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偶然の再会

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弁当の配達を二件終え、少し遅めの昼休憩を取る。
配達は徐々に増えてきている。
本当は配達にもっと力を入れたいけど、現状では人手が足りないから難しい。
おじさんが何人かパートを雇うという話をしていたから、そのうち誰か入って来てくれるだろう。

休憩時間は昼ご飯を食べたり、雑誌を読んだりテレビを見たり、パートの人と雑談をしたりとのんびり過ごしている。
今日は私ひとりなので、早々と休憩を終わらせてお店に出た。

「美桜ちゃん、肉じゃがと野菜炒めと春巻きが出来上がったから持って行って」

「はーい」

おばさんが厨房から私を呼ぶ。
大皿に盛りつけられたおかずを順番に運ぶと私は手書きのポップを添えた。

「こんにちは」

「いらっしゃいませ、安子さん」

店に入ってきた初老の女性を笑顔で迎える。
名前は上村安子さんといって、近所のおばあちゃんだ。
旦那さんは数年前に亡くなり、今は独り暮らしだ。
安子さんはいつも元気で、老人会の友人に誘われてゲートボールをしたり旅行に行ったりとすごくアクティブ。

この店を利用してくれるきっかけは、安子さんの娘さん夫妻だという。
元々は、娘さんの旦那がうちのうちのお弁当や惣菜を気に入ってよく利用してくれていたらしい。
たまたま、それを聞いていた安子さんの娘さんがここの惣菜を持って安子さんの家に行き、その時に食べたら美味しくて店に通うようになってくれたと梶川さんから聞いていた。
常連となった安子さんは、パートの人たちと世間話をしたり旅行のお土産を持ってきてくれたりしている。

安子さんが来るのは昼と夕方の間、忙しくなる時間帯の前にやってくる。
今日も十六時過ぎにビニール袋をぶら下げてお店の中に入ってきた。

「はい、これ京都土産」

安子さんがお土産の入った袋を私に差し出してきた。

「いいんですか?ありがとうございます」

「安子さん、京都のどこに行かれたんですか?」

「今回は神社やお寺巡りでいろいろ行ったよ」

パートの梶川さんも加わり、話しに花を咲かせる。
この時間帯はお客さんもまばらで、こういった話もゆっくり出来る。
パートの人は安子さんと年齢も近いこともあり、話が盛り上がりすぎることもある。
他のお客さんの迷惑にならない程度にはしているみたいだけど。

「安子さん、今日はイワシの蒲焼きがおすすめですよ」

「美桜ちゃんが言うならそれをいただこうかな。あと、そこの玉子焼きのなんちゃらと春雨サラダも」

「アラカルトのことですか」

「そうそう。カタカナが苦手でね。種類がたくさんあるから迷うけど、だし巻とほうれん草にしようかな」

そう言いながらトングを使っておかずを惣菜ケースに入れてレジに持ってきた。
惣菜ケースの重さを量り、会計をして安子さんはお店を後にした。
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