、パーティーってどんな服を着たらいいんだろう。
「ねぇ、パーティーで着る服なんて持ってないけど。どんな感じがいいの?また買いに行かないと」
「それなら大丈夫。お袋が美桜に着てもらいたいとか言ってて、すでに準備してあるから」
「待って。それってもう私が行くこと前提だったってこと?」
「まあそうだな。で、これが美桜に着てもらいたいってお袋が選んだ服」
テツがスマホの画面を見せてきた。
そこに写っていたのは、淡いパープルのドレスだった。
ビスチェ風のデザインで、胸元には刺繍が施してあり、ミモレ丈のフィッシュテールスカート。
ブラックのボレロ、ネックレスやイヤリング、バッグまで添付されていた。
このドレス、めちゃくちゃ可愛くて画像を見ただけで着てみたくなった。
テツママのセンスのよさが光っている。
「こんな素敵なドレスを用意してもらっていいのかな。もしかして一式準備してくれているの?」
「当然だろ。自分が見立てた服を美桜に着てもらいたいってさ。色はどうしても紫って譲らなかったんだ」
「テツママは紫が好きなの?」
「よく分かんねぇけど、お袋の推しの担当の色が紫らしい。自分は紫は似合わないから美桜に着てほしいんだって」
「推し?」
「年甲斐もなく動画配信者にハマってて、紫色のやつをいろいろ集めているみたいなんだ」
「へえ、そうなんだ。テツママも若いね」
「美桜に着てもらうんだと張り切って選んでいたから着てもらえると助かる。それと、パンプスは当日に美桜が店員にサイズを伝えてくれって言ってた」
「そこまでしてもらわなくてもいいのに」
「お袋の気のすむまでやらせてやって。俺ら男兄弟しかいないから、女の子の服を選んだりするのが楽しいって言ってたからな」
「ありがとう。会った時にテツママにもお礼を言うね」
テツママが用意してくれた素敵なドレスに似合うような女性にならなくちゃいけないよね。
それと同時に、テツの隣に立っても恥ずかしくないよう立ち居振る舞いも気を付けようと思った。
「なに馬鹿なこと言っているんだ。そんなの関係ないだろ」
「でも……」
「でもじゃねぇよ。うちの親が早く美桜を連れてこいってうるさいんだから。特にお袋なんか早く嫁に来てほしいとか言ってるし」
テツが呆れたように言う。
「よ、嫁?」
そんな風に言ってくれているとは思わなかった。
子供の頃はテツママにもよく可愛がってもらっていた記憶はある。
「そうだよ。うちの親は美桜のことお気に入りだから心配することなんて全くない」
心配することはないとか言うけど、創立記念パーティーって自社の社員や取引先の人とか参加するんだよね。
「でも、大規模なパーティーでしょ。不安しかないんだけど」
「大丈夫だよ。親に会ってもらうだけだから美桜は途中参加でいいよ。少しの間でいいから俺の隣で笑ってくれていたらそれで十分なんだ」
「隣で笑う?」
「俺、まだ独身だろ。おせっかいな連中が縁談話を持ち掛けたりするんだよ。だから、美桜が隣にいてくれるだけでそういった煩わしい話から逃げれるんだ」
「要は、女避けというか、面倒ごとをスルーするために私を利用するってこと?」
「おい、言い方!でも、美桜は婚約者だから俺は隠すつもりはない。と言っても、まだ正式な発表をするわけじゃないからそこは安心して」
大企業の創立記念パーティーに参加するなんて緊張しかしないけど、これからもテツと一緒にいるということは避けられないことなんだ。
というか、パーティーってどんな服を着たらいいんだろう。
「ねぇ、パーティーで着る服なんて持ってないけど。どんな感じがいいの?また買いに行かないと」
「それなら大丈夫。お袋が美桜に着てもらいたいとか言ってて、すでに準備してあるから」
「待って。それってもう私が行くこと前提だったってこと?」
「まあそうだな。で、これが美桜に着てもらいたいってお袋が選んだ服」
テツがスマホの画面を見せてきた。
そこに写っていたのは、淡いパープルのドレスだった。
ビスチェ風のデザインで、胸元には刺繍が施してあり、ミモレ丈のフィッシュテールスカート。
ブラックのボレロ、ネックレスやイヤリング、バッグまで添付されていた。
このドレス、めちゃくちゃ可愛くて画像を見ただけで着てみたくなった。
テツママのセンスのよさが光っている。
「こんな素敵なドレスを用意してもらっていいのかな。もしかして一式準備してくれているの?」
「当然だろ。自分が見立てた服を美桜に着てもらいたいってさ。色はどうしても紫って譲らなかったんだ」
「テツママは紫が好きなの?」
「よく分かんねぇけど、お袋の推しの担当の色が紫らしい。自分は紫は似合わないから美桜に着てほしいんだって」
「推し?」
「年甲斐もなく動画配信者にハマってて、紫色のやつをいろいろ集めているみたいなんだ」
「へえ、そうなんだ。テツママも若いね」
「美桜に着てもらうんだと張り切って選んでいたから着てもらえると助かる。それと、パンプスは当日に美桜が店員にサイズを伝えてくれって言ってた」
「そこまでしてもらわなくてもいいのに」
「お袋の気のすむまでやらせてやって。俺ら男兄弟しかいないから、女の子の服を選んだりするのが楽しいって言ってたからな」
「ありがとう。会った時にテツママにもお礼を言うね」
テツママが用意してくれた素敵なドレスに似合うような女性にならなくちゃいけないよね。
それと同時に、テツの隣に立っても恥ずかしくないよう立ち居振る舞いも気を付けようと思った。
11
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説

イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

売れ残り同士、結婚します!
青花美来
恋愛
高校の卒業式の日、売り言葉に買い言葉でとある約束をした。
それは、三十歳になってもお互いフリーだったら、売れ残り同士結婚すること。
あんなのただの口約束で、まさか本気だなんて思っていなかったのに。
十二年後。三十歳を迎えた私が再会した彼は。
「あの時の約束、実現してみねぇ?」
──そう言って、私にキスをした。
☆マークはRシーン有りです。ご注意ください。
他サイト様にてRシーンカット版を投稿しております。
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ


【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる