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深夜の出来事と元カノの存在
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六月中旬、縁さんの引き継ぎも終盤になり、すべての業務を私が受け持つようになった。
スムーズにとはいかないけど、会議資料の作成や伝票入力などこなせるようになっていた。
それと同時に、もうすぐ縁さんとの別れが近づいているというのを実感していた。
その日の仕事を終え、事務所を出た。
帰る間際に来客があり、それの対応をしていたのでいつもよりも三十分ぐらい遅くなった。
今日はテツがグラタンが食べたいと言っていたので、帰りに足りない材料を買おうとスーパーへ寄った。
そのテツは出張で帰宅予定時間が二十時ぐらいになるみたいだ。
絶対にお腹が空くと思うのに、私の料理を食べたいから我慢すると。
そこまで言われたら、居候の身だし作らないと駄目でしょ。
レジで支払いを済ませて買い物袋を手にスーパーを出ようとした時、人の視線を感じた。
誰だろうと周りを見ていたら、買い物かごを手にした女性と目が合った。
「あなたは……」
嫌な物でも見るように険しい表情で私の前にやって来たのは、テツが酔って帰ってきた時に一緒にいた人だ。
そういえば、テツが帰る方向が一緒とか言っていたから近所なのかもしれない。
「この前、哲平の部屋にいた人よね」
「そうですけど」
「あなた、哲平とどういう関係?」
唐突にぶつけられた言葉にどう返答しようか考える。
怯んだら負けだとばかりに、真っ直ぐに彼女を見つめ強気で答えた。
「いきなりどういう関係と聞かれても、ほぼ初対面のあなたに答える必要はないと思いますけど」
「確かにそうね。私は堂島まゆ。哲平の高校時代の彼女よ」
テツの高校時代の彼女?
一週間ぐらいで別れたって聞いてるけど。
何でその元カノが私に話しかけてくるんだろう。
「夏木です。一応、テツの幼なじみですけど」
「幼なじみ……」
堂島と名乗った女性は私を観察するような視線を向けてくる。
黒髪のボブヘア、切れ長の意思の強そうな瞳に、ぽってりとした唇には真っ赤な口紅が塗られていた。
背も高く、モデル体型で少し癪にさわる。
「その幼なじみのあなたがどうしてあんな時間に哲平の部屋にいるの?」
それこそ元カノのあなたには関係ない話でしょ!という言葉が喉まで出かかる。
「それも堂島さんに関係あります?」
「関係あるから聞いてるの」
イライラした様子で私を睨み付ける。
何でこんな面倒なことに巻き込まれないといけないんだろう。
「幼なじみっていうことは、付き合っている訳じゃないのよね」
改めて聞かれ、ハッとする。
テツから好きだと言われたけど、付き合っている訳ではない。
キスとかそれ以上のこともしているけど、私が曖昧にしているからだ。
でも、堂島さんの存在が気になるほどに私のテツへの気持ちは傾いている。
「あなたは哲平のこと好きなの?」
「えっ、」
いきなりそんなことを聞かれて答えられる訳がない。
「私は哲平のことが好きよ。高校の時は仕方なく別れることになったけど、お互いに嫌いで別れた訳じゃないし。職場は違うのに、こうして仕事相手として哲平に会えたのは運命だと思うの」
堂々と宣言され、唖然とする。
六月中旬、縁さんの引き継ぎも終盤になり、すべての業務を私が受け持つようになった。
スムーズにとはいかないけど、会議資料の作成や伝票入力などこなせるようになっていた。
それと同時に、もうすぐ縁さんとの別れが近づいているというのを実感していた。
その日の仕事を終え、事務所を出た。
帰る間際に来客があり、それの対応をしていたのでいつもよりも三十分ぐらい遅くなった。
今日はテツがグラタンが食べたいと言っていたので、帰りに足りない材料を買おうとスーパーへ寄った。
そのテツは出張で帰宅予定時間が二十時ぐらいになるみたいだ。
絶対にお腹が空くと思うのに、私の料理を食べたいから我慢すると。
そこまで言われたら、居候の身だし作らないと駄目でしょ。
レジで支払いを済ませて買い物袋を手にスーパーを出ようとした時、人の視線を感じた。
誰だろうと周りを見ていたら、買い物かごを手にした女性と目が合った。
「あなたは……」
嫌な物でも見るように険しい表情で私の前にやって来たのは、テツが酔って帰ってきた時に一緒にいた人だ。
そういえば、テツが帰る方向が一緒とか言っていたから近所なのかもしれない。
「この前、哲平の部屋にいた人よね」
「そうですけど」
「あなた、哲平とどういう関係?」
唐突にぶつけられた言葉にどう返答しようか考える。
怯んだら負けだとばかりに、真っ直ぐに彼女を見つめ強気で答えた。
「いきなりどういう関係と聞かれても、ほぼ初対面のあなたに答える必要はないと思いますけど」
「確かにそうね。私は堂島まゆ。哲平の高校時代の彼女よ」
テツの高校時代の彼女?
一週間ぐらいで別れたって聞いてるけど。
何でその元カノが私に話しかけてくるんだろう。
「夏木です。一応、テツの幼なじみですけど」
「幼なじみ……」
堂島と名乗った女性は私を観察するような視線を向けてくる。
黒髪のボブヘア、切れ長の意思の強そうな瞳に、ぽってりとした唇には真っ赤な口紅が塗られていた。
背も高く、モデル体型で少し癪にさわる。
「その幼なじみのあなたがどうしてあんな時間に哲平の部屋にいるの?」
それこそ元カノのあなたには関係ない話でしょ!という言葉が喉まで出かかる。
「それも堂島さんに関係あります?」
「関係あるから聞いてるの」
イライラした様子で私を睨み付ける。
何でこんな面倒なことに巻き込まれないといけないんだろう。
「幼なじみっていうことは、付き合っている訳じゃないのよね」
改めて聞かれ、ハッとする。
テツから好きだと言われたけど、付き合っている訳ではない。
キスとかそれ以上のこともしているけど、私が曖昧にしているからだ。
でも、堂島さんの存在が気になるほどに私のテツへの気持ちは傾いている。
「あなたは哲平のこと好きなの?」
「えっ、」
いきなりそんなことを聞かれて答えられる訳がない。
「私は哲平のことが好きよ。高校の時は仕方なく別れることになったけど、お互いに嫌いで別れた訳じゃないし。職場は違うのに、こうして仕事相手として哲平に会えたのは運命だと思うの」
堂々と宣言され、唖然とする。
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