8 / 115
偶然の再会
8
しおりを挟む
弁当の配達を二件終え、少し遅めの昼休憩を取る。
配達は徐々に増えてきている。
本当は配達にもっと力を入れたいけど、現状では人手が足りないから難しい。
おじさんが何人かパートを雇うという話をしていたから、そのうち誰か入って来てくれるだろう。
休憩時間は昼ご飯を食べたり、雑誌を読んだりテレビを見たり、パートの人と雑談をしたりとのんびり過ごしている。
今日は私ひとりなので、早々と休憩を終わらせてお店に出た。
「美桜ちゃん、肉じゃがと野菜炒めと春巻きが出来上がったから持って行って」
「はーい」
おばさんが厨房から私を呼ぶ。
大皿に盛りつけられたおかずを順番に運ぶと私は手書きのポップを添えた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ、安子さん」
店に入ってきた初老の女性を笑顔で迎える。
名前は上村安子さんといって、近所のおばあちゃんだ。
旦那さんは数年前に亡くなり、今は独り暮らしだ。
安子さんはいつも元気で、老人会の友人に誘われてゲートボールをしたり旅行に行ったりとすごくアクティブ。
この店を利用してくれるきっかけは、安子さんの娘さん夫妻だという。
元々は、娘さんの旦那がうちのうちのお弁当や惣菜を気に入ってよく利用してくれていたらしい。
たまたま、それを聞いていた安子さんの娘さんがここの惣菜を持って安子さんの家に行き、その時に食べたら美味しくて店に通うようになってくれたと梶川さんから聞いていた。
常連となった安子さんは、パートの人たちと世間話をしたり旅行のお土産を持ってきてくれたりしている。
安子さんが来るのは昼と夕方の間、忙しくなる時間帯の前にやってくる。
今日も十六時過ぎにビニール袋をぶら下げてお店の中に入ってきた。
「はい、これ京都土産」
安子さんがお土産の入った袋を私に差し出してきた。
「いいんですか?ありがとうございます」
「安子さん、京都のどこに行かれたんですか?」
「今回は神社やお寺巡りでいろいろ行ったよ」
パートの梶川さんも加わり、話しに花を咲かせる。
この時間帯はお客さんもまばらで、こういった話もゆっくり出来る。
パートの人は安子さんと年齢も近いこともあり、話が盛り上がりすぎることもある。
他のお客さんの迷惑にならない程度にはしているみたいだけど。
「安子さん、今日はイワシの蒲焼きがおすすめですよ」
「美桜ちゃんが言うならそれをいただこうかな。あと、そこの玉子焼きのなんちゃらと春雨サラダも」
「アラカルトのことですか」
「そうそう。カタカナが苦手でね。種類がたくさんあるから迷うけど、だし巻とほうれん草にしようかな」
そう言いながらトングを使っておかずを惣菜ケースに入れてレジに持ってきた。
惣菜ケースの重さを量り、会計をして安子さんはお店を後にした。
配達は徐々に増えてきている。
本当は配達にもっと力を入れたいけど、現状では人手が足りないから難しい。
おじさんが何人かパートを雇うという話をしていたから、そのうち誰か入って来てくれるだろう。
休憩時間は昼ご飯を食べたり、雑誌を読んだりテレビを見たり、パートの人と雑談をしたりとのんびり過ごしている。
今日は私ひとりなので、早々と休憩を終わらせてお店に出た。
「美桜ちゃん、肉じゃがと野菜炒めと春巻きが出来上がったから持って行って」
「はーい」
おばさんが厨房から私を呼ぶ。
大皿に盛りつけられたおかずを順番に運ぶと私は手書きのポップを添えた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ、安子さん」
店に入ってきた初老の女性を笑顔で迎える。
名前は上村安子さんといって、近所のおばあちゃんだ。
旦那さんは数年前に亡くなり、今は独り暮らしだ。
安子さんはいつも元気で、老人会の友人に誘われてゲートボールをしたり旅行に行ったりとすごくアクティブ。
この店を利用してくれるきっかけは、安子さんの娘さん夫妻だという。
元々は、娘さんの旦那がうちのうちのお弁当や惣菜を気に入ってよく利用してくれていたらしい。
たまたま、それを聞いていた安子さんの娘さんがここの惣菜を持って安子さんの家に行き、その時に食べたら美味しくて店に通うようになってくれたと梶川さんから聞いていた。
常連となった安子さんは、パートの人たちと世間話をしたり旅行のお土産を持ってきてくれたりしている。
安子さんが来るのは昼と夕方の間、忙しくなる時間帯の前にやってくる。
今日も十六時過ぎにビニール袋をぶら下げてお店の中に入ってきた。
「はい、これ京都土産」
安子さんがお土産の入った袋を私に差し出してきた。
「いいんですか?ありがとうございます」
「安子さん、京都のどこに行かれたんですか?」
「今回は神社やお寺巡りでいろいろ行ったよ」
パートの梶川さんも加わり、話しに花を咲かせる。
この時間帯はお客さんもまばらで、こういった話もゆっくり出来る。
パートの人は安子さんと年齢も近いこともあり、話が盛り上がりすぎることもある。
他のお客さんの迷惑にならない程度にはしているみたいだけど。
「安子さん、今日はイワシの蒲焼きがおすすめですよ」
「美桜ちゃんが言うならそれをいただこうかな。あと、そこの玉子焼きのなんちゃらと春雨サラダも」
「アラカルトのことですか」
「そうそう。カタカナが苦手でね。種類がたくさんあるから迷うけど、だし巻とほうれん草にしようかな」
そう言いながらトングを使っておかずを惣菜ケースに入れてレジに持ってきた。
惣菜ケースの重さを量り、会計をして安子さんはお店を後にした。
10
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
最高ランクの御曹司との甘い生活にすっかりハマってます
けいこ
恋愛
ホテルマンとして、大好きなあなたと毎日一緒に仕事が出来ることに幸せを感じていた。
あなたは、グレースホテル東京の総支配人。
今や、世界中に点在する最高級ホテルの創始者の孫。
つまりは、最高ランクの御曹司。
おまけに、容姿端麗、頭脳明晰。
総支配人と、同じホテルで働く地味で大人しめのコンシェルジュの私とは、明らかに身分違い。
私は、ただ、あなたを遠くから見つめているだけで良かったのに…
それなのに、突然、あなたから頼まれた偽装結婚の相手役。
こんな私に、どうしてそんなことを?
『なぜ普通以下なんて自分をさげすむんだ。一花は…そんなに可愛いのに…』
そう言って、私を抱きしめるのはなぜ?
告白されたわけじゃないのに、気がづけば一緒に住むことになって…
仕事では見ることが出来ない、私だけに向けられるその笑顔と優しさ、そして、あなたの甘い囁きに、毎日胸がキュンキュンしてしまう。
親友からのキツイ言葉に深く傷ついたり、ホテルに長期滞在しているお客様や、同僚からのアプローチにも翻弄されて…
私、一体、この先どうなっていくのかな?
憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~
けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。
私は密かに先生に「憧れ」ていた。
でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。
そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。
久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。
まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。
しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて…
ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆…
様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。
『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』
「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。
気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて…
ねえ、この出会いに何か意味はあるの?
本当に…「奇跡」なの?
それとも…
晴月グループ
LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長
晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳
×
LUNA BLUホテル東京ベイ
ウエディングプランナー
優木 里桜(ゆうき りお) 25歳
うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。
仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。
森本イチカ
恋愛
突然失った父親と穂乃果が生まれた時からずっと過ごしてきた印刷工場が倒産した。
残されたのは自分と病気を患って入院している妹だけ。
この先、どうしたらいいんだろう……
悩んでいた穂乃果の目の前に現れたのは桐ケ谷製菓の社長だった――。
「気に興味があるんだ」
それだけの理由で恨んでいた相手に求婚され、穂乃果はお金の為に結婚を受け入れた。
これから先、この男を愛することなんてないけれど。
そう思っていたはずなのに――。
♡.・*・.♡.・*・.♡.・*・.♡
桐ヶ谷製菓社長
桐ヶ谷玲司(きりがやれいじ)32歳
×
高梨穂乃果(たかなしほのか)26歳
高梨印刷の娘
♡.・*・.♡.・*・.♡.・*・.♡
「穂乃果、こっちへおいで」
「本気だよ。僕達は結婚して夫婦になったんだ。一緒のベッドで眠るのは普通の事だろう?」
「穂乃果に僕を拒否する権利があると思う?」
淫らに、心も身体も揺るがされる。
ーーこれ以上一緒にはいられない。
毎日朝6時、夜8時に更新します✨
政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
如月 そら
恋愛
父のお葬式の日、雪の降る中、園村浅緋と母の元へ片倉慎也が訪ねてきた。
父からの遺言書を持って。
そこに書かれてあったのは、
『会社は片倉に託すこと』
そして、『浅緋も片倉に託す』ということだった。
政略結婚、そう思っていたけれど……。
浅緋は片倉の優しさに惹かれていく。
けれど、片倉は……?
宝島社様の『この文庫がすごい!』大賞にて優秀作品に選出して頂きました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
※表紙イラストはGiovanni様に許可を頂き、使用させて頂いているものです。
素敵なイラストをありがとうございます。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる