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愛を確かめ合う
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ホテルのスカイラウンジで食事をした日から二週間後の金曜日。
テツが玄関のドアを開けて入ってきた。
「ただいま」
手が離せなくて、キッチンから「お帰り」と声をかけた。
今日は残業すると言っていたので、私は先に帰っていた。
途中、スーパーで買い物をしてから急ぎ足でマンションに戻った。
着替えを済ませると、晩御飯の準備をしてテツの帰りを待っていたんだ。
大体何時ぐらいに帰るか教えてくれていたので、それに合わせて料理を仕上げた。
「あー、腹へった」
ネクタイを緩めながら、リビングに入ってきたテツはダイニングテーブルの上の料理を見て目を見開いた。
「どうしたんだ、これ」
近寄ってき、マジマジと料理を見る。
もしかして、今日が何の日か忘れてるとか?
「今日、テツの誕生日でしょ」
「あっ、そうか。忘れてたわ」
呑気にハハッ、と笑う。
そんなテツの背中を押した。
「ほら、早く手荒いうがいしてきて」
洗面所に行くように促した。
テツは着ていたワイシャツなどを脱ぎ、ラフな服を着てリビングに戻ってきた。
ダイニングテーブルには昨日の夜に仕込んだローストビーフ、レタスやキュウリ、ミニトマトやニンジンや生ハムで作ったブーケサラダ、ホワイトシチュー、フランスパンを切ってお皿に盛ったものを並べている。
テツが帰るまでの限られた時間で作るのはこれで精一杯。
それでも気持ちはいつも以上にこもっている。
付き合って初めてのテツの誕生日。
本当は外食でもしようと思っていた。
だけど、平日だったしテツの仕事状況が日によって違うから家で食べた方がいいかなと考え直した。
結果、テツが残業したので私の判断は正しかった。
「旨そう」
テツはテーブルの上の料理を見ると、キラキラと目を輝かせていた。
「座って」
テツが椅子に座ると、私はグラスにスパークリングワインを注ぎ、それをテツに渡した。
今日はアルコール入りだ。
反対側の席に座り、自分のグラスにも注ぐ。
グラスを手に持ち、それを掲げてお祝いの言葉を口にした。
「テツ、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
テツはスパークリングワインをゴクリと飲んだ。
家だからアルコールが入っても問題はない。
「まさか美桜が祝ってくれるなんて思ってなかったから驚いた」
「か、彼氏の誕生日を祝うのは当たり前でしょ」
強気に言ってみたものの、何だか照れてしまう。
しかもテツもテツで「そうか」とはにかみながら言うので、お互いに顔を赤くしていた。
「でも、これだけの料理を作るのは大変だったろ」
「そんなことないよ。ローストビーフは昨日仕込んでおいたし、あとはすぐに出来たから」
惣菜店で働いていたこともあり、手際はいい方だと思う。
だから、短い時間でもどうにか考えていたメニューを作ることができたんだ。
テツはすべて綺麗に食べてくれた。
作ったかいがあるというものだ。
でも、一個残念なことがあった。
料理のことばかり考えていてケーキを買うの忘れていたことを謝罪すれば「子供じゃないし、特に食べたいってものじゃないから大丈夫だよ」と笑っていた。
ホテルのスカイラウンジで食事をした日から二週間後の金曜日。
テツが玄関のドアを開けて入ってきた。
「ただいま」
手が離せなくて、キッチンから「お帰り」と声をかけた。
今日は残業すると言っていたので、私は先に帰っていた。
途中、スーパーで買い物をしてから急ぎ足でマンションに戻った。
着替えを済ませると、晩御飯の準備をしてテツの帰りを待っていたんだ。
大体何時ぐらいに帰るか教えてくれていたので、それに合わせて料理を仕上げた。
「あー、腹へった」
ネクタイを緩めながら、リビングに入ってきたテツはダイニングテーブルの上の料理を見て目を見開いた。
「どうしたんだ、これ」
近寄ってき、マジマジと料理を見る。
もしかして、今日が何の日か忘れてるとか?
「今日、テツの誕生日でしょ」
「あっ、そうか。忘れてたわ」
呑気にハハッ、と笑う。
そんなテツの背中を押した。
「ほら、早く手荒いうがいしてきて」
洗面所に行くように促した。
テツは着ていたワイシャツなどを脱ぎ、ラフな服を着てリビングに戻ってきた。
ダイニングテーブルには昨日の夜に仕込んだローストビーフ、レタスやキュウリ、ミニトマトやニンジンや生ハムで作ったブーケサラダ、ホワイトシチュー、フランスパンを切ってお皿に盛ったものを並べている。
テツが帰るまでの限られた時間で作るのはこれで精一杯。
それでも気持ちはいつも以上にこもっている。
付き合って初めてのテツの誕生日。
本当は外食でもしようと思っていた。
だけど、平日だったしテツの仕事状況が日によって違うから家で食べた方がいいかなと考え直した。
結果、テツが残業したので私の判断は正しかった。
「旨そう」
テツはテーブルの上の料理を見ると、キラキラと目を輝かせていた。
「座って」
テツが椅子に座ると、私はグラスにスパークリングワインを注ぎ、それをテツに渡した。
今日はアルコール入りだ。
反対側の席に座り、自分のグラスにも注ぐ。
グラスを手に持ち、それを掲げてお祝いの言葉を口にした。
「テツ、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
テツはスパークリングワインをゴクリと飲んだ。
家だからアルコールが入っても問題はない。
「まさか美桜が祝ってくれるなんて思ってなかったから驚いた」
「か、彼氏の誕生日を祝うのは当たり前でしょ」
強気に言ってみたものの、何だか照れてしまう。
しかもテツもテツで「そうか」とはにかみながら言うので、お互いに顔を赤くしていた。
「でも、これだけの料理を作るのは大変だったろ」
「そんなことないよ。ローストビーフは昨日仕込んでおいたし、あとはすぐに出来たから」
惣菜店で働いていたこともあり、手際はいい方だと思う。
だから、短い時間でもどうにか考えていたメニューを作ることができたんだ。
テツはすべて綺麗に食べてくれた。
作ったかいがあるというものだ。
でも、一個残念なことがあった。
料理のことばかり考えていてケーキを買うの忘れていたことを謝罪すれば「子供じゃないし、特に食べたいってものじゃないから大丈夫だよ」と笑っていた。
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