再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

松本ユミ

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自分に出来ることと、不穏な影

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「鳴海くん、あの顔だしモテるからうちの会社はもちろん取引先の女子からの誘いが多かったらしいの。でも、誰の誘いにも『興味ないんで』の一言でバッサリと断ってたから、一時期男が好きなんじゃないのかっていう疑惑まであったのよ。副社長とよく話しているのを見かけていたから、二人はデキてるんじゃないかってね」

恵利さんは思い出し笑いをしている。
というか、そんな疑惑があったんだ。
もしかして、歓送迎会の時に副社長が言ってたのはこの事なのかもしれない。

「でもね、そんな鳴海くんから緑さんの後任に知り合いの子がいるけど、どうですか?って社長に聞いてたの。もちろん、その知り合いは誰?って話になるでしょ。それで連れてきたのがこんなに可愛い美桜ちゃんなんだもん」

お世辞と分かっていても、可愛いと言われると照れてしまう。
恵利さんは話を続ける。

「人の目を気にすることなく、ことあるごとに美桜ちゃんを構っているし、とにかく鳴海くんの瞳が優しいの。今までの彼の姿とは全然違ったからみんな驚いてザワついてたの」

ザワつく?
全くそんなことはなかったような気がするけど……。
私とテツが付き合っているということは会社の人には言ってない。

テツとの関係を知られたくなかったので、会社ではあまり話しかけないでと言っていた。
だけど、テツは私のことを呼び捨てにするし、普通に話しかけてくるからヒヤヒヤしていた。
周りの人にそういう目で見られるのは嫌だし、仕事がやりにくくなるのは困る。
テツがもう少しその辺を気にしてくれればいいんだけど。

「他の男性社員に牽制していたし。彼女には誰も近づけたくないのかもね」

「か、彼女……牽制?」

もしかしてバレてるのかと思い、声が裏返った。
ぶわっと冷や汗が出る。

「え、違うの?美桜ちゃんは鳴海くんと付き合ってるんでしょ?」

当たり前のように言われ、返答に迷う。
ここは正直に話すのが正解なんだろうか。
それとも、どうにか誤魔化す?
でも、上手く誤魔化せる自信はない。

「あの……それは……」

口を開いてみたものの、焦りで目が泳いでしまう。

「その反応は肯定と理解していいみたいね」

私は顔を赤くしながら頷くしかなく、それを見た恵利さんは笑みを浮かべる。

「初々しくて可愛い」

この年で初々しいとか恥ずかしすぎる。
だけど、実際その通りだから何も反論はできない。

「恵利さん、このことは内緒にしといてもらえますか?」

恵利さんにはバレてしまったけど、他の社員の人には内緒にしてもらえれば大丈夫だ。

「もちろんよ!と言いたいところだけど、みんな二人は付き合ってると思ってるわよ」

「えっ……」

みんな付き合っていると思っている?
言われた言葉を理解するのに少しの時間を要した。

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